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株式で信用取引をしたり、通貨先物取引をする際、証券会社や先物業者に証拠金を置く事が求められます。株式や通貨の動きが予想に反して含み損が出れば、証拠金が不足し、証拠金の積み増しを求められます。これがいわゆる追加証拠金、追証、アメリカではマージンコールと呼ばれるものです。 現在、金融市場では現物取引でない限り、殆どの場合このように証拠金を置いたり置かれたりというシステムが構築されています。相手方の損失が膨らんできた場合でも、証拠金をきっちり預かっておけばいざという場合に当方が損失を被るリスクが回避されます。逆に、当方の損失が膨らんできても、証拠金を積み増しておけば、いきなり払えないような大金を請求されて破綻するような状況が回避できます。現代の金融市場は、証拠金によって、いきなり金融システムが麻痺してしまうようなリスクを回避しているのです。 例えば 第198回 爆弾抱えるCDO市場 (2007年6月22日) で証券会社ベアスターンズ傘下のファンドが事実上破綻しました。このファンドは自己資本に対して何倍ものレバレッジを使っており、保有していたCDOの価値が低下した事によって証券会社メリルリンチにマージンコール(追証)をかけられた事がきっかけとなりました。しかしもし、メリルリンチがマージンコールをかけなかったらどうなっていたでしょうか。その後もCDOの価値は暴落し続けましたので、これらファンドどころか、メリルリンチも共倒れ、そしてメリルリンチと取引のある金融機関も、と金融システム全般に影響が広がっていたかもしれません。マージンコールは痛みを伴うものですが、システム全体に大きな悪影響が広がるのを防ぐ役割をしているのです。 しかし現代の金融市場の中で、数少ない、マージンコールを求められない主体がいます。これが債券保証会社、モノラインです。例えば大手金融機関がモノラインの保証が付いた債券を購入して、その債券から予想される債務不履行率が上昇したり、モノライン自体の財務体質が悪化したとします。するとモノラインがその債券の保証をしなければならない確率やその保証に意味がなくなる確率が上昇します。その債券を保有している金融機関としては、債券の保証が危うくなるので、それを補填する証拠金を求めたいはずです。しかしモノラインには証拠金は求められないのです。理由はモノラインはNY州保険局の監督下にある「保険会社」であるからです。例えば貴方が加入する生命保険会社の財務体質が危うくなり、保険金が支払われない確率が上昇しても、貴方は何もできないのと同じです。 証拠金が求められるのであれば、債券の保証が危うくなっても、それまでに積み立てられた証拠金を使って問題を最小限に抑える事ができます。しかし現在のように、いくら債券の保証が危うくなっても、債券の保有者は証拠金を求める事ができないのです。その結果、問題が積もり積もって、最後にはモノラインが支払えないような損失となり、システム全体を揺るがす事態になりかねない仕組となっているのです。簡単に言えば、「いきなりドカン」と来るリスクを内包しているのです。 私から見れば、モノラインは保険料は受け取るが、証拠金の支払い義務はない、後は保険金の支払義務が生じるようなショックが起こらない事を祈るのみ、ショックが起こったらどうせ支払えないので開き直るしかない、そのようなビジネスに見えます。金融が最も発達していると言われるアメリカの金融市場の中、唯一システムが前近代的、脆弱な部分で、遂にその問題が顕在化した、これが今回のモノライン危機なのです。
2008.01.29
1月18日の午後3時前、3連休を控えたNY株式市場で重大なニュースが流れました。格付け会社フィッチが債券保証(モノライン)会社大手、アムバック(ABK)のトリプルA格付けを取り下げ、ダブルAに引き下げたのです。一見、日本の方の目には止まりにくいニュースかもしれません。しかし実は、これはこの先日本の株式市場にも大きな影響を与えかねない重大なニュースです。今回はその事についてご説明させていただきます。 モノラインは世界中で日本円換算約250兆円の債券を保証しています。大手のMBIA(MBI)とアムバックの大手2社が市場シェアの殆どを占めています。保証する債券の格付けがトリプルAであるためには当然、モノライン自体の格付けもトリプルAでなければなりません。何故なら、モノライン自体の財務体質が強固で、もしもの時の支払能力がなければ、その債券に対する保証は意味がないものとなるからです。ですので、債券保証というビジネスは、モノライン会社の格付けがトリプルAである事が前提の上に成り立っています。 第207回 AAA債券、実はジャンク債? (2007年11月13日) で解説させていただいた通り、世界中にはトリプルA債券に投資できる投資家はいくらでもいます。しかし格付けが1つ下のダブルAになった途端に投資できる投資家の数は急減します。債券に投資する投資家の殆どは、無駄なリスクを負いたくないからです。実はここにモノラインの大きなビジネスチャンスがあった訳です。「ダブルAの債券をモノラインが保証を付ける事によってトリプルAにする」。これがモノラインのビジネスの根幹であった訳です。 しかしモノライン自体の格付けがダブルAになってしまった今、ダブルAの債券をトリプルAにするような事はできません。即ちモノラインにとって、自社の格付けがトリプルA格を失う事は市場からの退場を意味します。今後債券保証に伴う「保険金」の支払義務は長期間にわたって残る一方、それを補う「保険料収入」が激減してしまうからです。当コラムで解説させていただいてきた通り、これは我々が去年春から描いてきた通りのシナリオです。実際、アムバックの株価も我々が空売りを実行した水準から既に10分の1以下に下落しています。 問題は今後モノライン格下げに伴う「副作用」が出てくる可能性が高い事です。モノラインが保証していたのは、私がかねてから問題視してきたCDOだけではありません。世界中のあらゆる種類の債券です。モノラインが保証してきたトリプルA債券は今後、自動的に格下げされます。市場ではかなりこの事実を織り込んできていたとはいえ、流動性の低い債券については、まだそれが金融機関の保有時価に反映されていないと思います。格下げがなされれば、金融機関は否応なしにそれを時価に反映させざるを得なくなります。 私は日本の金融機関がこれまで、保有債券がトリプルAである事をさかんに強調してきた事が気になっています。格付け会社フィッチに続き現在、 S&Pやムーディーズもアムバックに対する格下げを検討しています。さらにもう1つの大手モノライン、MBIAも格下げの方向で検討されています。モノラインの格下げによって、日本の金融機関が保有するトリプルA債券の評価が下がり、自己資本の減少を補うために保有株の売却に走るような事態になれば。。。3月決算に向けての道のりは多難と言わざるを得ません。
2008.01.18
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