月光


月光


               私は神の子供

            腐敗した世界に墮とされた。

       だけど、私にはこの世界を掲げるだけの力がないから。

     ・・・こんなことの為に生まれて来たのではないのに・・・

「畜生・・・」
一つの黒い影が、暗闇の中、月明かりだけに照らされてうなった。
体中からは止めど無く血が流れ、息遣いも荒く、肩で息をしている状態だった。
「畜生・・・畜生・・・あんな奴に・・・何が判るってんだ!」
声をできるだけ振り絞り、叫んだ。
が、その声は虚しく、闇に溶けて消えていくばかりだった。

「・・・あんな、奴に・・・何がわかる・・・」
影は、さらに呟き続けた。
彼の姿を見るものもなく、また訊く者も居ない。
ただ闇と静寂だけが、彼の存在を認めていた。
「如月の、奴らに・・・・俺たち望月の思いも知らないくせに・・でかい面しやがって・・」

彼の名は、千堂陽影。

望月忍流の頭目である。
先ほど、任務でとある城の密書を如月の手から守ったばかりだった。
そこに居た如月忍者も全滅させた。まだ忍になり立ての、幼い少女も殺した。

『―――許さないっ!!』

少女はそう言って、陽影に向かって刃を突き立てた。
普段の陽影ならば、一刀の元に斬り捨てていただろう。
しかし・・・何を躊躇ったか、ちょっとした物だが傷をつけられた。
だが、結局はなんの躊躇いもなく・・・斬った。

そして、今まさに里に帰る途中だったのだ。
峠を越えて・・・数里走って・・・後1,2里というところで、全滅のことを知ったのか、如月忍者に出くわしてしまい、戦闘になったのだ。
その結果・・・重傷を負い、恐らくこのままでは死を待つばかりだろうと、陽影は決め込んでいた。

「・・・あんな奴もいたのかよ・・・あんなに強い、如月の奴が。」

「峠にいた奴らがてんで弱かったんで、正直驚いたがな・・・」


確かに、強かった。
攻撃が、何も見えなかった。
気がつけば、自分は体中から血を流して・・・立つのもやっとだった。

「あいつ・・・」

「望月を散々馬鹿にしやがった・・・!!」


『後・・・もう少しで・・・里につくか・・・ん?』
『おめぇか?如月の忍を全滅にしてくれたのは。』
『てめぇ・・・誰だ?』
『・・・お前らごとき、望月に、名なんか名乗るほど、俺は生憎御人好しじゃねぇんだ。』
『なんだとっ!!?』
『よくもまァ俺の仲間たちを変わり果てた躯にしてくれたじゃねぇの。こいつは・・・お前の命でつぐなわにゃあ・・・浮かばれねぇやなぁ?』
『貴様・・・』
『つーわけで。』
『俺のことは・・・・』
『あん?』
『俺のことはいくら卑下してもかまわねぇ。だがな・・・・・望月の事を・・・・馬鹿にすんじゃねぇ!!』
『るっせぇな。言っただろうが。俺はお前らごとき、下っ端流派に・・・用はねぇんだよぉ!!』


「くそっ!!」
そう言って、陽影は舌をかんだ。
その後ぶち切れて、向かっていったが、到底敵わず、重傷を負わされた。
虚しく崩れ去る陽影を、男は笑うばかりだった。


『俺に敵うとでも思ったか。とんだ自惚れだな。』
『・・なん・・だと!?』
『いいか。お前らみてぇなちいせぇ里は、大人しくしてりゃあいいんだよ。所詮、望月など・・・中小流派なんだからよ。』
『てめぇ!!それ以上言ってみろ!!ぶっ殺す、ぞ・・・』
『おいおい、あんまり熱くなんなよ。傷に響くぜ。』
『貴様・・・わざと・・・・』
『ま、もうちょい強くなるまで待ってやろうじゃねぇか。お前は・・・いくらか素質があるみたいだしな。』
『ほざけ・・・誰が・・如月、の・・・情けなんかにすがるか・・・殺せよ・・・』
『ま、強がんのもそこら辺にしとけ。本当に死ぬぞ。』
『るせぇ・・・』
『お前が・・・もっと強くなったその時に・・・俺を殺しに来い。それで、済むだろ。』
『ったりめーだ。』
『・・・俺は・・・一条閃蔵。如月の・・・頭だけどな。』
『なっ!!』
『あばよ!!』

「ちぃっ・・・」
そこまで思い出して、陽影は月を見た。
そして、眼を閉じた。
白く光る月に、復讐を誓いながら。


               私は神の子供

           この腐敗した世界で生きている

         こんな場所でどうやって生きろというのか  

              あなたは思うだろう

    だが・・・そんな思いじゃ・・・何処にも居場所なんてないんだ・・


                            ――END――


~言い訳~
なんかもうどうでもいいっす。(泣)今度は鬼束の『月光』で・・・やってみましたが・・・『infection』から続いてます。はは、なんだろうなぁ。




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