tomorrow

tomorrow

夜が開ける前に。



彼女が来るまで、僕は仮眠をしてユミコを待った。

ユミコのバイト先の仲間にわからない様、塀の影にいつも車を停めた。

シートを倒し車のテレビを観ながら、眠りに着く頃、「コンコン!」と窓を叩く音がする。

それが彼女の合図だった。「お待たせー!」ドアを開け彼女は、シートに座ると、彼女はキスしてくれた。

僕は四ツ木インターから、横浜へと向かう。

夜の首都高は、トラックドライバーが壁の様に立ちふさがる。

一号線を下り、横浜で首都高を下りる。

僕は一路、朝比奈峠を目指す。

鎌倉霊園を抜け、明石橋を左に曲がり、逗子の街を抜け、逗子マリーナへ向かう。途中に披露山公園があり、夜明け前に僕らは、車で披露山公園に上がる。

山の中腹は高級住宅地が広がり、まるで、ビバリーヒルズの様で、素晴らしい景色なのだ。

僕とユミコは、ここから望む景色がとても好きだった。

晴れている日は、バックに富士山!手前に江ノ島、そして海から日が昇る。

僕は毛布に包まって寝ているユミコを起こし、朝日を眺めながら、逗子の海岸沿いのファミリーレストランで食事をる。

そこは昔、夏目雅子と伊集院静がよく泊まった、渚ホテルの跡地に出来たレストランだった。

「順一!この海の風景は、きっと二人は観ながら、愛を語ったんだよね!」ユミコは少し涙ぐんでいた。

「そうだね!きっとそうだよ!彼女はこの世にいないけど、時は流れても海の輝きは変わらないんだよ。」

僕はユミコにそう言うと胸が切なくなった。

今でも、渚ホテルの忘れ形見の時計台はファミリーレストランの記念碑の近くで時を刻んでいる。

逗子の披露山公園から、海へ紙飛行機を飛ばす。

石原裕次郎も子供の頃、兄、慎太郎と紙飛行機をここから飛ばしたそうだ。

僕はユミコと海を眺める。時が過ぎてもこの海の輝きはきっと変わらない。

僕らの愛はこの風景の中に閉じ込めたままなのだから。

                 つづく。

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: