適当な日常

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第一話:天仕 Part3


いつものように時雨にたたき起こされる。用意されていた対霊武装、「絶」を装着し、部屋を出る。
窓から。
重力から開放されたように高く跳ぶ。
優れた身体能力も俺の天仕の能力のひとつだ。学校の体育の時間はこれを調整するのに結構苦労する。
ちなみに時雨は俺ほど身体能力が高くはない。俺の背中にしがみついている。

ものの十分で目的地である墓地へと辿り着く。数秒送れて、時雨が俺の背中から降りる。
当然のように明かりはなく、闇が視界を支配している。
というのもまた、通常人の話である。
俺たちは夜目が利く。それも人間の数十倍。

「さて、と。とりあえず今は異常なしみたいだけど……、墓地自体は広いからこれだけじゃ特定できないね。とりあえず手分けして辺りに異常がないか調べましょ」

時雨は入り口から右側へ向かって走っていったので、俺は左方向へ向かう。
薄ぼやけて見える無数の墓標は、この墓地の侵入者を睨むようにして聳え立っている。

「ごめんな、ここに眠る人たち。俺は別にここを荒らしにきたわけじゃないんだ。用が済んだら、すぐにでも帰るよ」

霊は一体も見えていないが、どこかで聞いているような気がする。
そう思って口にしてみたが、何も反応はない。
数秒の静寂のあと、じゃりを踏みしめる音が数十メートル先から聞こえてきた。
足音は、淡々とこちらに近づいてくる。
近くの墓石の裏に身を潜め、足音の主を視界に捕らえる。

「・・・、やっぱり人間か」

少し身長が高めの人間が、白い、薄く光る布を頭から被っている。
確かに幽霊に見えなくはないが、所詮偽者。
この墓地の雰囲気で冷静さをなくしていた人が見れば、本物だと思っても不思議ではない。

「ならば手っ取り早い、捕縛して警察に突き出すだけだっ・・・!」

墓標の間を縫うようにして走る。
足音は小さく、神経を研ぎ澄まさなければ、自分自身にも聞こえない。
そして、標的まで残り10メートルの位置から、跳んだ。
偽者は、突如横から出てきた何かに反応し、身をかわした。
俺の振りぬいた拳は空を切ったが、即座に拳を解き、受身を取る。

「ちぃ、感付かれたか!」

どうやら偽者は男らしい。
ドスの聞いた声を発するその男は、もう偽装の意味がないと判断し、彼を覆っていた布を投げ捨てた。

「死んでいった人たちの名を借りて悪事を働くとは、酷いやつもいたもんだな!」

わざと聞こえるように大きな声で言ってやった。
直後機械音らしきものが小さく、短く聞こえた。
そして轟音。
墓標の端が弾け飛び、欠片が飛び散る。

「おいおい、銃まで持ち出す墓地荒らしなんてはじめて聞いたぞ」

そういいながらも俺自身別段慌てることはない。
たかが拳銃の一丁、昔にあった指令に比べたらおもちゃ同然。

男もまた冷静で、銃を乱射するようなことはない。
俺の位置を正確に把握し、確実にしとめようとしている。

「銃はオートマチック、詳しい種類はわからないが弾数は12だな。残り11発」

俺は姿勢を低くしながら少しずつ距離を縮めている。
時折、足元にある石を投げ、撹乱する。
仕掛けるまであと一歩、というところで予想外のことが。

「翼ー?なにかあったー?」
「げっ、時雨のアホ!」

俺を探しに、時雨が歩いてきたのだ。

「時雨!危ない!」
「にゃ?」

俺が声を発してから1秒の間もないうちに、男は銃を乱射した。
発砲音を聞いた瞬間、時雨は両手を前に突き出した。
甲高い音を立てて、銃弾は地面に落ちた。

「うわっ、危ないじゃない!」

男はその光景を見て唖然としていた。
その隙を逃さず、俺は男の顎を殴りつける。

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