石坂千穂つれづれ日記

石坂千穂つれづれ日記

2008.11月県議会一般質問



1 行政嘱託員の処遇改善について
2 手話通訳業務嘱託員の処遇改善について
3 県立病院の分娩料引き上げについて


1、行政嘱託員の処遇改善について

(石坂)最初に、行政事務嘱託員の処遇改善についてお伺いいたします。
 今年の3月、県は、改正雇用対策法が採用にあたっての年齢制限を禁じていることを理由に、行政事務嘱託員の設置要綱を見直し、改正しました。その結果、例えば、今まで任用期限1年で「再任を妨げない」とされていた手話通訳業務嘱託員は、任用期限5年とされ、要綱がそのまま適用されれば、ほとんど全員が事実上の解雇になると言う事態となりました。その後の県聴覚障害者協会の皆さんの申し入れもあり、任用期限を10年に延長するという方向が示されましたが、それでも3名が期限を越えて任用されているとして、県は、上小、上伊那、松本の各地方事務所に配置されている手話通訳業務嘱託員を10月末の期限で募集しました。「再任を妨げない」とは言っても、任用期限が1年とされているため、何年勤務しても給料は1円も上がらず、いわゆるワーキング・プアすれすれの収入の不安定な身分でありながら、頚肩腕(けいけんわん)症候群予備軍の状態で聴覚障害者の皆さんのためにがんばり続けてきてくれた皆さんに対して、あまりにもひどい仕打ちと言わざるを得ません。
 もともと、雇用対策法の改正の趣旨は、母子家庭の母親をはじめとする女性、青年、高齢者、障害者にも今まで以上に雇用の門戸を開き、雇用の促進と職業の安定をはかることではないでしょうか。こともあろうに、そのための法改正を逆用して、聴覚障害者の社会参加や行政サービスに欠かせない役割を果たしている手話通訳業務嘱託員の皆さんの解雇のために使うと言うのは、到底納得できません。しかも、改正設置要綱の対応が職種によって格差があるのはなぜでしょうか。新たに設けられた任用期限をさかのぼって適用する職種と、これからの期間だけを適用する職種があるのはなぜでしょうか。総務部長にお伺いします。

<浦野総務部長>
 行政嘱託員の要綱改正についてのお尋ねでございますが、行政嘱託員が担います業務は大変多様なものがございます。それぞれの業務の複雑性や困難性、あるいは求められる専門知識や経験が業務ごとに異なるために、従来から各所管部局に設置要綱を制定し運用をしてまいりました。今回の平成19年の雇用対策法の改正は労働者の募集・採用に関して、年齢制限を禁止することを義務化しました。年齢に関わりなく広く応募の機会が与えられるようにするなどの趣旨でございます。こうした雇用対策法の改正を踏まえました、今回の要綱改正につきましては、任用にあたっての年齢制限を撤廃するとともに、更新期限の定めのない業務について、任用の機会均等を図るために、業務内容に応じて、更新期限を定めたところでございます。

(石坂)また、あまりにも理不尽な事例として手話通訳業務嘱託員の事例についてお伺いしましたが、他の職種でも、消費生活相談員をはじめとして、専門的な能力に経験が加わってこそ県民サービス向上によりつながる職種があります。今回の手話通訳業務嘱託員の皆さんの任用期限撤廃や処遇の改善を求めて、聴覚障害者協会の皆さんが何度も県に申し入れをしているのも、聴覚障害者の皆さんにとっては、手話通訳の専門的な能力、時代とともに目まぐるしく変わる関係法令や制度の知識とともに、長年の経験に裏打ちされた信頼関係が欠かせないからです。
 専門的能力に経験が加わってこそ県民サービス向上につながる職種は、雇用期間の撤廃や延長など柔軟に対応するべきではないかと考えますが、総務部長の見解をお伺いします。

<浦野総務部長>
 行政嘱託員の更新期限の事でございますけれども、非常勤でございます行政嘱託員につきましては、雇用対策法改正に伴う、年齢制限の撤廃に加えまして、任用における公平性や機会均等といってもいいと思いますが、県民の理解の観点からも、一定の更新期限は必要というふうに考えております。
 今後も行政嘱託員の任用にあたりましては、それぞれの先ほど申し上げました、各業務の複雑性や困難性等を踏まえました更新期限を設定するほかに、それぞれの実情を踏まえました運用に努めてまいりたいと考えております。


(石坂)またこの問題に関わり、人事委員会委員長にお伺いいたします。
 行政事務嘱託員等の非正規雇用の県職員の処遇について人事委員会としてどのような検討がされているのでしょうか。また、今回の行政事務嘱託員の設置要綱改正については、ご存知だったのでしょうか。ご存知であったとすれば、委員長の見解もお伺いします。


<市村人事委員会委員長>
 雇用対策法の改正、もちろん人事委員会でも話題とはなっておりますけれども、なにぶんにも行政嘱託員については特別職でございますので、われわれ人事委員会としては、管轄外ということで特に具体的なことは行ってはおりません。
 それから、あわせて非常勤職員についてもお答えした方がよろしいでしょうか。これについてはですね、本年8月26日付で、人事院が国の霞が関・省庁にたいして、非常勤職員の取り扱いについて、ちょっと各省庁でばらばらであると、いうようなことで通知を出しておりまして、これについては大いに我々長野県人事委員会としても、検討いたしまして、これについて申し上げると、やはり国と地方で違いがあるなと。その一番大きな違いというのは、国は労働基準法の適用を受けないというせいか何年か長期にわたる非常勤職員がたくさんおられるようであると。それに対して、本県は労働基準法、特に改正前は一年以内の雇用という事でございましたので、現在に至るまで一年を超える非常勤職員はいないということがはっきりしております。
 しかし、そうは言うものの、こうした社会情勢とを勘案すると常に人事委員会としては、関心を持っていかなければいけない問題というふうな認識はしております。以上でございます。


(石坂)すみません、質問の仕方が悪かったのかもしれませんけれども、総務部長ね、要綱改正を新たに適用されている中で、たとえば、手話通訳士のみなさんにはこれまでの任用期限もカウントして、新しい対象にしていると。だから、「10年超えているから雇い止めですよ」と。中国帰国者の生活指導員のみなさんにたいしては、名前少し変わりましたけれどね、要綱を改正したこれからのみを対象にするという扱いの格差があるんですけど、それは何故でしょうかとお聞きしたんですけど、お答をお願いしたいと思います。

<浦野総務部長>
 先ほどもちょっと触れたんですが、行政嘱託員のそれぞれの制度の運用にあたりましては、業務の実情に合わせた運用をしてまいると、いうように申し上げましたけれども、いまお尋ねあったこともやはり専門知識ですとか、経験など言ってみれば皆様方それぞれの行政嘱託員に求められる業務内容と、それから私もちょっと触れたんですが、任用の機会均等を図ると、いうそういったものとの調和の上でですね、運用をされてきたとそんなふうに思っております。


(石坂)また人事委員会委員長からお答をいただきまして、ありがとうございました。国と地方は違うというお話もありましたけれども、人事院は、2007年の勧告ではじめて非常勤職員、自治体のですね、公務員のですね、給与に関する問題意識と検討の方向性に言及されて、2008年の8月には「非常勤職員に対する給与指針」も示されました。全国的に地方でも、今年は、宮城、京都、兵庫、鳥取の各県の人事委員会、それから名古屋、京都、堺、熊本の各政令市の人事委員会が自治体の非正規職員の賃金、労働条件について勧告で触れるようになっております。派遣労働者や期間工の雇い止め、ワーキングプアが大きな社会問題となり、人間らしい働き方のルールが問われている時でもありますので、民間企業を指導する立場にある県が、あたりまえのように行政事務嘱託員をはじめとする非正規の職員を無権利に使い捨て、官製ワーキングプアを拡大するようなことは、私はあってはならないことだと考えます。
 人事委員会に置かれましても、今後なおいっそう、非正規職員は特別職というお話でしたけれど、行政事務嘱託員も含めた非正規職員の処遇についての検討を積極的にお願いしたいと思いますがいかがでしょうか。

<市村人事委員会委員長>
 議員がおっしゃる通り、47都道府県、それから政令市、および特別な市、全国で人事委員会は67の委員会がございまして、そのうち先ほどご指摘の通り、都道府県では4県、京都も入れて4県でございますけれども、それから三つの市というような、今年の人事院の勧告に8月26日のを踏まえまして、言及しております。
 ただ、いずれもですね、当県では課題は見受けられなかったとか、引き続きこの問題は検討してくとか、あるいは他の県の動向に注意を払うとか、そうした言及でございますので、実質的意味はございませんということであります。
このことは、我々も考えましたけれども、内容のない言及はいいだろうと、ただしおっしゃる通り、時代的に大変デリケートな問題でございますし、それからその長野県の場合には、長期にわたる非常勤職員はいないとはいえ、今後出ないという事でもございませんので、常にこれは検討していきたいと思います。場合によりましたならば、我々管轄外ではありますけれども、行政嘱託員についても、要請があればいつでも人事課とすり合わせをする、あるいは意見の交換会はするという用意はございます。以上でございます。


(石坂)もともと労働基準法の定めでは、たとえ1年の有期雇用であっても、複数回の更新を繰り返せば、事実上期限のない雇用とみなすとされています。ご存知と思いますけれども。10年前後も安いお給料で頑張ってきた人たちを要綱改正で一方的に放り出すのは、人の道にも反していますが、労基法にも触れかねないと思います。改正された要綱でも、よく見てみますと、「特に必要と認めるときは期限を延長することができる」とされているわけですから、ぜひ、柔軟な対応をお願いしたいと思いますが、再度総務部長の見解をお伺いします。
 また、人事委員会委員長、ありがとうございます。ご報告のあった通りなんですけども、政令市レベルでは、かなり同じ公務の職場の格差は是正していかなければならないと、そういう言及もありますので、今後いっそうのご検討をよろしくお願いします。
 総務部長、よろしくお願いします。

<浦野総務部長>
 行政嘱託員の任用にあたりましては、先ほど申し上げたように、一定の更新期限の定めが必要でありますけれども、地理的な事情やあるいは業務の特殊性といった事柄から、適任者が得られないといったようなこともあろうかと思います。そのよう場合には、更新期限を越えた方の能力や意思を見極めたうえで、一年ごとに任用期限を延長する等の対応を行っていくと、そういうような必要があると、こんなふうに考えております。


2 手話通訳業務嘱託員の処遇改善について


(石坂)具体的に、手話通訳業務嘱託員の処遇改善についてお伺いしたいと思います。
 設置要綱によれば、手話通訳業務嘱託員の職務は、「行政事務一般に係る手話通訳、所属長が特に必要と認める業務の手話通訳」とされており、今回の上小、上伊那、松本地方事務所の手話通訳業務嘱託員の募集にあたっても、主な職務内容は「来庁者への手話通訳、講演会・説明会等での手話通訳等」となっています。
 県の人事当局は、手話通訳業務嘱託員の日常的な仕事を「手話通訳しかしていない人」と言う認識で、長野県内の市町村段階での手話通訳士の配置がまだ10市程度にとどまっている現状にあり、手話通訳士が配置されていない市町村へのサポートやそれらの市町村への手話通訳士の配置の調整などで、嘱託員の皆さんが重要な役割を果たしていることなどを正しく評価されていないのではないでしょうか。また、災害時の情報伝達、ワンストップで障害者の願いを受け止める障害者総合支援センターのなかで果たす役割も聴覚障害者の皆さんからは期待されているところです。
 日本共産党県議団として、今年、手話通訳士を正規職員として複数配置している京都、石川県金沢市、白山市などの調査をしてきましたが、先進地の自治体ではもう当たり前のこととして位置づけられているように、手話通訳士の業務内容を行事や会議などの際の手話通訳という狭い位置づけだけに限定するのではなく、聴覚障害者の生活全体の支援、聴覚障害者施策の企画立案などへの参画等とするべきではないでしょうか。現に、県が地方事務所に配置している手話通訳士の皆さんは、個人の努力で難関の国家資格を取得し、経験をつんだ、立派にその能力のある皆さんであり、聴覚障害者に対する行政サービスの充実のために欠かせない人材として、もっと位置づけを高めて活躍の場を提供するべきではないでしょうか。社会部長の見解をお伺いします。

<和田社会部長>
 はじめに、手話通訳嘱託員の業務の事でございますけれども、いまお話がございましたように、県の行事等における手話通訳の他、現在、聴覚障害者が来庁した際の案内や各種相談、それから手話の普及に関わる講習会などの立案、手話通訳者派遣に係る町村や団体との調整業務、これらなどを行っております。
 今年度実施した調査では、業務時間のうち、行事や案内、相談などに対する手話通訳業務が約35%で、残りの65%がその他の手話に関連した業務にあたられております。手話通訳に相当の知識あるいは経験が必要でございますが、聴覚障害者の施策全般に渡る企画立案、そういったものを広く行うこととなりますと、業務にはそれなりの複雑・困難さが伴いますし、違った面での知識や経験が必要となりますことから、ご提案の向きは直ちには難しく、一般職員が担うべきものと考えております。


(石坂)また、市町村で単独では手話通訳士の配置が困難な自治体もあることから、県としても市町村への手話通訳士の配置の充実を積極的に支援し、市町村との共同配置も含めて手話通訳士を正規職員とする方向も検討するべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

<和田社会部長>
 次に、市町村への支援と正職員化ということでございますが、現在県下の10市で手話通訳者が設置されておりまして、さらに需要の多い市町村を中心に、配置を進める動きがあると、このように聞いております。これは障害者自立支援法の施行によりまして、聴覚障害者への手話通訳派遣などの福祉サービスの実施が身近な市町村が主体となって行うという、こういったされたことによりものでございまして、このように県と市町村の役割が大きく変わってきている状況もございますので、6月議会で総務部長からお答がございますように、県では現行の嘱託員制度により、引き続き対応してまいりたいと、このように考えております。
 また市町村の手話通訳者の配置に関しましては、その費用の一部を県が助成してまいります他、未配置の市町村に対しましては、公費的な対応も含め、必要な助言を行ってまいりたいと、このように考えております。


(石坂)問題提起をさせていただきましたので、ぜひ人材を活かす方向での処遇の改善、よろしくお願いしたいと思います。


3、県立病院の分娩料引き上げについて


(石坂)次に、県立病院の分娩料の引き上げについてお伺いします。
 今年4月から分娩を休止していた県立須坂病院で、産科医2名を確保することができ、来年3月から分娩が再開されることになったことは、本当にうれしいことであり、知事、衛生部をはじめとする関係当局のご苦労に、心から敬意を表するものです。
 今回、産科医療をになう医師をはじめとする医療スタッフの確保や処遇改善に取り組むために、分娩に関わる医療スタッフへの特殊勤務手当の支給や当直応援医師の報酬、助産師研修の予算の増額などは、わたしたち日本共産党県議団としても、かねてからリスクの高い産科医療の診療報酬の引き上げなどを提案してきている立場からも歓迎するものです。
 しかし、出産に関わるスタッフへの手当、助産師の研修、アメニティーの向上などの必要経費を基本的にすべて出産する本人、妊産婦負担でまかなうと言う考え方には、到底賛同できません。産科医師の確保や安心してお産ができる環境整備は、基本的に県の責任であり、報道によれば、須坂市をはじめとする近隣の市町村でも、そのための支援金3000万円ほどを予算化するという検討もされているとお聞きします。それらの充分な検討も待たず、かかる費用は全額患者負担と言うのでは、あまりにもひどく、県の責任放棄とも言えるのではないでしょうか。勝山病院事業局長の見解をお聞きします。


<勝山病院事業局長>
 お答えいたします。必要な経費をすべて患者負担でまかなうことが安心してお産が出来る環境づくりの整備に対する責任放棄ではないかというご質問でありますが、保険医療機関で診療を行った場合の診療報酬は、社会保険診療報酬制度で規定されており、これに基づき保険者と受診者がそれぞれの負担割合で支払うことになっております。しかし、正常分娩については、この制度に乗っておらず自由診療として扱われております。したがって、医療機関として出産にかかる費用を積算し、これを利用者から負担していただくことになります。公立病院の分娩料に関しましては、小池議員に答弁いたしましたとおり、それが据え置かれていることから、周辺の診療所に悪影響を与えてきた点も認めざるをえません。
 すでにご承知のことと思いますけれども、平成18年10月27日に、日本産科婦人科学会から、産婦人科医の不足について、緊急提言が行われております。その中で、この件について、重要な指摘がありますので、少々長くなりますが、その一部を引用させていただきたいと思います。すなわち「公立病院の分娩料が病院経営の観点から設定されている施設は多くない。その変更には議会の承認を必要とする地域が多い。県立病院はすべて一律という県も多い。診療所(これは病院以外の一般の診療所を指していますが)が分娩料を適正化しても公立病院の分娩料が据え置かれれば妊産婦は相対的に公立病院にシフトする。公立病院が分娩数の制限を行えばよいのだが、住民サービスと病院経営を重視する病院・行政側はそれをなかなか許容しない。その結果は、公立病院の勤務医の勤務条件の悪化と診療所の経営状態の悪化である。診療所の分娩料の適正化は必要だが、公立病院の分娩料の適正化が先行して行われないと、期待した効果は得られないことになる」とこのように学会から主張されております。こうした点を重く受け止めまして、分娩料を適正化し、分娩を扱う診療科とのバランスをとることが必要となっております。
 また県立病院で扱う出産件数は、須坂病院はお産を扱っていた平成18年度を基準にいたしますと、須坂病院、木曽病院、こども病院の想定している件数の合計が750件程度という事で、県内出産件数を18,000件といたしますと、4%強のシェアとなっています。県立病院のない地域とのバランスを考えても、この三つの病院で出産される方の分娩料を是正していく必要があると考えます。分娩を取り扱う医療機関として、利用者の方々に適正に負担していただき、医療機能を維持・充実しようとするものということでご理解を賜りたいと思います。


(石坂)また、今回の引き上げ額は、正常産の分娩料で11万5000円から一挙に18万円と6万5000円もの値上げ、全体として5割から8割を超える急激な引き上げで、しかも、この議会に提案して3月からの実施と言うのも、あまりにも乱暴な話ではないでしょうか。激変緩和で段階的な引き上げの方法をとるとか、実施時期をせめて来年4月からにすると言う措置は取れないのでしょうか。有無を言わさぬやり方にも納得できません。もう、検討の余地は無いのか、病院事業局長、いかがでしょうか。

<勝山病院事業局長>
 次に、分娩料の段階的引き上げおよび実施時期の延期についてお答えいたします。全国的に産科医師が不足しており、安心してお産が出来る環境の整備が求められております。こうした中、先ほど議員のお話の中にもありましたけれども、須坂病院に新たに2名の医師に着任していただきました。さらには、他の県立病院において、産科医療を担っている医師にも引き続き勤務していただくためにも、環境を整備することが何よりも必要だと考えております。このため、必要な経費を積算したうえで、改定の金額や見込んでおりますので、ぜひご理解いただきたいと存じます。


(石坂)知事にお伺いします。長野県中期総合計画では、7つの挑戦プロジェクトのひとつに「出産、子育てにやさしい県への挑戦」が掲げられており、主要施策の中には「安心して子供を産み育てられる環境づくり」が盛り込まれ、「子育て家庭への経済的支援」も明記されています。
 ただでさえ、経済的な負担が若い世代に重く、結婚や出産を思いとどまらざるを得ない傾向があると言われているにもかかわらず、これでは、「出産、子育てにやさしい県への挑戦」も、「安心して子供を生み育てられる環境づくり」にも、ほど遠いと言う気がしてなりません。出産にかかる経費は、分娩料や入院費だけでは済みませんし、出産後の子育てには、さらに多くの費用を覚悟しなければならない現実です。「産んでくれて、ありがとう」と言わなければならないのに、「産むためには、必要な環境整備の費用を出しなさい」と言うのでは、本末転倒です。
 中期総合計画で掲げている「出産、子育てにやさしい県への挑戦」や「安心して子供を生み育てられる環境づくり」にふさわしい状況に進むためにも、産科医師の確保や処遇改善のための経費を病院会計の中だけでまかなう、そしてそれを「全額患者負担にする」と言う発想ではなく、少子化対策、子育て支援の政策としての経費負担、支援策を検討するべきではないでしょうか。ぜひ、そうしていただきたいと思いますが、村井知事の見解をお伺いします。

<村井知事>
 県立病院の分娩料の引き上げと、少子化対策に関してご質問を頂戴いたしました。少子化対策を行います上で、地域で安心して産み育てる環境を維持するということが重要であると、いう認識は当然であります。病院事業局長から申し上げましたとおり、地域のお産を守るために、産科医など医療スタッフの労働環境がなかなか改善されない中で、分娩を取り扱う病院を維持することを目的とし、緊急の対応策として、スタッフの処遇改善を図ることから、応分のご負担をお願いするというであります。
 また、分娩を取り扱う県立病院は須坂、木曽、およびこども病院でございまして、県内全お産の4%程度を扱っていることも病院事業局長からお答えしたとおりでございます。県の施策としての少子化対策や子育て支援の政策として、県立病院でのお産のみを対象に、分娩料を据え置くということは、私はバランスを欠くものと考えます。少子化対策、子育て支援策としての、出産や育児にかかる費用の支援につきましては、まず厚生労働省の論議が始まっていると承知しておりますが、出産育児一時金の増額に向けて、県としてもあらゆる機会を要望してまいりたいと考えております。いずれにいたしましても、安定的な医療の提供と、産み育てやすい地域づくりが、両立できるように、さらに全力をあげて取り組んで対応してまいりたいと存じます。


(石坂)病院事業局長からのご説明をいただきまして、改めて「ご理解を」とおっしゃられましたが、「ご理解」できません。
 知事にお聞きしたいと思います。衛生部からいただきました資料によりますと、全国の都道府県立病院の分娩料は、7万9千円から15万円、長野県が18万円になれば全国最高額となります。もっとも出産に優しくない県になりかねません。
 また長野県内の公的病院の分娩料は、信大病院と長野日赤が18万円で最も高く、他の病院は11万500円から15万7500円までとなっております。今回の県立病院の分娩料の値上げが、他の公的病院の分娩料の引き上げをあおる結果になるんではないでしょうか。急激な引き上げは、その意味でも、再検討するべきだと思います。出産育児一時金のお話がありまして、それはその通りなんですけれども、出産育児一時金が増額されたと致しましても、現在はその一時金の範囲で入院費と分娩料がおさまりますけれども、今回18万円になりますと、分娩料と入院費と、すでにその一時金が増額されたとしても、それを超えるんですよね。「お産にかかる費用はそれだけではすみませんよ」と最初の質問でも申し上げました。そういう意味で、はっきりさせておかなければならないことは、分娩料が安いから産科の医師が少なくなったんでしょうか。分娩料が安いために妊婦さんの負担が少ないためにお産が出来ない病院がどんどん増えてきたんでしょうか。そうじゃないですよね。やっぱり国の大本での医師の養成、そしてお産に関わる様々な手立て、診療報酬の改定、環境整備、そういう大本のところでの解決が図られないことが大問題なのに、同じ枠の中で「公的病院の分娩料が安すぎるじゃないか」、そんなことを言っているときじゃないと思うんです。だから、妊産婦や患者の当人負担、受益者負担で乗り切るという方法は大本の解決をむしろ遅らせる、また子育て世代、出産する世帯の経済的負担をむしろ本当に重くしていくという点で、全然子育て、出産にやさしくない県になっていくばかりです。そういうこともぜひ考え合わせていただきまして、せめて急激な引き上げを再検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。


<村井知事>
 この問題は、すべていろいろな、公と言いますか、県と致しましても、市町村にしましても、あるいは国にしましても、その公共と呼ばれるものが提供するさまざまの経済的な価値を持つ財、これをどの程度安くすることが適切なのか、という問題に帰着すると私は思っております。3月から須坂病院で分娩を再開すると、いうことに至ったわけでございますけれども、それを一つのきっかけと致しまして、ある程度のご負担をお願いしようと、致したわけでございまして、それが結果的に全国の県立病院の中で分娩料の水準として、一番高いということはこれはこれでやむを得ないことだと思っております。要は、それによって、分娩が出来ないという状態をともかく回避するということを最重点に対応したわけでありまして、このようにするほかなかったということを是非ご理解を頂きたいと、いうことを申し上げているわけであります。それはすべてなんでもただであるとか安いとか、いうことはできればそれにこしたことはないですけれど、ある程度の負担は私はお願いせざるを得ない。それをどの程度のものにするかということは、一方で先ほど私もちょっとふれましたけれども、給付の問題とのバランスを考えなければならない、ということではないかと考えております。


(石坂)それから、病院事業局長にお伺いしたいと思います。厚生労働省の来年度概算要求で、産科医等の確保と処遇の改善のため、分娩手当を支給する分娩取り扱い機関に対して、財政支援を検討されているそうです。分娩1件につき1万円を補助、まだ金額は少ないなと思いますけど、それでも1万円。補助率は3分の1で都道府県、市町村が負担しない場合でも補助が可能、こういう見当がされているそうです。36億7700万円が概算要求されており、これはほぼ認められるだろうということです。国の結論がでてからの検討ではいけないのでしょうか。どうして3月から急いで引き上げなければならないんでしょうか。また、国がもしこれを予算化して実施した場合、その分今回の大幅な引き上げをまた引き下げるんですか。その点事業局長にお伺いしたいと思います。


<勝山病院事業局長>
 厚労省の方で産科医の処遇その他について、検討がされていることは承知しておりますけれども、なにぶん現段階では、十分な情報は得られませんし、今後どのような方向で進行していくのか皆目我々には把握できませんので、この点については、また国の方の方針が決まってから、検討させていただきたいと思います。ただ、先ほど申し上げたように、現在正常分娩に関しては自由診療ということで、医療機関としては出産に要する費用を積算してこれを利用者から負担していただくというのは原則となっているわけでありますから、実際積算をしてみると、今回いただくよりずっと多い額ということになりまして、それで医療機関としてはかなり苦しい状況であるということについてはご理解いただいてよろしいかと思っております。


(石坂)知事のご答弁の中で、「なんでもただならいい」と、ちょっとお言葉が過ぎているんじゃないかなぁと。私は悲しく思いました。「子どもを産むならお金を出しなさい」みたいな、そういう乱暴な長野県ではなくて、子育て世代の負担を少しでも軽くするやさしい長野県であって欲しいとお願いしているわけですので、ぜひ再検討をお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。



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