いなかの猫の天邪鬼部屋

第10話

OnAir~シーズン2・第10話~


#3日後、放送局小公開ホール

(ヨンウン、ノPD、ギョンミン、前方の座席に座っている。)

ノPD : (ギョンミンを見て) お前は何しに?

ギョンミン : 見物しに来ただけですよ。

ノPD : 自分のドラマはいいのか?

ギョンミン : 心配しないでください。自分の仕事を中断してまで先輩に媚を売りに来はしませんから。

ノPD : は?...お前...何をそんなくだらない事言ってんだ?

ギョンミン : (にっこりと笑って) 生きて行くのが大変なんで、ちょっとイメージを変えてみようかと思って...

ヨンウン : 二人ともうるさいわよ。それと、イ監督には私が見てくれるように頼んだんだから、ノ監督はごちゃ

ごちゃ言わないで。

ノPD : え?何で... 俺は置物か?俺が監督なのに。'ブロードキャスティング'の監督は、このノ・ヨンチョルなのに~。

ヨンウン : 誰がそうじゃないって言ったの?大変な決定なんだから一人でも多くの意見を聞いてみた方がいいでしょ。

ノPD : それなら局長を呼んだ方が。他のドラマのPDをのぞきに来させるよりは。

ギョンミン : 俺がいて都合が悪いんだったら出て行きますよ。(席から立ち上がる) 俺は...チェリーのオ・スンアが気になってもいたし...。先輩と俺との間でこういう事くらいはお互い手伝い合えないかと思ったんだけど...帰ります。

ヨンウン : (ギョンミンを振り返る) イ監督!

ノPD : (少し態度が和らぐ) こいつ...そういう言い方をするから俺も結局は折れることになるんだよな...。座れ!せっかく来たんだから、見て行け。

ギョンミン :(微笑んで、元の通りに座る)

(舞台内側から助監督が出て来て)

助監督 : 始めますか?監督。

ノPD : ああ、始めろ。

(チェリー、歩いて出て来る。)

チェリー : こんにちは。ブロードキャスティングのチェミニ、チェリーです。

ヨンウン : まだチェミニがあなたってわけじゃないわよ。

チェリー : (しょんぼりして) はい。

ヨンウン : 5番シーンの2を読んでみて!

チェリー : (決然とした表情で)はい....
"ドラマ班のPDがチョン・ソンウを知らない?" ..."ふざけてるの?"

ヨンウン : 次は17番シーン。

チェリー : はい..(シナリオをめくり、声整えて) "大物になられたのね。5年前には目も合わせる事が出来なかったのに"

ヨンウン : ...最初に読んだところをもう一度読んで。

チェリー : え?はい... "ドラマ班のPDがチョン・ソンウを知らい?" ..."ふざけてるの?"

ヨンウン : 声のトーンをちょっと落してみて。

チェリー : え?

ヨンウン : 声を少し低くするって事よ!

チェリー : はい...(ちょっと低く) "ドラマ班のPDがチョン・ソンウを知らない?"

ヨンウン : 発声練習が必要ね。低音での響きがまるでないわ。あなたの声は高過ぎる。そんなんでどうやってカリスマが出せるの?ただ大きい声を出す事は出来ても相手を圧倒するようなエネルギーがないわね。

チェリー : (途方に暮れる) 練習します。

ヨンウン : (腕組みをする) こんなあなたを信じて任せられるかしら?

チェリー : (涙ぐんで) 一週間だけ時間をください。レッスンを受けて徹底的に準備して来ます。

ヨンウン : (ため息) ...33番シーンを読んでみて。

チェリー : はい..(唾飲む) " おじさんは誰?どうしてこんな事をするの"...


#休憩室

(ヨンウン、ギョンミン、ノPD、座って飲み物飲む。)

ノPD : (ヨンウンの機嫌をうかがって ) どうでしたか?声を低くさえすれば大丈夫では?一生懸命やってたけど..

ギョンミン : (ヨンウンを横目で見て) 一生懸命なのはプロじゃないと言うんだろ。上手くやってこそプロだと。

ヨンウン : (脹れた表情でギョンミンを睨み、ノPDに) いくら一生懸命やってもどうしようもない事があるんじゃない?チェリーにはどうやっても無理よ。既存イメージを乗り越える事ほど難しい事はないわ。2%の不足なのよ。

ギョンミン : ......

ノPD : (ギョンミンに) お前の考えはどうだ?うん?見たら何か言ってくれないと。

ギョンミン : (にっこりと笑って)言ってもいいですか?俺は他のドラマのPDだから、この件に干渉するわけにはいかないでしょう?

ノPD : こいつ...根に持ちやがって...この野郎~。

ギョンミン : (色をなして) 俺の考えでは、冒険するに値すると思います。

ヨンウン : 何の根拠が?

ギョンミン : ソ作家の言うとおり、発声も弱いし、まだ経験も不足だし ..多様な感情シーンをを深く表現するのは大変なんです。それでも情熱があるじゃないですか。自分でなければならないという目つきでしたよ。

ヨンウン : でもね...やりたいと思えば出来るんだったら誰だって出来るんじゃないの?

ギョンミン : まだ撮影までは時間はあるじゃないですか。チン代表に話して徹底的に準備させて、そうして一度任せてみたら?

ノPD : 本当にソ先生は完壁主義者だから。俺好みの温厚従順な人はどこにいるんだろう?まったくもう...。不足ならば不足なりに、足りなければ足りないなりに、補って、作って。そんな事が...

ギョンミン :(笑う) 先輩の人生観ですか?

ノPD : ああ、俺の信条だ。世の中に完璧な事はない!堅苦しく生きるな!

ヨンウン : (情けない)だからそんなにいいかげんなのね。

ノPD : そんな~。余裕を持って生きようというのは悪いことですか?

ヨンウン : その余裕がすごーくあるから問題なのよ。補うって、何を補うの?...(頭を回して独り言)もっと言う事はなかったかしら...

ノPD : (むかっとして立ち上がる)ソ先生!何ですって!

ギョンミン : (ノPDを制して) ああ~、先輩、堪えてください。ソ作家..(ヨンウンにどうしてそうなんだと言う表情)

ヨンウン : ...(不満だが仕方なく) 申し訳ありません。私の言葉がちょっとひどかったですね。私、ちょっと激しい性格だから。

ノPD : (ハーハー言いながら座る) だからと言って、そこまでおっしゃってはいけないでしょう。私たち、会って一日二日の間柄でもないんだし、お互い感情的になって、いい事なんてありますか?

ヨンウン : はい、申し訳ありません。

ギョンミン : (笑って独り言で) 俺はあの時、更にもう一言言われたんだけどな...

ヨンウン : (ギョンミンを睨む)...


#二日後、ドラマ局廊下エレベーター前

(エレベーターが開いてサンウが降り、セアが乗る。)

サンウ : !!!....(しばらく立ち止まって振り返り、再びドラマ局に向って歩き出す。)


#ドラマ局事務室

(PD室デスクの間。ノPDの机の前に、ノPDとサンウが座っている。)

サンウ : ノ監督、ありがとうございます。チェリーに目を掛けてくださって。

ノPD : いえいえ、そんな..。それでなくてもソ作家が頑だから、説得するのが非常~に大変だったんです。ハハハ..

サンウ :とにかく監督を信じます。よろしくお願いします。

ギョンミン : (入って来る) いらしてたんですか?

サンウ : ああ、イ監督。お久しぶりです。

ギョンミン : はい。(ノPDを見て)ユン作家が来ませんでしたか?

ノPD : うん?あー、来てたよ。お前の机に置いて行くと言ってたけど。

サンウ : ユン作家と言うと.....

ギョンミン : 彼女...先日申し上げた ...

サンウ : あ!...さっき出て行ったんですか?

ノPD : はい、チン代表が来る直前に出ましたが...見ましたか?もしかして。

サンウ : はい..エレベーターの前でちょっと会ったようで...

ノPD : 呆れるほどの美人じゃないですか。 俺はあんなに知的でセクシーな女を見たことがないですよ。俳優を見るのとはまた違った良さがありますね。他の女性作家たちは足元にも及ばないでしょう。

ギョンミン : (情けなく見る)...

ノPD : (ギョンミンに) そんな目で見るなよ、お前も。正直言ってソ・ヨンウンより百倍いいと思ってるんじゃないか?

ギョンミン : (にっこりと笑って) 物静かなソ・ヨンウンにときめきますか?

ノPD : 物静かな...はあ?

サンウ : (ギョンミンに) 制作社は決まりましたか?

ギョンミン : 自体制作することにしました。

サンウ : そうなんですか?良かったですね..... それで、俳優は?

ギョンミン : 主演級は確定したし、あとは数名、助演が決まれば。

サンウ : うちの子たちを使ってくれませんか?

ギョンミン : 俺が、どうして?

サンウ : (怪しげな目でギョンミン見てからニッコリ笑い) イ監督はちょっと変わりましたね。

ギョンミン : (そっと笑う) 最近よく言われます。

ノPD : 話す事がちょっと変になったんですよ。口数がちょっと多くなったと思いませんか?

サンウ : (笑う) 狼狽したりしても面白いですが、私は。

ギョンミン : シナリオを差し上げますから、検討してみてください。(シナリオ渡す) 配役に丸が掛かっているのは確定したぶんです。

サンウ : はい、ありがとうございます。(立ち上がって) 今度は一杯飲みましょう。

ギョンミン : はい、お疲れ様です。

ノPD : お疲れ様です、チン代表。


#一週間後、ドラマ局小会議室

(ヨンウン、ノPD、チェリー、サンウ、円になって座っている。)

ヨンウン : 自信ある?心配しなくてもいいかしら?

チェリー : はい。自信あります。本当に本当に一生懸命やります。

ノPD : OK、OK。これでチェミニ役は決まったな。

サンウ : 昨日オ・スンアから電話がありましたよ。

ヨンウン : オ・スンアからですか?

チェリー : ...はい。

ヨンウン : (分かりたい) 何と言っていました?

チェリー : ...決して妥協せず...死に物狂いでやりなさいと..(目頭赤くなる)

ヨンウン : (じいんとする)....

チェリー : (べそをかく) あの、本当に死に物狂いでやります、ソ先生...






(原作出処: sonkhj1116さんのブログ


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