いなかの猫の天邪鬼部屋

第29話

OnAir~シーズン3・第29話~


#ホテル行事場所

(丸いテーブルを囲んで座った来賓たち。セアとチェ会長、隣同士のテーブルに座っている。サンウ、3、4台離れたテーブルに座っている。)

(セア、サンウをチラッと見る。サンウ、テーブルに座った人たちと談笑する。)

(行事追い込み。チェリー、歌う。サンウ、時計を見る。セア、サンウの姿に苛立たしくなる。)

カン局長 : (セアの視線をたどって見る) ...?..(サンウとセアを交互に見る)

セア : (焦燥をあえて隠す).....

(チェリー、歌が終わって下がり、テーブルに戻る、サンウ、チェリーに椅子を引いてやる。セアの方を努めて見ないようにし、外に出る。他の歌手が歌う。セア、立ち上がる。)

カン局長 : どうした?

セア : (きまり悪そうに微笑む) ちょっと失礼します。(意味深長な目で見る)

カン局長 : おい!...(首を傾ける)

(セア、行く。カン局長、セアの消えた方を見る。サンウの方のテーブル見る。考える目...)

(セア、廊下に出てきょろきょろ見回す。男子トイレの近くでしばらく立っている。待って、またテラスの方に行く。暗いテラスに何人かが立っている。探す。今にも泣きそうな表情。唇が乾燥する。見回していたが行く。低い声。)

" ここだよ"

(振り返れば隅の暗い所に立っているサンウ。セア、安心する。)

セア : (近付く) ......(詰ったような目で見る)

サンウ : (影に表情が覆われている) ......

セア : あなたの目が見えないわ...

サンウ : 見るな。見せたくない..

セア : (詰ったような) 私...

サンウ : 君...韓英グループの娘だって?それも一人娘..?

セア : (息苦しい) ......ええ。

サンウ : もしも....(ため息) ...いいや。もしもそう言われていたら、何かが変わっていただろうか...?

セア : (涙を溜める)......

サンウ : ...そう...分かっていたら ....君と付き合わなかっただろう....

セア : (唇を噛む)....

サンウ : ...どういうつもりだったんだ?今俺の頭の中にどんな考えが浮かんでいるのか分かるか?

セア : どんな考えも皆偽物よ。あなたを怒らせる全ての考えは全て偽物よ。騙されないで。

サンウ : 騙されないで...? 何に?誰に?俺を騙したのは俺だと....?

セア : そうじゃない。何を言っているのか分かるでしょう?(涙が流れる) 騙したんじゃない事は分かるでしょう?言えなかったという事も分かるでしょう?(嗚咽する) 私がどれほど人を信じられないのか分かるでしょう?こうするしかなかったのは分かるでしょう?......

サンウ : (胸が詰ったような。ため息)ハ........どうしよう...? 君は、知らされても.... 隠されても...どちらにしろ傷付くのは分かり切っていたんだな....

セア : (息を吐き出す) それで....?私、あなたを傷付けたのよね。私を(締め付けられるように).... 捨てる?

サンウ : (冷笑して) ハ- 捨てる?誰が誰を?俺がユン・セアを?今のこの状況は、チン・サンウがユン・セアを捨てる状況か?

セア : (無情な目で見る) ....そんな言い方しないで。辛いわ。

サンウ : (両手で顔を覆う) ハ.......... 今日はこれ位にしよう。考える時間が必要だ。連絡するまで待ってくれ。

(サンウ、廊下に出て行く。セア、ぼんやりした姿でサンウが消えた方を見る。テラスのもう一方の暗い所にカン局長が立っている。ため息をつきながらセアを眺める。)


#深い夜、サンウの事務室

(窓辺に立ったサンウ、微動だにしない。窓にもたれたまま窓の外を眺める。遥かな目...)


#セアのアパート

(明るく灯った居間のソファ-に体を縮こめて座ったセア、涙だけ流れる....。キッチンの椅子の背に掛けられたサンウのシャツが見える...)


#数日後、カン局長の事務室

(カン局長とセア、向かい合っている。)

カン局長 : (様子をうかがう) シナリオは..順調か?

セア : (淡々と) はい、どうにか。

カン局長 : (見る。ためらう).....お前。

セア : はい。

カン局長 : (ため息をつく) ちょっと出よう。(立ち上がる)

セア : (見る)...?


#コーヒーショップ

カン局長 : お前も大人だし、自分の事には自分が責任を持っていると信じているが。

セア : 何をおっしゃりたいのですか?

カン局長 : (ためらう)....(決心したように) そうだな。単刀直入的に聞こう。お前とチン・サンウとはどういう仲だ?

セア : (ハッとする。表情に出さない。淡々とした目) .....

カン局長 : 言ってみろ。二人が普通ではない仲なのは分かる。どの程度の仲だ?

セア : (沈んでいる) 普通ではない仲なのは分かるですって?

カン局長 : そうだ。だから言い逃れせずに言ってくれ。

セア : 言い逃れ?こうなった事がかえってありがたいです。

カン局長 : ...?

セア : (大胆な) 普通ではない仲だと分かるですって?そうです。私たち、普通ではない仲です。

カン局長 : お前....?

セア : (目が搖れる).... 申し訳ありません。こんな言い方をしてはいけないのに、私、今...(感情が込み上げて来る)...

カン局長 : (戸惑う).........

セア : どういうつもりか大体見当がつきます。何も言わないで下さい。

カン局長 : 見当がつく?何の見当がつくんだ?お前、(話の糸口が見付からない) .....チン・サンウがどんな人間なのか分かっているのか?

セア : は... そんなお言葉がありますか?どんな人間なのかだなんて。

カン局長 : (情けない) お前.... お前はまだ世の中が分かっていない。虚しい結果になるのは目に見えている。彼は見掛はカッコ良く見えるだろう?チン・サンウ.... (頭を回してため息をつく).....どんな関係でもなかったら私も、どこへ行っても誰彼なく陰口を言うような事はしない。人前でチン代表の陰口言った事は一度もない。だが今は言わないとならない。

セア : (淡々と見る)...言って下さい。

カン局長 : 一昨年、彼がオ・スンアに裏切られたのは、彼がそうされるような人間だったからだ。自分の利得になる事にはなりふり構わない。放送が壊れようが無くなろうが構わない。無概念で眼下無人だ。

セア : (堪える) それから?

カン局長 : それから?これだけでは足りない?古語に、一を見れば十を知る事が出来るというのがあるだろう?まだ必要なのか?

セア : 私が一番嫌いな諺ですね。

カン局長 : 何だって?

セア : 一を見れば十を知る事が出来るですって?それは先入観と独り善がりを正当化させる典型的な詐欺文句ではないですか?誰かが見たいように見た一つを挙げて、残りを判断しろと?誰にでも長所があって、誰にでも弱点があります。私もそうだし、伯父様もそうだす。だけど私たちはその短所を上手く隠しているんです。他人を気配りするという名目の下に、被害を与えないラインで適当に偽善を落とせば教養ある人になりますから。

カン局長 : (開いた口が塞がらなくて話せない)...

セア : (目を閉じて、また開ける)..彼に咎がないという事ではありません。ただ、彼にも長所があるという事を言いたかったんです。興奮して申し訳ありません。

カン局長 : .....私の限度には耐えられないだろう。(見る) どういう意味か分かるか?

セア : (小さくため息をつく)...はい。


#サンウの事務室

(サンウ、窓辺に立って窓の外を眺め、時々ため息をつく....)


#夜、スタンドバー

(サンウとギョンミン、スタンドに座っている。)

ギョンミン : .....(見る) どういう事ですか?

サンウ : ......(やや苦く笑う) そういう事です。

ギョンミン : そうですね。...それで、どういう事なんです?

サンウ : (一点を見て) 分かりますか?はらはらする.... 平安...? (苦笑) 話にならないかな...

ギョンミン : 話にならないですね。はらはらする平安だって...

サンウ : それでは ...あれは何だったんだろうか?ああいうものが幸せだったんだろうか?だけど....それでもはらはらする幸せという事か?

ギョンミン : でも平安よりは話になりますね。幸せだと感じる事は瞬間でも可能だから...

サンウ : そうですね。(遥かな目) 幸せな瞬間...瞬間の幸せ....

ギョンミン : ......一体何事ですか?ユン作家と何かあったんですか?

サンウ : (苦笑) 分かりますか....

ギョンミン : まったく...どれだけ鈍い人でもちょっと見れば分かりますよ。幸せとか、はらはらとか、そんな言葉を聞いて、分からないはずがないでしょう?

サンウ : (小さくため息をつき、やや苦い微笑みを作る)...こうなるだろうと思っていました。俺には相応しくない幸せだと....

ギョンミン : (見る)....

サンウ : 俺には瞬間意外には許されない事だったんです....これ以上欲張ってはいけない.....

(サンウ、寂しい微笑を流し、目を閉じる....)

(ギョンミン、眠ったサンウを見下ろす。心が重い。時計を見る。)

(2時14分....)

(ためらう。電話を手に取る..)

ギョンミン : もしもし。夜分遅くに申し訳ありません。イ・ギョンミンです。


#セアのアパート

(玄関が開かれ、セアが出て来る。ギョンミン、サンウを背負って入って来る。)

セア : (ソファ-を示して) ここに...

(ギョンミン、ソファ-にサンウを下ろし、ため息をつく。)

ギョンミン : それほど飲んではいないんですが、あれだけ酔ったのを見ると、既に飲んでいたか体が弱っていたかのどちらかでしょう。.... 朝になったら朝食をちゃんと食べさせて下さい。

セア : (ありがたい。微笑む) 改めて一度感謝します。電話くださった事...

ギョンミン : ......何があったんです?かなりの事がないと、あんな姿は見せない方なのに。

セア : 私もよく分かりません.... (感情が込み上げて来る) .....

ギョンミン : (見る).......お二人の事ですから、後はお二人で。.... もし助けが必要ならば電話下さい。俺にでも、家内にでも。

セア : はい...ありがとうございます...

(しばらく後、ソファ-に眠ったサンウ。体を縮こめて座ったセア、サンウを見下ろす....)


#朝、セアのアパート居間

(サンウ、かろうじて目覚める。周囲を見回す。枕元に影を見る。セア、体を縮こめたまま膝に顔を埋めて眠っている...)

(サンウ、起きて座る。じいんと熱くなった目でセアの姿を見る。ゆっくり手を伸ばしてセアの髪を触る。...唾を飲み込む。搖れる目。ためらってゆっくりセアの頬に口付ける。セア、目覚める。穏かな目でサンウを見る。サンウ、詰ったような目でセアを見る...

サンウ : ....大丈夫か?

セア : ...いいえ......大丈夫?

サンウ : ....いや....

(セア、頭を上げ、黙って眺める。サンウ、黙って眺める。胸が詰ったような。)

' 俺に許されるのは...どれくらいの幸せだろうか....?'






(原作出処: sonkhj1116さんのブログ


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