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僕らの未来



僕がやりたい事って何だろう?

自分のやりたい事、したい事!音楽で身を立てる事は残念ながら、難しい。この間も大学で仲良くなった、

バンドのメンバーとスタジオの中で揉めた。

僕の要求する音が作れなくて、ギターの速水とケンカした。

「順一はいつも、難しい注文するけれど、僕はプロになるつもりはないから!」

速水は冷たくメガネの向こうで答えた。

「じゃあ、なんのつもりで、俺達、スタジオで練習しているんだよ!!」

僕は、ギターをスタジオの壁にもたれかけさせると速水に言った。

「趣味だと思っているよ!プロなんて無理だから!」

僕は目の前が真っ暗になった。速水程のギターリストはいままで、見た事が無い腕だったので、彼抜きでは考えられなかった。

ベースの秋山も留年が掛かっていたし、ドラムの石塚も音楽よりも、車に情熱を傾けていた。

「辞めよう!解散しよう!」

僕は女より大切に思っていたバンドをあっさり解散させた。

もし、僕にチャンスがあるならば、一人でもやれるハズさ!その気にならなければ生きられない。

ギター1本でロックして行くのが、僕のやり方だった。バンド全盛の頃に、僕のギターにはヘビーゲージが張られていた。

オリジナルを3曲コビーを何曲か、ライブハウスの前座に出して貰えば御の字だった。

2週間に一度出して貰えればラッキーだった。

流石に僕も人並みだった。自分の才能の無さに嫌になったいた。

「順一は、将来何になるの?」ユミコは僕に言った。

ジーンズの膝の穴を見ながら僕は答えた。

「やりたい事が見つからないんだ!今は!」

「平凡でいいじゃない、私といっしょに暮らすだけで!」

順一は何も答えられなかった。順一は色々な事を考えた。

今までの事、好きだった貴子の事。

そして、貧しくて苦労だらけのムラカミの事。

自分だけが何も努力せず、このまま幸せになる事が許されるのだろうか?

「ユミコ!まだ僕にはやりたい事がある。それが何なのか今はわからないけれど、このままじゃ終れないんだ。」

ユミコは、悲しそうな目で僕を見つめた。

「わかった。順一がそう言うのなら、わかった。」

僕は黙ってユミコを抱き寄せた。

思い通りに行かない世の中に苛立つ毎日だったが、

君が居てくれたから、あの時夢が見れたのだと思う。

僕らの将来は真っ暗闇の中を一筋の光を目指す様な思いだったと思う。
               つづく。

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