いなかの猫の天邪鬼部屋

第24話

OnAir~シーズン3・第24話~


#オーディション場の外

(サンウ、時計を見て座っている。メッセージが入って来る。)

" どこですか?私は放送局だけど.."

(返事)

" 私も放送局。5階だが...オーディションに出る俳優がいるからちょっと来て見た"

" 私、そこに行きます。顔だけ見て行く"

(サンウ、メールを見て呆然とする。しばらくして向こう側の廊下から歩いて来るセア。サンウ、チラリと見る。セア、淡々と過ぎ去る。サンウ、無表情。通り過ぎて行くところをノPDが発見。)

ノPD : ユン作家!どうされたんですか?

セア : (ひそかに慌てる) あの....ちょっと立ち寄ったんです。雰囲気を見がてら..

ノPD : そうですか?雰囲気は、私がよく....ハハ...

(サンウ、気まずい心を無理に隠す。)

ノPD : コーヒーを一杯取って来ましょうか?次の作品の話もちょっとしながら...

セア : (困る) あ、あの..

ノPD : どうしたんです?....(皮肉っぽく) 何ですか、忙しいならそう言えば...(独り言だが聞かせるように)最近の若者は、年上の人間の方がペコペコしないとならないとは、まったく...

(サンウ、眉をひそめてしかめる。セア、サンウが気になる。)

セア : 申し訳ありません。急に用事が出来たんです。連絡を受けて行く途中だったので...またお会いしましょう。

ノPD : そうですか。(惜しい) それじゃ今度はゆっくり話しましょう。長く長く...

セア : (ぎこちない微笑み) ...はい...

(ノPD、行こうとしたがサンウを発見。セア、そっと見て行く。)

ノPD : あ、チン代表。いらっしゃったんですか。

サンウ : (表情固い) こんにちは。

ノPD : 何をされているんですか?ここで。オーディションを見に?(くすくす笑ってセアの消えた方を見る) ...

サンウ : (無表情に) 勘が落ちましたね。(見る)

ノPD : (きょとんとする) 何ですか.... 笑わせようとしたのに..

サンウ : だからですよ。今笑わせようとおっしゃった話がつまらないからです。あなたが芸能局PDでなくて良かったですよ。

ノPD : (ひそかに慌てる) お、俺の首を絞めるつもりですか?言葉がちょっとキツいですね。

サンウ : そんな事はありません。(見る) 一度は言いたかった言葉ですから。よくぞここまで持ちこたえました。勘が落ちたら危ないですよ、この世界は。

ノPD : (慌てていて話せない) チン代表...

サンウ : (眉間しかめて) 申し訳ありません。忙しいんです。(立ち上がる)

(サンウ、セアが行った方向に大またに歩いて行く。ノPD、唇をひくひくさせながらPD室に入る。)

(サンウ、廊下を回って察して非常口の方に行く。非常口を開けるとセアが壁にもたれている姿。)

セア : (笑う) ...よく見付けたわね。

サンウ : (笑う) ここ以外に行くところがないじゃないか。

(近付いてキスする。サンウ、思い出したように非常口を閉じる。)

セア : ?

サンウ : (笑う目) 俺たちみたいな人が他にもいそうだから...

(セア、睨みながら笑う。サンウ、セアを引き寄せて抱く。眺めて口付ける。濃いキスの後、また見る。)

サンウ : (可愛らしい視線) 出来るだけ一人で来るな。

セア : どうして?

サンウ : 見ただろう?ノPD。ノPDだけじゃない。男は皆同じだ。そうでない振りをしているだけだ。君が通り過ぎる度にじろじろ見るのが目障りだ。

セア : (ときめく) ヤキモチ?

サンウ : いや、ただイヤなんだよ。

セア : (笑う目) それはヤキモチよ。

サンウ : .....(ため息) そう、ヤキモチとも言うな...

(セア、サンウのヤキモチが幸せな。サンウに口付け、引き寄せて抱く。)

サンウ : (キスをしたまま) 夕方、行くよ...

(セア、幸せな目で微笑む。)


# 夕方、セアのアパート

(食卓に座った二人。セア、長いシャツに素足の格好。サンウ、じっとセアを見る。)

セア : すぐに食べれば美味しいのに...勿体ないわ...

サンウ : (手に顎を乗せてセアを見る) その...今着てるのは?

セア : (見て目を転がす) さっき着替えたのだけど?

サンウ : (目を細めて下を見て) じゃあ着ていたものは?

セア : ....見苦しい?

サンウ : 見苦しくても問題だけど...見苦しくないのも問題だ。

セア : 分かったわよ。見たくないと言うのなら着替えるわ。(立ち上がって歩いて行こうとする)

(サンウ、セアの手を握って引いて自分の膝に座らせる。)

サンウ : 見たくないのではなくて、その格好を見ていると食事が出来ないんだよ。食事が出来るようにしてくれ。

セア : (いたずらっぽく笑う) ...あなたの周りには綺麗でスマートな子が多いでしょう?こんな格好は見苦しい?

サンウ : 綺麗でスマートな子が俺の前でこんな事をするか?俺の事を誤解しているぞ。

セア : どうやっても若くて綺麗な子は若くて綺麗な子だもの。(見る) 今まで女優とスキャンダルになった事はないの?その...

サンウ : (見る)....その..何だ?

セア : (視線下る) ...似た目の女じゃなくて...

サンウ : .........

セア : (言葉を出した事を後悔する)....

サンウ : .....ソウンは(考える目)...

セア : (サンウの姿に寂しい).....(小さくため息をつく)

サンウ : (セアを見る) ソウンはデビューする前に辞めたんだ。(視線を回す) 俺がそうさせたんだ...。そして...

セア : (見る)....

(サンウ、立ち上がる。窓辺に行く。セア、寂しい目でサンウの背中を見る。)

(しばらく何も言わずに窓の外を見ていたサンウ、振り返る。微かに微笑みセアを見る。手を出す。セアに近付いて手を握る。サンウ、セアを引き寄せ、前に回って抱く。)

サンウ : (息を吐き出す) 最初に俺に近付いた人だった。だけど...俺は信じる事が出来なかった...。俺を好きだと言う言葉も、俺を見詰める目も、全て彼女の錯覚だとしか思わなかった。俺が彼女にどれだけ悪い事をして来たか.... それなのに俺を好きだなんて話があるか?

セア : (じいんと熱くなる)....

サンウ : だけど...彼女は本気だった。...彼女を手放そうとして酷く当たった俺の言葉が彼女を.....

セア : (心が痛み、涙を溜める)....

サンウ : 彼女をあんな事にしたのは...決して忘れられない俺の影だ....

セア : (頭を回してサンウを見る)....

サンウ : (見て苦笑する)....こんなふうに君といたら全てを忘れられるようで....。だけどそうすればするほど不安になる。これは過分な幸せなんじゃないかと思って...

セア : (胸が詰ったように) ...長い長い間辛かったのは分かるわ。でも、もう幸せになってもいいと思う....

サンウ :(深く息を吐き出す)そうだな....

セア : (見る)......

サンウ : ユン・セア....どうしてよりによって俺のような奴に....

セア : (寂しい微笑み) そうね...。どうしてあなたみたいに素敵な人を愛してこんなに不安になるのか分からないわ。

サンウ : (穏かな目で見る。セアの顎を持ち上げてキスをする) 愛してる、ユン・セア...

(セア、サンウの告白に体が震える。両腕でサンウの首を引き寄せて抱く.....)


#8月中旬、地方撮影地に向かう車中。

(ギョンミン運転中、チュニ助手席)


#(インターカット) ギョンミンとヨンウンのアパート前

(駐車場。荷物を積んでいるギョンミン。オキシム、鞄を持っている。ヨンウン、ウンミンを抱いている。チュニ、ウンミンを見ている。)

ギョンミン : (トランクを閉めて) 行って来ます。(ヨンウンを見て) 行って来るよ。

ヨンウン : (すまない。名残惜しそうに頷く)うん...。(チュニに) チュニ、行ってらっしゃい。よく言う事を聞いて...

チュニ : 御心配なく。僕が子供に見える?

ギョンミン : (苦笑).... (ヨンウンに) 心配するな。子供じゃないよ。

オキシム : 行ったら食べる事だけはちゃんとしなさいよ。暑い時はよく食べないと..

ギョンミン : (笑う) 分かってるから。心配しないで下さい。...チュニ、乗れ。

チュニ : 行って来ます。ウンミン、行って来るね。

(ヨンウン、じいんと熱くなり微笑みを作る。ギョンミン、ヨンウンに笑って見せる....)


#ギョンミン車中

(チュニ、カメラを触る。過ぎ去る風景を撮る。)

ギョンミン : 走っている車の中からだと上手く出ないぞ。シャッター速度が合わないから。)

チュニ : (画面確認する。がっかりする)....

ギョンミン : ちょっと俺のカメラを見せてやる。作動法が少し複雑だけどすぐ慣れるから。それで撮れば車の中からでもそう難しくなく風景を撮れるぞ。

チュニ : おじさんのカメラ?どこにあるの?

ギョンミン : 後部座席の鞄の中だ。レンズも何種類かあるから、ちゃんと習うならあんなカメラがいいんだけど...まだチュニにはちょっと早いと思う。その代わり撮影期間中使わせてやる。気を付けて扱うと約束さえすれば。

チュニ : (目がきらめく)...約束する。

ギョンミン : (微笑む) よし。(少し首を動かして見る) 分かるか?おじさんはあれを買った時、高くて眼を回したんだ。高かったんだぞ。故障させるとか壊すとかしたら...

チュニ : (口を尖らせる) 殺すぞ...

(ギョンミン、声を出さずに笑う。)


#地方撮影場、閉校した学校

ギョンミン : (オソクに) 宿泊場はどこだ?まずは荷物を解かないと。

オソク : 一番端の部屋二つを臨時宿泊場に決めました。監督の部屋は向かい側にあります。入口の近くにしておきました。

ギョンミン : 分かった。(チュニに) 行こう。

(チュニ、リュックサックを担いできょろきょろ見回しながら付いて行く。)


#閉校教室の中

(孤児院院長室として整えられた部屋。スタッフたちが取り囲み、俳優二名が演技する。ギョンミン、撮影に集中する。ギョンミンの横にチュニが座っている。目をきらめかせながら見る。)

ギョンミン : カット!.....もう一度。ジソクは今とても大変なところだ。まだおじけづいている状態だ。目の力を抜け。

ジソク : はい。

ギョンミン : もう一度。レディー~ アクション!

(チュニ、脇目でギョンミンを見る。照明器具、カメラ、マイクなどを好奇心に満ちた目で見る。)


#撮影場、夕食時間

(ギョンミン、カメラを持ってチュニに説明する。)

ギョンミン : これが絞りというもので、これがシャッター速度を合わせるんだ。絞りを開けば光がたくさん入って来るようになるし、締めれば少なく入って来るだろう?

チュニ : (頷く) ...

ギョンミン : そしてシャッター速度というのは絞りが開かれている時間を言う。時間が長い収録も光はたくさん入って来るだろう?

チュニ : (集中する。頷く)...

ギョンミン : 絞りの値はここに書かれた数字を言い、シャッター速度はこの数字で...見ろ。125,250と書かれたのが見えるだろう?

チュニ : うん。

ギョンミン : 125は125分の1秒間開かれているという意味だ。では250は何だ?

チュニ : 250分の1秒。

ギョンミン : そうだ。それではどちらが長く開かれている?

チュニ : (しばらく考える) 125分の1秒です。

ギョンミン : そうだ。だからシャッター速度は数字が大きいほど入って来る光が少ないという意味だ。それから絞りの値も...

(ギョンミン、熱心にチュニに説明する。チュニ、目をきらめきながら聞いている....)

(閉校の夜は深くなって.....)






(原作出処: sonkhj1116さんのブログ


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: