いなかの猫の天邪鬼部屋

第17話

第17話 ウンスのためのレクイエム

憚りなく伸びて来るドウの鋭い攻撃、
ウンスに向かった悲愁が重い鋸の剣になってシンとドウに戻って来るのを誰も予想出来なかった。


ミョンド市開発投資誘致を事あるごとに妨害するドリームチームのおかげで資金難に苦しむ ドウはシンの人々を一人ずつ威嚇する に至る。
もう詐欺師生活を整理しているムンホに詐欺罪をかぶせ、ギョンテには'虚偽事実流布罪'という 50年間眠っていて使用された判例がない法を適用 させ、ドリームチームをのっぴきならない状態に陥れる。
憚りなく攻め入って来るドウの攻撃で足元に火が点いたシンとジェミョンは百方手を尽くしてムンホとギョンテを助け出す方法を模索するのに忙しく、泣きっ面に蜂で、信じていた大兄貴ボムファンまでもがドウのミョンド市開発下請ブローカー提案を受け入れ、 農業法人の土地への投資から手を引き 、シンを更に混乱させる。

01.お前は私の心じゃないか。ドウのウンスのためのレクイエム

いつもその場所でドウを見守っていたウンスは、もう以前のウンスではない。
いつも好き嫌いをはっきりさせるより、呼ぶままに順応するのがほとんどだった彼女は、今や全面的にドウを否定し始める。
ドウを惜しがる気持ちは相変わらずだが、ドウの'ネオモナコ'を認めも許しもしない、
生きる世界が違うという言葉で決して自分が先にドウの世界に入って行く事はないという事を覚悟する意志をドウに明らかにした状態だった。
いつも自分は間違わなかったと信じて来たドウが、他も誰でもないウンスから'間違った'と否定され、ドウはそんなウンスを信じられず、完全に自分だけのものでなければならないウンスを'私の人'という言葉で汚すシンまでが耐えられない憤怒として近付いて来る。
ドウは、そんな理由で一人ずつ'シンの人'たちを傷付け始める。
万一ウンスが完全にドウだけのウンスでなくシンの人になれば、彼の言うとおり'ウンスを壊すかシンを殺すか'二つの中の一つを選ぶという事だ。勿論ドウが自分の手で意図的にウンスを傷付ける事は決してない。(だからシンを殺そうと判断したという事。)
シンに会う前、ウンスは家に閉じこもって寂しく一人で食事をしたり時を過ごしたり慈愛院に通ったりしながら奉仕活動をするのが全てだった。平凡な20代のように、ふさわしい友達の一人も設けられず、いつも一人寂しく過ごすのがウンスだった。
そんなふうに寂しかったウンスが、シンと会ったりドリームチームと100万個の卵を見て聞いて学び、新しい世界に触れ、ドウの鳥かごの中から離れ、世界の外に向かって翼をはばたかせ始め、世界は汚く、危険な所はやぼったいと信じているドウは、目の中に入れても痛くないウンスが世界の外に、それも自分が最も辛い時に敵であるシンの傍を守っているのだから、気が狂い、とんでもないと否定するほど理解出来ない状況ではないだろうか。

02.シンとウンスの心がドウを刺激する

だが、シンもまた、絶えず気まずいという理由で出て行けと難癖をつけ、多少無愛想に接してはいるが、'私の人'になってしまったウンスは特別な存在として近付いて来始める。
シンはそもそも情が大きく気が優しい人物であるから、努めて冷やかにしていたから気の毒で申し訳ない気持ちに包まれていたはずで、 それでなくても世情に疎く善良に成長した子供が、自分と会って苦労するのがはっきりしているのに、気の毒な気持ちにならないはずは絶対にない。
だが、宿敵の妹で自分が常に傷付ける事がはっきりしている女なのに、ギョンアに対する傷もまだきちんと癒えない状態で、愛の面倒を見る余裕など許せなかったシンにとってウンスは、そのまま、親しくなるのが怖い'気まずい女'という字体だったのだ。
そんなふうに心が入って行くほど、より無愛想に押し出し、強く否定しようとする気持ちが強く作用していたが、ある瞬間から、後でちょろちょろしながら追って来る姿を見て'そら、病気になった鶏みたいにいつも離れてよろよろ付いて来ないでしっかりくっ付いて付いて来い'というふうに、目に見えないと心配な気持ちになってしまう、そんな女になってしまったのだ。
ドウ以外知らなかったウンスは、シンと会って、その小さく弱い体の中では、愛までではなくても、ともすれば愛に成長したかもしれない感情を少しずつ育てていたのかもしれない。
ウンス本人はまだ気付いていないその感情を、 ドウがまず読み出してしまった事が、ウンスのレクイエム、即ち死の前奏曲の始まり だったのだ。
シンを愛しているのかという質問に'いい人'と答えた が、ドウはその言葉から数多くの感情を読み出したのだろう。
強いてウンスが兄の傍に戻って行くと約束までした場面で、シンを殺そうと決定を下した瞬間が、まさにその瞬間だったのを見れば。

"肝に銘じろ。
今度こそ、私の望む時間に、私が望む場所でやるんだ。"



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