いなかの猫の天邪鬼部屋

第9話

OnAir~シーズン2・第9話~


#9月初、ドラマ局長室

(カン局長、ギョンミン、ノPDが一緒にいる。)

カン局長 : 君らは何をしてるんだ?1月放送をダメにするのか?こんな進行状況でどうするんだ!

ノPD : 俺の方は俳優の渉外がちょっと..

カン局長 : 俳優がどうした?ちゃんと言ってみろ。

ノPD : ですから、女主人公を引き受ける人物がちょっと...

カン局長 : だから何だ?はっきり言え。

ノPD : とても強いキャラクターで、やろうとする俳優がいないんです。ソ作家も、それなり程度の子じゃイヤがるし..

カン局長 : そんなこともまともに出来なくて、何が監督だ?俳優の渉外も監督の仕事だ。一週間以内に報告しろ。 (ギョンミンの方を見て) お前は?

ギョンミン : 'ブルームーン'の方で難色を示しているんです。

カン局長 : 何だと?俺にはそんな事は何も言ってなかったぞ。

ギョンミン : 昨日資金調逹が難しいと...局長にはこれから申し上げるという事でしたが。

カン局長 : 今になって制作社がそんな事を..どうすりゃいいんだ?...確かなのか?

ギョンミン : はい。確かでもない話をわざわざ流したりしますか?

カン局長 : 分かった。とにかく確認して、制作社は私がまた探してみよう。...こうなるのなら普通のトレンディードラマにしておけば...。主題がはっきりしないから制作社もいい顔をしないんじゃないか?

ギョンミン : 軽くなるのはイヤなんです。

カン局長 : トレンディードラマは全て軽いのか?どう料理するのかで違って来るんじゃないか?...おい!イ・ギョンミン。お前は(どうして口答えをするのか?) ...

ギョンミン : 自体制作はダメでしょうか?

カン局長 : 馬鹿な事を言うな。一年に自体制作されるドラマが何編あるか知ってるのか?30%にもならないんだぞ。それも朝ドラマや日々ドラマだ。お前がやるのはミニシリーズだ。私が認めても本部長のところで切られる。

ギョンミン : ...ある所を探してみます。

カン局長 : お前が?どこだ?

ギョンミン : とにかく一度話してみます。

カン局長 : 演出してるのか?...お前...

ギョンミン : 制作が出来なけりゃ演出は出来ませんよ。

カン局長 : ...おい、イ・ギョンミン。お前はどうしてそういちいち口答えをするんだ?

ギョンミン : 申し訳ありません。

カン局長 : (不満だが仕方がない) 分かったから、もう行け!


#ドラマ局事務室

(ノPD、ギョンミン、席に戻って来る。)

ノPD : ああ、やれやれ。まったく....

ギョンミン : (考えて、決心したように電話する)

ノPD : 誰があんな無礼な役をやると言うんだ?災難だよ。本当に!

ギョンミン : こんにちは、SBCのイ・ギョンミンです。....はい、久しぶりですね。.....ちょっとお会い出来ませんか?はい..はい.. それではそこでお会いしましょう。

ノPD : どこに掛けたんだ?

ギョンミン : (黙って企画案、シナリオを整理している)...

ノPD : お前はいつも人の言う事を無視するし、気忙しいし...ああ!まったく!本当にソ作家はお前のどこを見て好きになったのか...

ギョンミン : (ノPDを見ながら笑う) 分かったら?先輩も俺を好きになりますか?

ノPD : (唖然として) お?... 先輩で遊ぶのか?

ギョンミン : (笑いながら部屋を出る) お疲れ様です~。

ノPD : (笑う) ああ。まったくもう...


#喫茶店

(ギョンミンとサンウ、対座している。)

サンウ : 意外ですね。イ監督の方から連絡をいただけるとは、予想外でした。

ギョンミン : (にっこりと笑って) 人生は思ったとおりの事だけがあるわけじゃないんですよ。

サンウ : (一緒ににっこりと笑って)相変らず口が悪いですね。

ギョンミン : 生まれつきです。

サンウ : キジュンから連絡は来ましたか?

ギョンミン : 一度。いい知らせですよ。スンアがあの時言ってた映画...封切りを控えているようでした。

サンウ : あの野郎..私にはメールを一度、五文字で終りですよ。

ギョンミン : 寂しそうですね。

サンウ : (笑う) 寂しいだなんて...(小さくため息)

ギョンミン : ...(企画案取り出す) これを一度見てください。

サンウ : 何ですか?(広げて見る) ドラマ企画案ですね。

ギョンミン : 制作もなさると聞きました。

サンウ : (ギョンミンを横目で見て) 大きいのは手掛けていません、まだ..

ギョンミン : 作家料はそれほど高くないですから、一度検討してください。

サンウ : 作家は誰ですか?

ギョンミン : ユン・セア作家というデビューして8年になる作家ですが、長く休んでいたんです。

サンウ : どうしてそんな作家と組むんですか?危なくないですか?

ギョンミン : 既存作家には食傷気味で。やはり人が新しいと文も新しいですから。

サンウ : (企画案置いて笑って) 相変らずアウトサイダーですね。

ギョンミン : それで、まだ制作社が見付からないんです。

サンウ : 制作社渉外も直接なさるとは、見上げたものですね。

ギョンミン : ...(黙ってサンウを見る)

サンウ : イ監督は私の方針をご存知でしょう?カネにならない事に投資はしません。

ギョンミン : ええ....カネになるかならないか、やってみないと分かりません。だけど誰かが開拓しなければならないんです。

サンウ : 私が投資をしなければならない理由は?

ギョンミン : ...特別な事はありません。俺が分かる唯一の制作社というだけです。

サンウ : (笑う) イ監督...本当...人脈が狭いという事ですか...

ギョンミン : 中身もなしにただ広いより、一つだけでもきちんと分かっている方がいいです。

サンウ : ...(ギョンミンを眺める) 申し訳ありません。率直に申し上げて自信がありません。 資金が豊かだったら冒険心も起きるかもしれませんが...。ご存知の通り、我々は資本金を持って商売するのではないから..。投資者を探す事も同様です。監督に難しければ私どもにも難しいですね。

ギョンミン : (ため息).....それじゃ仕方ないですね。やっぱりPDがすべき事ではなかったようです。投資誘致とは難しいんですね。

サンウ : イ・ギョンミン監督の要領では難しいでしょう。

ギョンミン : (笑う) 俺をそんなに見くびっているんですか?

サンウ : (笑う) 我々は悪縁で押し堅められた関係だから...ところで俳優は?

ギョンミン : 制作出来るかどうかという状況では、俳優なんて探せませんよ。

サンウ : (にっこりと笑う) 言ってくださいよ。それだったら、たとえ私と親しくなくても頼める事なんじゃないですか?

ギョンミン : そうですね。(笑う)


#ヨンウン仕事部屋

(ヨンウン、デスクで電話中)

ヨンウン : まず綺麗でなくちゃ。綺麗でないと視聴者は没入してくれないわ。

ノPD : 綺麗で演技が上手い俳優はあまりいないですよ。それに若い俳優に演技を期待しても。

ヨンウン : だから探してください。各企画社にもう一度企画案を回して、プロフィールを受け取ってちょうだい。

ノPD : 実は...一人いる事はいるんだけど..

ヨンウン : 誰ですか?

ノPD : ソ先生はあまり好きじゃないだろうから...

ヨンウン : もったいぶらないでさっさと言って。誰なの?新人?

ノPD : 違いますよ...それじゃ、ソ先生も一度会ってみませんか?

ヨンウン : 誰なのか言えないの?言えもしないのに、会うも会わないもないでしょ?この忙しいのに、むやみに行ったり来たりさせないで。

ノPD : ああ、もう。いずれにしろ、俳優面談はしなけりゃならないんですから。それでは ..明日に約束を取りますよ。

ヨンウン : 分かりました。明日行きます。まずは会って話しましょう。


#翌日、放送局ドラマ局小会議室

ヨンウン : ここで会う事になってるの?

ノPD : はい...ちょうど放送局で録画があって...

ヨンウン : 今、他のドラマ中なの?掛け持ちなんて、私はイヤよ。

ノPD : いいえ。ショープログラムの録画です。

ヨンウン : バラエティーもやるの?新人じゃないの、それだと。

ノPD : 完全な新人ではなくて..

ヨンウン : 一体誰?歌手?

ノPD : ちょっと連れて来ますから。待っててください。

ヨンウン : (独り言で) 一体誰?じらすわね...

(その時、ドアをノックして"監督~" と言う声が聞こえる。)

ノPD : (嬉しそうに立ち上がって) おお。早く入って。さ、入って入って。

ヨンウン : (好奇心に首を傾ける )..?

(ドアを開けてチェリーが入って来る。)

ヨンウン : (あっと言う表情、目を丸くし、口を開けてノPDを見る) 監督!!

ノPD : (聞こえない振りをしながらチェリーに) 早く座って。まず俺たちの作家先生にちゃんと挨拶させていただいて。

チェリー : (こくりとお辞儀をする。)こんにちは、ソ先生。お久しぶりです。

ヨンウン : (不満な表情) これまでも気分が悪くなるような事はあったけど、今日は最悪だわ。(ノPDに) 監督、ふざけてるの?キャラクターを把握してないの?

ノPD : あれ?どうしてそんなに否定的なんですか?チェリー位なら悪くないでしょう? 顔が綺麗で演技が上手くて。それに若いし。

ヨンウン : (嘲笑う)若けりゃいいの?30代でも若く見える子は多いわ。問題は、この子はキャラクターに合わないという事よ。(チェリーを見て)このマスクがどうやったら国民妖精になるわけ?

ノPD : なぜですか?女優は装い次第です。とりあえず綺麗だから大丈夫です。(チェリーに) 出来る?

チェリー : (ヨンウンの機嫌をうかがう。そしてはっきりと)はい!

ヨンウン : 外貌はいいとして...カリスマはどうするの?この子は白痴美にぴったり!なのよ。

チェリー : 先生、私にやらせてください。やりたいんです。

ヨンウン : (そっぽを向き、再びチェリーを見て) あのね、チェリーちゃん。したいから出来るわけじゃないのよ。自分に合うイメージというものがあるの。この役は甘くなくて、いわゆるアンチヒーローキャラクターで、そのうえ気難しい配役だから、イメージが当たらなければ、視聴者たちの非難の格好の餌食になるわよ。あなたにこなせる?

チェリー : 分かってます。でも絶対に!したいんです。

ヨンウン : 一体これをどうして絶対に!したいと思うの?

チェリー : これはオ・スンアじゃないですか。

ヨンウン : !!!

チェリー : 他の人に与えたくないんです。オ・スンアは私がやらなくちゃなりません。

ヨンウン : ...なぜ?

チェリー : 私の夢はオ・スンアのようになる事です。まだ全然至っていないけど、オ・スンア役をやりたいんです。そして...

ヨンウン : そして..?

チェリー : 私はオ・スンアが分かります。私以外にオ・スンアを出来る人はいません。

ヨンウン : どういう意味?

チェリー : オ・スンアは...オ・スンア先輩は、見掛けとは違う人だから...

ヨンウン : ...(目つき搖れる)

チェリー : 先生もお分かりでしょう?だからシナリオも期待してるんです。オ・スンアをちゃんと残したいんです。私以外に出来る人はいません。

ヨンウン : ......(視線回して) 少し考える時間をちょうだい。

ノPD : (内心ホッとして)そうですね、とにかく考えてみないと。(チェリーに) お疲れ様。もういいよ。

チェリー : (こくりと挨拶して) さようなら。また後でお目に掛かりましょう。

ヨンウン : (チェリーの姿見て不満そうに頭を回す)...

(チェリー出て行く。)

ヨンウン : とりあえず考えてみるから...まだ決定じゃないんからソワソワしないで。

ノPD : まったくもう、ソ先生は...私が何か心配していると?お言葉ですが...

ヨンウン : 心配もノPDほどになると、こっちが不安になって来るわ。

ノPD : えっ!そんな...いや一体俺が何をしたと....本当に...(悔しい)


#放送局休憩室

(ヨンウン、ギョンミンにメールを送る。)

" 忙しい?私、今1階休憩室.."

(返事が来る。)

" ちょっと待って.すぐ降りて行く"


#放送局前庭

(ギョンミンとヨンウン、ベンチの前に立っている。)

ヨンウン : 春はここは暖かいんだけど、今は暑いわ...

ギョンミン : まだ夏じゃないか。秋の日差しは元々熱いんだし.. あっちの日陰に行こう。

(日陰になった側のベンチに行く。ギョンミン、手ぬぐいでヨンウンの席を綺麗にしてやる。)

ヨンウン : (座って微笑む)ありがとう。

ギョンミン : (ヨンウンを見てほほ笑み、並んで座る)

ヨンウン : 俳優との顔合わせをしているところなの...

(しばらく後)

ヨンウン : どう思う?

ギョンミン : 俺はあれこれ言える立場じゃないだろ。

ヨンウン : ただ意見を聞きたいの。今話した通り、オ・スンアがモデルだから。いずれにしろドラマが始まればその事は知れるわ。思われているとおりのわがままなトップスターとして描くか、そうでなければ翼を失った天使として描くか、という事よ。

ギョンミン : 君の考えは?

ヨンウン : チェリーがあんな表情をしたのは初めて見たわ。オ・スンアの話をする時、目が冴えていた。心をちょっと揺り動かされた事も事実よ。

ギョンミン : 俺の考えでも、チェリーにとってオ・スンアは特別だったんだと思う。チケット・トゥ・ザ・ムーンの時 ..最後にはチェリーはオ・スンアにかなり従ってただろう?なぜ...二人の間に何があったのかは分からないけど、何かあったことだけは明らかだと思うんだ。

ヨンウン : ...

ギョンミン : オ・スンアに聞いてみたらどうだ?モデルにするなら了解も受けないとならないし..

ヨンウン : それはもう話したわ。もうスンアに許諾はもらってるの。

ギョンミン : そうか。

ヨンウン : (遠くに視線をやって) オ・スンア...







(原作出処: sonkhj1116さんのブログ

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