いなかの猫の天邪鬼部屋

第19話

第19話 崩壊

変化の亀裂。
その中で成長するギョンテ、変化するギョンア、渇望するドウ


01.さようなら、ケイ

パッと開けた場所でシンが無防備な状態で立っていたにもかかわらず、弾丸がかすりもせずに逸れたのを見るに、 夜盲症気質 の疑いもあり、やはり ケイはニンジンを偏食して育った事が明らか だ。
ちょうどその時、シンの危険を感知したウンスがシンとケイの闘いを目撃し、体を投げ出す涙ぐましい犠牲パフォーマンスを見せ、炸裂するシンの 弾丸を受ける と、13話からドウの足を引っ張ってばかりいたケイは、ともすれば最後の命令かもしれない遂行すら、主人が最も大事な、それも自身の分身のような妹ウンスを危険に落とす大災難をもたらし、当感を隠せない。
盲目的な忠誠心を持ったケイがそんな失敗を受け入れるはずがなく、ドウの腹心であり忠臣だった彼は、これ以上 自分の王 に仕えても仕えられない利用価値のない落伍者になってしまった 絶望感に生きる意欲を全て失ったよう だ。
ケイを追って、なぜ父を殺したのかというジェミョンの質問に'ただ'と言ったケイの答えは、 1gの重みも感じられないほど軽かった。
ジェミョンにとっては14歳以後ただの一度も会えなかった、弾丸が降り注ぐチャイナタウンでも韓国語を忘れないために絶え間なく独学しながら描き描いて来た父の重さは、ケイにとってはただドウの一言で生死が行き来するほど軽かったという事だ。
ドウの命令を遂行出来ないまま、このまま捕まって調査を受け、再びドウを窮地に追い込むのは明らかだと、生の意欲すら喪失したケイは、 落花岩に身を投げた三千官女の心 でジェミョンを刺激し、銃殺を誘い出す自殺方法を選ぶが、惜しくも 表面上は放蕩していてLAスタイルのジェミョンは、実際はナムルを売るお婆さんもただ見逃せないほど情が深く、人情が大きい奴 で、ケイの思い通りには動いてくれなかった。
同じ空の下、親を殺した宿敵と生きる事は出来ないと、だがいくら自分の宿敵でも同様に人の生命であり、それを奪う事だから、ジェミョンは最後まで引き金を引けなかった。
ジェミョンの手によって銃が地面に落とされると、残念に思うまま(?)ケイは自分のこめかみの上に直接銃口を載せ、引き金を引いた。 全部使い切ったと思っていた銃弾 が、まだ残っていたのだ。
銃弾が残っていたにもかかわらず、ケイはなぜあえてジェミョンに自分を殺す事が出来る機会を与えたのだろうか?死ぬ前にジェミョンが恨みを晴らす人情でも施したという事だろうか?いや、 自分一人で死ねない~というふうにジェミョンの帳簿に特別な何かを付けようとした?
それはケイだけが知る秘密。

02.ドウの血がウンスに与えた影響

弾丸を受けたウンスの事を伝え聞いたドウは、 まるで自分が銃に撃たれたかのように 呼吸困難状態でむかむかと、体もまともに支えられないほどの パニック状態 になる。
統制力を失い、病院を訪ねて行き、激しく、ウンスはどこだ、と騒ぐドウの目は赤くほてり、今にも裂けてしまいそうな狂気すらこもっていた。

"RH-O型、私と同じです。私がウンスの兄です。私たちは血が同じです。"
"ダメだ!そいつの血を入れたらダメだ!そいつの血を入れたらウンスは死ぬ!!!"


我が国で 1万名に1人のRH-O型 のウンスは、おかげで血が不足した状態になり、ドウの血を輸血する事になる。
ドウの血だけはダメだと言うシン。 いくら一つの血の下に生まれた兄妹間でも、シンは汚れなく澄んだウンスの血の中にドウの汚れた血を輸血するのを、そのまま見ていられなかった。
医学的に説明されないシンの主張が痛ましく病院に響き渡るが、結局ドウの血はウンスの体の中に混じり入って行く。
後日のウンスの死に、シンの言葉通りドウの輸血による因果が1%でもなかっただろうか?
勿論、ウンスの体が既に死線の境界で無理な強行軍に耐えられなかったためでもあったが、ソン作家の民主主義と資本主義の象徴化、チェ兄妹を例に挙げて考えると、 この日の輸血がウンスの死に与えた影響がある程度 あったのではないか?

02.ドウのトラウマ、ベールを脱ぐ?

24時間ウンスの傍にくっ付いて介護しても足りない時に、警察からウンス殺害未遂参考人として調査を受ける事になったドウは、もどかしさを我慢出来ず、逃走を強行する。
既に精神の糸を アンドロメダ に秘かに置いて来たドウは、目に見える法則なく、 手当たり次第に手に捕えた者を殴り始める。
ドウはチェ会長を訪ねて行き、ウンスと静かに離れて生きる考えだったのにと、自分を窮地に追い込んだ父に恨みを浴びせる。

(ドウの主張によれば)幼い頃のドウは、病気の母を守れないほど幼く無能力だったその時、チェ会長がそんなドウに薬の存在について教えてやった。凶悪なチェ会長の計画通り、ドウは病気の母のためにしてやれる最善、薬物を投与する以外なかった。
8話でドウはゴールデンクロスのギョンアにこんな話をした事がある。' やはり母を私が殺したようだ 'と。
その言葉は '母を殺す意図がなかったのに殺す事になった' と解釈可能だ。
意図せずそんな時期を過ごしたドウは、父によって大切な人を失った被害意識を持った状態で育ち、そして危険分子である父から大切なウンスを離しておこうと、そのように常に努力していたようだ。
夢がなかったドウがモナコの本を手に取った瞬間、母を守れなかったがウンスを守り抜く希望を見付け、その夢はあまりに大きく遠大であるため、ドウは誰よりも急ぎ足で 事業の成功街道 を駆けて来た。
チェ会長からウンスを隔離させる事が出来る程に力も育てたが、チェ会長は氷山の一角でしかなく、ドウはチェ会長より大きく物々しい闇の団体(M.O.K)に会い、そうするうちに、ドウは誰も自分とウンスに触れられない程に より大きな力を望んだ。
そしてミョンド市を誰の干渉も受けなくても生きられる自体都市として設計したと考えると、何かしっくりするような気がする。
事実、今回の悲劇と同様、ドウがスコップ作業をしてウンスが弾丸を受けた格好だが、 一次的な原因を提供した人はチェ会長 だ。
ウンスを材料にシンと取引をしようとして、ひどい拒絶だけを受けたチェ会長は、何としてでもドウとシンを闘わせ、どちら側も再起不能状態まで壊れる事を望み、そんなドウを悲劇に落としたが、ウンスの事ほどでない事を誰よりもよく知っていた彼だったので、シンとウンスが結婚するという明らかな嘘で ドウの誤ったシャベルを導き出した。
そうやって、母に続きウンスまで守り抜けず、最も大切な二人の人間を自分の手で危険に放り込んだドウの立場もとても気の毒に思う。
その間、ずっとウンスのために耐えて来た怒りを、今すぐにでもチェ会長に爆発させようした途端、家の中の隅々に宿るウンスとの思い出にとらわれ、どうしても血を上らせられず立ち去ったドウの後ろ姿が小さく見えたのが気の毒で哀れに感じたのは、 ドウの被害妄想に私自身も説得されたのだろうか。


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: