いなかの猫の天邪鬼部屋

第16話

第16話 光と陰

ウンス以外の人間と融合する事を拒否するドウと、世間の人々と融合する事を受け入れようとするウンスの葛藤。
光を失ったドウに残った陰、そして100万個の卵を得たシンに残った光…


01.なぜ私の気持ちが分からない?お前は私の妹じゃないか!一つに融合出来ないチェ兄妹


窮地に陥ったドウは、最も辛い時、自分でなくシンの傍にいるウンスを理解出来ない。ウンスがいない事が切実なドウは、そんなウンスが恨めしいまでになる。
なぜ、あえて危険で汚い世界に自ら飛び込むのかというドウの叱責に、ウンスは、世界は汚くないとドウの言葉に全面的に反駁して立ち去る。 ドウが作った枠の中に閉じ込められて生きていたウンスが唯一世界と疎通出来る方法は、奉仕活動をしながら人々と会う事だけだった。 外の世界に対して好奇心と恐れが混ざっていたウンスは、ドリームチームと会ったり色々な人と会って疎通しながら、真の自身の世界を発見し、ドウがそれをひどく嫌がってもドウを否定するまでに成長する。 もう少し自己主張がはっきりし、覚悟するようになったと言うべきか。
ドウがウンスをいくら渇望してもウンスを得られない理由は簡単だ。
先日ドウが言ったように、 ウンスは光でドウは陰 だからだ。 陰が光を追うのであって、光が陰を追う事はない。
ドウはウンスを守ると言う名分の下、この世界の全ての人を追い出して二人だけの王国を建設しようとするが、逆に言えば、世界に背を向けてウンスを独り占めしようという利己的で排他的な欲にも解釈出来る。
ドウがウンスという光に魅惑され引き付けられる以上、ドウという闇は陰になり、ウンスを導く事は出来ず、追うしかないのだ。今、ウンスに戻って来て欲しいと頼むドウのように。
いくら苛立ち哀願しても、ウンスは決してドウの傍に戻って行けない。
一つの血筋から生まれたチェ兄妹であるが、全く違う性質を持って生まれた二人は、水と油のように一つとして融合する事が出来ない。社会という一つの血筋の下で'民主主義'の象徴として生まれたウンスが純粋性を持った水なら、純粋性を失い金が直ちに権力になる'資本主義'の象徴として生まれたドウは油だ。 ウンスがドウの世界を理解し妥協した瞬間、ウンスの純粋性は資本主義の世界(油)に汚されてしまう。
そのため、ウンスは'私がそちら側に行く事は出来ないから、お兄さんが私の世界に来て欲しい'という言葉で ドウに一緒に疎通する事を頼む。
だが、民主主義から資本主義の世界に入って行くより、資本主義に染まった人が再び民主主義に戻って行く方が難しいのが事実だ。シンを愛していてもシンを捨て、ドウの実体を知ってもドウを捨てられないギョンアのように。
皆が一緒に生きて行く通念的民主主義思想世界に来る事を提案するウンスと、少数権力階層以外と疎通を断絶させるドウは、互いに違う世界を指向するため、一つとして融合出来ず、対立するしかないのだ。
だが、 方法が全くないわけではない。 チェ兄弟が仮に光と陰、水と油のように互いに違う世界を持ち、一つになれなくても 共存する事は出来た。
イスラムと絶え間なく戦争をし侵略されたが、イスラム世界の東方文化に接して異文化を受け入れる事で全て新しい独自的な文化を誕生させたスペインのように、ドウとウンスも 互いに違う世界の有利な長点を認めて受け入れながら共存する方法を選んでいれば、理想的な社会性を誕生させられたかもしれない。
だが、惜しくも融合する事が出来ないドウのぎっちり塞がった思考方式は、ウンスすらまともに解く事が出来ず、シンに再び奪われる失敗を生んだだけだった。
こうして賢明なドウが、'夢の都市'と呼ばれるほど理想的で完璧な'ネオモナコ'を完成させる事が、どうやってもウンスの世界と融合しない以上、もう現実性のない幻想に過ぎない事を理解出来なかったのか、残念なだけだ。
'ドウ'が'王座に座り'資本主義'を統治し、ウンスが女王の席に座り'民主主義'を円満に探るシステムの、資本主義と民主主義が完璧に融合し疎通する理想的な国ネオモナコは不可能だったのだろうか。

02.女王ギョンアの歩み

先日ミョンソンによってドウの身上が明かされ、ドウの全ての実体を知る事になったギョンアは、ドウとの夫婦関係を持続し、会社経営も同様に、担った責任を果たす姿で、苦しく大きな変化は見せない。偶然会ったシンに 涙を流しながら至らなかった自分を後悔し、許しを請うギョンアは、それでも女王の道を選ぶという意志を明らかにする。 既にドウと結婚までした状況で、資本主義に慣れ、野望まで大きくなってしまったギョンアは、再びシンの世界に戻って行って素朴だった理想的なギョンアに戻る事は出来ない。
そんな面でギョンアは相当現実的で強い人物 だ。
チェ会長を訪ねて行き、ドウが変わる事が出来るかという問いを投げるギョンアは、ドウを捨てるよりドウを抱き込んで一緒に同じ世界で生存出来る 妥協案 を探し模索しようという 意志 を見せる。
母性愛が強い人物として描かれるギョンアは、感情の不在に由来するドウの傷を見て、離婚という劇的な選択するのが難しかったのだ。
だが、そうしてギョンアが妻として任務をなし遂げられるよう努力しているわりに、仮に愛のない夫婦というタイトルをそのままにしいておいたとしても、ドウの非常識的な配慮ない行動は良くなる兆しを見せず、むしろ酷くなるだけだった。
その間 ドウは常識的な線とかなり虚飾的な姿でギョンアを眩惑 させたが、ウンスがおらず隙間が多くなったからか、ギョンア風情には気を遣わなくなったからか、前と同じでない、より冷やかで冷笑的な姿を見せるまでになる。
一緒に帰らないのかというギョンアの言葉に、カードを渡して'出来る事は金以外にない'というふうに、当時のドウは自分が本当に夫としての役割を忠実にしていると錯覚しているように淡々と満足そうな表情だった。
ただ夫は金をよく稼いでやり周期的に性関係を結べば良いという、義務的なものが全てだとだけ思っているドウを通して、彼がチェ会長の家父長的な制度の下で、きちんと成された家庭を経験出来ず、学んだ事がなかった事を体感出来る。
愛でドウを変化させようとするギョンアの意志は、とても崇高で立派だが、果たしてそれがドウに伝わるのかは未知数だ。愛に免疫がないドウは、ギョンアの愛を感じる事が出来ないからだ。
自分の心は見たくないと否定するドウは、自分の心を気にする人間にもなれない。そのため、更にウンスに執着し、ウンスに全ての末梢神経を注いでいる事にもなる。
ドウの病気を愛で昇華させ、女王になろうとするギョンアの野望は果たして成し遂げられるのだろうか?

03.100万個の卵を遂に一つに固める

ウンスを失った喪失感で、ドウは更に毒を抱え、農業法人の土地を横領するための作戦を攻撃的に浴びせ始める。
シンの側に立ち、農業法人の土地に30億を投資したボムファンに接触したドウは、ミョンド市開発計画に今後発生する建築関連中小企業の管理をボムファンに一任するという約束をし、農業法人の土地への投資から手を引く事を交渉する。
大きな収益が保証されるドウの提案に揺さぶられるボムファンは、義理より利益を選ぶ事にし、農業法人の土地の投資を途中下車する事にする。
30億という大きな投資者を失い、農業法人の土地の住民たちは大きく落胆し、その後、市から土地収用を理由に最小50万ウォンの保障額だけ受けて土地を奪われるかもしれないという不安感に包まれる。
彼らはドウに坪あたり400万ウォンで売るまで頑張るべきだというシンの主張にも、力を失い、坪あたり100万ウォンというドウのとんでもなく低い交渉を受け入れる事にする。
以来、ドウの術数に巻き込まれ、農業法人の住民たちが被害を受けるのを守れなくなったシンは、ギョンテの知識を借り、組合長が任意でサインした契約を無効化させる事が出来る法律を見付け出し(組合法32条、組合員の過半数の署名を受けて農林部長官に提出すれば、組合長の契約を取り消させる事が出来る)、どうやってでもドウに向かった農業法人の住民たちの心を引き戻そうと努力するが、既に心を固めた住民たちは、シンの孤独な叫びに耳を傾けてくれなかった。
一人の力でドウに勝てない事を痛切に感じるシンは、自恥感に落ち、これからどうやってドウから彼らを助ける事が出来るのかと漠々とするだけだった。
だが、シンは一人ではなかった。
彼がひどい孤独に苦しんでいる時、再びシンのところに戻って来た農業法人の住民たちは、やられにやられ、闘いに闘った内功を賭け、彼らなりに慎重で体系的な闘いを準備していたのだ。
一人で闘う方法から一緒に闘う知恵を発見したシンは、農業法人の住民たち(組合員)を通して遂にドウと張り合える力を得るようになり、そうして迷い続けた'100万個の卵'を得るようになった。
小さなシンは一人では巨大なドウを崩せないが、100万個の卵の結束力は農業法人の土地を横領しようとしていたドウの計画に蹉跌をもたらし、ドウを混乱させる事に成功する。


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