2005/10岩手視察報告



伊藤 眞智子

1、期間   平成17年10月18日(火)~20日(木)
2、研修場所・研修内容
 ◎岩手県紫波郡紫波町 
・紫波町「循環型まちづくり」について

◎岩手県 遠野市
・地域福祉計画、老人保健介護保険の取り組みについて

3、研修報告
【紫波町の「循環型まちづくり」について】
平成13年に策定した「環境・循環基本計画」に基づいて「現在の環境を 保全し、創造し、100年後の子どもたちに確実に引き継ぐことを目標と する」という、大きなスパンでロマンのある目標を設定しまちづくりに取 り組んでいます。

1、町内の未利用資源を有効活用する資源循環型のまちづくり
 農業、森林資源、家庭や事業所から出る生ゴミなど、町内から出される有 機資源を循環活用 するとり組みの例

○堆肥製造施設「えこ3センター」
 ・生ゴミ、畜糞を合わせた処理による堆肥製造施設
  家庭系生ゴミ、町内の牛、鶏、豚畜産農家からの糞尿を合わせて、品質  の良い肥料ができる。それを「紫波フルーツパーク」(農業振興を目的  として平成11年に整備。果物の   加工品の体験工房、もぎ  取  りなどの体験農園がある)で利用し、堆肥の実証圃場としている。
 ・間伐材等炭化施設
  町内の森林整備ででた間伐材、建設端材などを炭化する施設。堆肥に混  入したり土壌改良材として利用。好評である
 ・ペレット製造施設
  間伐材等の利用と地球温暖化対策の一環として、木質ペレットを製造   し、町内の小学校、保育園などの施設で利用しています。


○町内産の森林資源を有効利用することで森林を保全し林業の再生を目指し ています。
 ・公共施設での町内産木材の利用、また、建設に当たっては製材から建設 まで町内業者が携わり町内業者の仕事の確保、また経済の町内循環もはか っています。
 ・NPO法人紫波未来研究所
 その他、古舘子どもの家、消防屯所などの公共施設、一般住宅への普及を はかるため、町内産木材 を活用した住宅建設に「住宅建築資金利子の補 給、固定資産税の減免制度」を実施しています。

 *朝、宿泊したラフランス温泉館の裏山を散歩し ました。裏山はきれい に整備され、川につくられ た砂防ダムには木材と石が使われ、U字溝の ふたは木材、池の土留めも木材でした。徹底した資源利用をしていると感 心しました。

2、今ある環境を保全修復する環境創造のまちづくり 
 ゴミゼロを目指す廃棄物対策として、3Rを仕組み作りとして分別のとり 組みを重視しています。
 また、安心安全に暮らせる環境創造のため、環境の負荷削減、様々な動植 物との共生のとり組みとして、総合学習で中学校での実のなる木の植林  等、動物の生息マップ作り、資源物回収、省エネルギーの奨励等を行って います。

3,世代、地域の交流を深める環境学習のまちづくり
 循環型のまちづくりを推進するためには、町民が町の文化、自然を知り、 環境に対する意識を高め行動していくことが不可欠です。NPO法人紫波 未来研究所が設立され、町当局との協働で「環境探検隊」事業、環境をテ ーマとしたセミナーなどを行っています。

4感想
・まちづくりの中心に「循環型社会の構築」をおいて、行政と町民が協働し て本気になって取 り組んでいることが職員やNPOの職員の熱意にあふ れた説明から感じられました。
・「循環型まちづくり」を全国に発信し、視察も多く、町の宿泊施設の活用 を進めるなど、町の 活性化につなげていました。
・これからの大きな課題である「環境保全」 「資源循環型」の本来あるべき 姿を推進しており、 環境だけではなく農業林業などの産業の振興にもつ なげている先進的なとり組みであると思 いました。 
・これらの先進的なとり組みをするには、財政的にも大きな負担となりま  す。1自治体が単独 で実施するには大変なことで、信念を持った未来を 見据えた先進的なとり組みを国の政治が 支援し広げていく姿勢がどうし ても必要であると思います。困難もあるでしょうが、紫波町には是非がん ばって欲しいと思いました。
・ゴミの分別などによるゴミの減量化については、最近野焼きの禁止、人口 の増加などにより 思うようには進んでいないようで、一部の町民だけで なく全町民の意識改革を高めていくこ と。また全国に誇れるまちづくり を町民全体のものにすることも課題となってくるのではな いでしょう  か。非常に示唆に富んだまちづくりを行っていて、参考になりました。
・紫波町の人口は3万4千人、あまりに大きな自治体になればこのようなま ちづくりが難しくなってくるのではないかと思いました。

【遠野市の地域福祉計画】
 遠野市は介護保険が始まる平成12年に向けて、社会事業大学の大橋先生の指導により、「地域福祉ハートフルプラン」を作り、介護保険や高齢者福祉に対する計画を作り実施してきました。期待を持っていきましたが、隣の宮守村と合併したばかりで新しい市の福祉計画をどのよ
うにつくっていくのか検討中でした。
 合併により面積も非常に広くなり、過疎が進むこの地方で福祉を充実させていくことが大きな課題になっており、かえって茅野市に学びたいくらいだという担当者の話でした。
 過疎であり採算が合わないことから介護保険業者の進出もなく、社会福祉協議会が大きな役割を果たしていました。こういった面でも自治体の負担がおおくなり政治の矛盾が地方都市にしわ寄せされていると感じてきました。

 遠野市といえば柳田国男の「遠野物語」で有名なので、さぞかし観光客が多いのだろうと思いましたが、年間の観光客は50万人ということでした。アクセスの悪さが影響しているのでしょうか。しかし、東北の特徴ある曲屋がいくつも保存されており、貴重なものです。わらぶきの屋根の保存など莫大な費用がかかるものと思われ、これにも日本人の心のふるさととしての文化の保存に国の支援が必要で、自治体が負担するには大変なことであると思いました。


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