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JEDIMANの瞑想室
第4章 X・day <1>
「凄い………」
リアナは唖然とした。
彼女が出した問題全てに、リチャードはすました顔ですらすら答えたのだ。
リアナは17歳とはいえ、優秀な頭脳を持ち、立派な科学者の1人である。
そのリアナの問いを、9歳のリードが簡単に答えてしまった。
「凄いだろ?」
ジェイクが腕組みして言った。
「俺にも解けない問題が解けるんだぜ?」
「ジェイク自身、たいした問題は解けないでしょ?」
ティアがため息をついて言った。
ジェイクは赤面して黙り込んだ。
「………脳波をはかりましょうか」
リアナはリードを見つめて言った。
確かに超人的に頭はいいが、Uウイルスとの関連性があるようには思えない。
リアナはレジスタンスがクリティロの病院から強奪した時の戦利品の1つである簡単な脳測定器を持つと、ノートパソコンに繋ぎ、リードの頭に取りつけた。
「リード、深呼吸して。今から脳波をはかるから………」
次の瞬間、リアナは驚いた。
ディスプレイには測定不可能と表示されていた。
脳波の限界値を越えているのだ。
「驚いたかい?」
ジェイクが言った。
「まだ驚く事がある。リード、少し痛むぞ」
ジェイクはそう言うと腰からナイフを抜き、リードの手のひらを少し浅く切った。
「じぇ、ジェイクさん!なにして―――」
止めようとしたリアナは目を見張った。
リードの傷がすぐに閉じたのだ。
もはや傷があったという証拠は、一滴の血しかない。
「彼は、若干ながらフィアの能力を持っている」
ジェイクはリアナに言った。
「なんで……」
リアナは驚きに打たれ、言葉が出なかった。
「恐らく、わたしの遺伝の影響です」
ティアが口を開いた。
「これを見てください」
彼女はそう言うと肩に巻かれていた包帯を解いた。
白い布が床に落ちる。
リアナは息を飲んだ。
ティアの肩の傷口の周りの皮膚は、フィアのようなゴム状皮膚だった。
「そんな、なんで……」
リアナはただただつぶやいた。
驚きの連続についていけない。
「真実を突き止めよう」
ジェイクが言った。
「俺達の経験と君の頭脳で」
リアナはしばらく呆然としていたが、ゆっくりと頷くと、どさりと椅子に座った。
彼女は疲れたようにため息をつくと、豊かでつややかなブロンドの髪を手ですいた。
「わかりました。じゃあ、お話をお聞きします」
ジェイクは頷くと、床にあぐらをかいた。
「時は2008年にさかのぼる。俺とティアは<SAF>だった。そして、例の<SAF>隊員襲撃事件に遭遇した者だ」
リアナは目を見開いた。
「で、でもあれで助かったのは、アーサー・ホーク教授と……」
「クレイジーとクロウだけのはずだ。俺とティアは島に置いてきぼりにされた」
ジェイクは目を閉じ、昔の事を思い出していた。
「救出部隊がくる直前、俺とティアは爆発に巻き込まれたんだ。なんとか海に潜れたんだが、俺は火炎を少し浴びてね。この火傷はその時のものだ」
ジェイクは顔の火傷を撫でた。
「俺は大火傷。ティアはティアで、グールに噛まれた左腕を切断していた。そのうえ、アメリカ軍は島に徹底的な殲滅爆撃を行ったんだ。俺は最後の力を振り絞って流木を掴むと、泳いで沖へ逃れた」
ジェイクはそこで息をついた。
「翌日、近くの島の漁師達が、明け方の大爆撃が何だったのか見に来た。気を失っていた俺とティアはその漁師達に助けられたんだ。俺達はブラジル沖の漁師の島で数年間過ごし、そしてフィアの制圧した南アメリカ大陸に上陸した。そこでレジスタンスと出会ったんだ」
「だけど、わたしの体に変化が訪れた」
ティアがフィアの皮膚に少し覆われた肩をさすりながら言った。
「わたしはあの島でグールに噛まれたの。ジェイクがすぐに切断したんだけど、ウイルスはやっぱり入ったみたい。微量だけどね」
「だが、ティアはグールにならなかった」
ジェイクが腕を組み、言った。
「ここが大事だ。なぜ彼女はグールにならなかったのか」
「……………免疫」
リアナはつぶやいた。
「体に入ったのが微量のウイルスで、しかも生来の免疫があったのなら、Uウイルスの克服は不可能じゃない」
「そう、まさにその通り」
ジェイクはそう言ってビシッとリアナを指さした。
「彼女はUウイルスを克服し、自我を保ったままフィアの能力を手に入れる事に成功した。事実、彼女は治癒力、頭脳、運動能力が格段に上昇し、肩の皮膚が若干ゴム化している。そしてそれは―――」
「息子に受け継がれた……」
リアナはそう言ってリードを見つめた。
リードが見返す。
「それ以来、わたしは不思議な夢を見るようになりました」
ティアは静かに言った。
「わたしはどこか広い空間にいて、優しい白光を放つ巨大な光の玉が、わたしの頭に直接話しかけてくるんです」
「光の玉はなんて?」
リアナの問いに、ティアは困った顔をした。
「さあ……。でも、なんか母が子供に優しく話しかけるみたいな……」
「ぼくも見るんだ」
突然、リードが口を開いた。
「母さんと一緒の感覚がする。巨大な光球が脳に話しかけてくるんだ」
「…………話はわかりました」
リアナは頷いた。
「信じられないような話ですが。でも、あなた達に免疫があるのなら―――」
リアナは嬉しそうに笑った。
「Uウイルスに対する特効薬がつくれるかもしれません!血を少しもらっていいですか?」
「ええ、もちろん」
ティアが頷いた。
リードが続いて頷きながら笑った。
「ぼく、リアナの事気に入ったよ」
「ありがとう」
リアナはリードに優しく微笑んだ。
「さあて、やるべき事は山ほどあるぞ」
クロウはアジトの格納庫で肩をぐるぐる回しながら言った。
「シュナイダー、<SAF>に連絡だ。ドイル、カトリーナ、レイ、武装ジープに燃料を補給しろ。ローグ、教授達の様子を見てこい。アレックス、グリッグ、みんなの武器に弾薬を補給してくれ。ネイオ、ヴェノムの構造を調べよう。スコット、エンジニア班を呼んでこい」
「なんでお前が指揮してるんだよ………」
スコットがジト目でクロウを見た。
「お前よりはよっぽど指揮能力に自信がある」
「んだとぉ!?」
「あのリッカー事件から少しは成長してると思ったんだがな」
クロウの言葉に、スコットはきょとんとした顔をした。
「やっぱクロウ、お前、リッカー事件の時にどっかで会った?」
クロウは微笑んだがなにも言わなかった。
一行が帰ってきた事で、アジトは騒がしくなっていた。
パウロを始めとする犠牲になったブラジル人兵士達の家族が泣いている。
クロウはたくさんの人の中を悠然と歩きながら、休む場所を探していた。
凄まじく眠い。
ここ数日間、戦い続きで全く寝ていない。
だが、アレックスの乗っ取ったヴェノムの構造も早く調べたい。
作業していたレイがバタリと倒れた。
寝ている。
彼はブラジル人達に笑われながら運ばれていった。
見れば、グリッグやアレックスもだ。
クロウは必死に眠気と戦いながら、周りを眺めた。
スコットは何をやってる。
エンジニア班は―――
クロウは遂に眠りについた。
リアナは凄まじい勢いでキーボードを押していた。
ティアとリードから採取した血液をそれぞれ試験管にいれ、分析しているのだ。
レジスタンスが病院などからいろいろな機器を強奪していて本当に良かった。
リアナは心からそう思った。
たくさんの構造式を構築し、分析し、血液に当てはめる。
リアナは次々に分析を進め、満足げに頷いた。
と、その時、テントの入り口の布が開いた。
「リアナ!」
「ローグ!?」
リアナは懐かしい声に振り返った。
すっかり汚れたローグがそこにいた。
「ローグ!」
リアナは満面の笑みを見せ、ローグに抱きついた。
「どうわ!?」
ローグが受け止めきれずに倒れる。
「ローグ!良かった!無事だったのね!」
リアナはローグの服に頬をすりよせながら言った。
ローグがやれやれという顔をする。
「おいおい、リアナ、こっちは数日間寝てないから体力が限界なんだ。勘弁してくれよ………」
「やだ。おもいっきり甘えちゃう!」
「リアナ………」
ローグはため息をついた。
「あー………ごほん」
存在を忘れられていたジェイクが咳払いする。
ローグは慌て離れようとしたが、リアナはさらにすり寄った。
「君は?」
「ローグ・フロストです。リアナとバーナード教授の護衛を任されています」
ジェイクの問いにローグが答えた瞬間、リアナの顔が曇った。
「……………パパ……」
ローグがハッと気づく。
「そういえばバーナード教授は?姿を見かけないけど」
リアナは黙りこくっている。
沈黙の後、ジェイクが言いづらそうに口を開いた。
「その……実は……教授は……知識欲が過ぎて……」
「フィア達に魂を売ったのよ!」
リアナが叫んだ。
涙がその瞳からこぼれおちる。
「あのバカ親!フィアに殺されるがいいわ!」
リアナはそう言って、ローグの服に顔を押しつけ、大声で泣き出した。
リアナの悲しみの深さを知ったローグは、無言で彼女の震える体を抱きしめた。
<SAF>への連絡を終えたシュナイダーは、満足そうに頷いた。
助けをすぐに送るらしい。
シュナイダーはあくびをした。
眠い。
さっさと寝よう。
と、その時、彼は心臓を鷲掴みされたような感覚を味わった。
視界が血走り、呼吸できなくなる。
シュナイダーは地面に倒れた。
心臓が必死に鼓動しようと暴れている。
シュナイダーは咳き込んだ。
肺にようやく新鮮な空気が入り込んでくる。
シュナイダーはようやく、自らの体にUウイルスが侵入している事を思い出した。
自分の命は、もはや長くないのだ。
シュナイダーの瞳から涙が滴り落ちた。
24時間後―――
クロウはようやく目を覚ました。
「う………」
彼はゆっくりと身を起こした。
寝すぎた。
見回すと、どこかのテントのようだった。
ブラジル人が運んでくれたのだろう。
彼は大きくのびをした。
と、その時、テントの入り口の布が開いた。
入ってきた男をぼんやりと見たクロウは、言葉を失った。
「やあ、クロウ。久しぶりだな」
忘れもしないその表情。
クセのある笑い顔。
「ジェイ…ク………?」
シュナイダーは嘔吐した。
心臓が尋常じゃなく暴れ、必死に体がウイルスに抗っている。
しかし、ゾンビ化は迅速だった。
シュナイダーは自分の手が少し腐食しているのを見て戦慄した。
再び衝撃が体を駆け巡る。
シュナイダーは体を痙攣させ、床に倒れ込んだ。
手の腐食が激しくなる。
このままグールになるくらいなら………
シュナイダーは震える手で拳銃を掴んだ。
自らのこめかみに銃口を当てる。
彼は引き金にかけた人指し指に力を込めた。
銃声がレジスタンスのキャンプに響き渡った。
シュナイダーは自らの手から吹き飛んだ拳銃を見て唖然とした。
「間に合ったか……」
テントの入り口に、クロウがいた。
彼の手にはハンドガンが握られていた。
銃口から硝煙が上がっている。
「シュナイダーッ!!」
ローグがクロウを押しのけ、テントに入ってきた。
彼はシュナイダーに駆け寄ると、手にした注射器のような物を素早くシュナイダーの二の腕に押し当て、中にあった液体を打ち込んだ。
「間に合ってくれよ……!」
ローグが祈るようにつぶやく。
「い、今のはなんなんだ?ローグ……」
シュナイダーはつっかえつっかえローグに訊いた。
「リアナの開発したUウイルスの抗薬です」
次の瞬間、シュナイダーの身体を猛烈な衝撃が襲った。
彼は再び嘔吐した。
頭ががんがん殴られている感じがする。
あらゆる内臓がキリキリ痛み、心臓が不規則な脈動を繰り返す。
意識が混濁してきた。
視界がレッドアウトする。
大地震が起こっているような感じがする。
凄まじい激痛と優しい感覚が交互に彼に訪れた。
意識をこれ以上保っていられなかった。
彼は小さく悲鳴をあげると、意識を完全に手放した。
「シュナイダーは大丈夫なのか?」
ジェイクは地べたに座っているクロウに訊いた。
クロウが首を横に振る。
「わからない。一応、ティアやリアナが看ている。大丈夫だといいがな」
クロウは言葉を切ると、ジェイクに訊いた。
「あの抗薬は量産できないのか?」
ジェイクがクロウの隣に座り、頷いた。
「ああ。薬を1つつくるたびにティアかリードの血が必要になる。そんなペースでは、とても量産なんて……」
「そうなのか……」
クロウはため息をつくと、ジェイクを見た。
「よく生きててくれたな、ジェイク」
「お前、それ言うの何回目だよ」
ジェイクが笑った。
「そう簡単に死にゃあしないさ。今や俺は家庭持ちなんだからな。そういえばクロウ、お前、ティータとはどうなった?結婚したのか?」
クロウは心を殴られたような衝撃を受けたが、必死にそれを隠し、笑顔で頷いた。
「ああ」
「へえ、子供は?」
「………いない」
「ダメだな~、お前」
ジェイクはにやにや笑った。
「俺にはもう9歳児がいるぜ?」
「なんだ、お前、子供いたのか」
「おう。リードだ」
「ああ、あの子、お前の子供だったのか。良かったな、父親に似なくて」
「どういう意味だよ!」
ジェイクは笑いながらクロウを軽く小突いた。
クロウも微笑んだ。
「………お前が幸せそうで良かった」
「おう、らしくねえぞ、クロウ」
「………だな」
クロウは苦笑した。
と、その時、突然爆音が響き、地面が揺れた。
「な、なんだ!?」
クロウは慌て立ち上がった。
リアナとティア、そしてローグもテントから飛び出してきた。
再び爆音。
地面が先ほどより激しく揺れた。
アジトのある縦穴の壁から、岩が少し、がらがらと崩れ落ちた。
辺りが騒がしくなる。
爆音が立て続けに響いた。
「フィアだーーーっ!!」
誰かが叫んだ。
ネイオだ。
「皆、武器を取れ!防衛配置につくんだ!」
男達が銃を手に、アジトの出口に向けて駆けていく。
女はすぐに荷物をまとめ、子供を連れてアジトのできるだけ奥に移動し始めた。
「フィアだと!?」
クロウは叫んだ。
「くそう!おれ達がアジトまで導いちまったのか!」
彼は悔しげに叫ぶとライフルを手に、出口に向けて走り出した。
ジェイクとローグが続く。
リアナとティアはその様子を不安げに見守った。
爆音が縦穴に轟いた。
「走れ!」
「配置につけ!」
レジスタンス達は出口から飛び出すと、出口の周りに掘ってある塹壕に飛び込んだ。
アジトのある山の山肌は枯れ木がいくつかあるだけで禿げ上がっており、射撃の邪魔になる物がない。
グリッグはフィアのレーザー・ガンを手に、塹壕へ飛び込んだ。
アレックスやドイル、カトリーナ、レイ、それにクロウ達の姿もある。
ブラジル人達が銃を構え、塹壕から顔を覗かせる。
グリッグも塹壕から顔を出した。
「マジかよ……」
彼はため息をついた。
アジトの山を、フィアの大軍が囲っていた。
大部分はグールで構成されているが、完全武装したフィアやヴェノムも大量にいる。
「oh my god……」
グリッグは小さくつぶやいた。
グールのうめき声は凄まじい大合唱となり、地を震わせている。
フィアの迫撃砲弾が次々に塹壕の近くに炸裂し、土くれを吹き飛ばした。
「………おい、ネイオ」
アレックスは隣のネイオに話しかけた。
「うん?」
「こっちの兵士は何人だ?」
「だいたい千人」
「…………あの数を相手に持ちこたえられるか?」
ネイオは肩をすくめただけだった。
次の瞬間、フィアの雄叫びがあがった。
グールが津波のように押し寄せてくる。
攻撃が始まったのだ。
「ああ」
ドイルがつぶやいた。
「くそまずい」
「FIRE----------ッ!!」
ネイオのかけ声と同時に、レジスタンスの銃が火を噴いた。
銃弾が嵐のごとくグールに降り注ぐ。
前衛が倒れた。
しかし、グールは溢れるように進んでくる。
レジスタンスはひたすら銃を撃ち続けた。
フィアの迫撃砲が激しさを増す。
おびただしいグール達は、ゆっくりと、しかし確実に塹壕に迫っていた。
「このままじゃだめだ!」
ドイルが怒鳴った。
凄まじい銃声で、叫ばないと会話できない。
「じきに追いつめられる!」
「じゃあどうするっていうんだ!?」
ネイオがわめいた。
「ヴェノムを使おう!」
グリッグだ。
「なんだって!?聞こえない!」
「ヴェノムだよ!」
「ヴェノムだと!?だめだ!奴らはこちらの100倍はヴェノムを有している!」
「だけど、グールを蹴散らすくらいは!」
グリッグは食い下がった。
ネイオがやはり首を横に振る。
「グールを蹴散らす事ができても、すぐにフィアに―――」
ネイオは最後まで言い切れなかった。
迫撃砲弾が塹壕の近くに着弾したのだ。
ネイオ達は凄まじい衝撃に薙ぎ倒された。
耳の感覚がぼやける。
爆発音と悲鳴がこだました。
「ひるむな!」
クロウだ。
ネイオはなんとか立ち上がった。
再び爆発が起き、ネイオはまた地面に倒された。
地面が地震のように揺れ、大気が硝煙と肉が焼ける臭いで満ちる。
「くそっ!」
ネイオは口に入った泥を吐き出しながら立ち上がった。
塹壕はまだ持ちこたえていた。
たくさんの兵士が戦っている。
グール達はまだ遠い。
「よし、体勢を立て直し―――」
ネイオが口を開いた瞬間、グールを空中高くはね飛ばしながら、10匹の怪物ヘビ、ヴィシスが戦場に飛び込んだ。
「ヴィシスだーーーっ!」
兵士が恐怖の叫び声をあげる。
「撃て!撃つんだ!」
ネイオは怒鳴り、銃撃を再開した。
大量の銃弾がヴィシスに炸裂する。
しかし、ヴィシスは全く意に介さず、這い進んできた。
「来るぞ!」
誰かが喘いだ。
次の瞬間、10匹のヴィシスが塹壕に飛び込んだ。
悲鳴と銃声がこだまする。
誰かの腕がヴィシスの牙に引き裂かれ、飛んだ。
ヴィシスの尾が狭い塹壕を巨大な鞭のごとく暴れまわり次々に兵士が吹っ飛ばされた。
ヴィシスが恐ろしい雄叫びをあげ、恐怖に顔を歪めた兵士を丸のみにする。
ヴィシスの尾に空中高くはね飛ばされた兵士の悲鳴が響いた。
アレックスはこの惨状に戦慄した。
怪物が、人間を引き裂き、吹っ飛ばし、丸のみにしているその光景は、さながら地獄だった。
「………………うおおおお!」
彼は目の前のヴィシスに銃を乱射した。
銃弾がヴィシスの皮膚に炸裂し、肉片を飛ばす。
ヴィシスは悲鳴をあげると、白い濁眼を怒りに燃やし、アレックスに向き直った。
アレックスは多少たじろいだものの、再び銃を撃った。
ヴィシスが体をくねらせ、アレックスに迫る。
アレックスはひたすら後退した。
しかし、彼は不運だった。
「うわっ!」
アレックスはかかとを死体につまずかせ、倒れてしまった。
ヴィシスが歓喜の声をあげ、アレックスににじり寄る。
「くっ…………そおおおおお!!」
アレックスは叫ぶや否や、倒れたまま銃を撃ちまくった。
銃弾が嵐のごとくヴィシスの頭に当たる。
しかし、すぐに弾はつきた。
ヴィシスはそれに気づくと、ガッと口を開いた。
血塗られた牙が見える。
次の瞬間、その開いた口に手榴弾が飛び込んだ。
爆発や閃光と共に、肉片や血霧が飛ぶ。
頭を失ったヴィシスの屍体は、ぐらりと揺れると地面に倒れた。
「大丈夫か?アレックスさんよ」
手榴弾を投げたスコットがアレックスを助け起こした。
クロウは目の前で暴れるヴィシスにライフルを放った。
銃弾がヴィシスの片目を貫く。
ヴィシスはつんざくような悲鳴をあげると、潰された右目からだらだらと血を流しながらクロウに飛びかかった。
クロウがひらりと身をかわす。
その後ろにいたのは、グレネード・ランチャーを構えたジェイクだった。
グレネードの爆発をもろに食らったヴィシスは、体をもつれさせながら吹っ飛んだ。
おびただしい肉片が飛び散り、血がどくどくと流れる。
クロウはその脳天にハンドガンを撃ち込んだ。
ヴィシスが体をびくんとひきつらせ、動かなくなる。
クロウとジェイクは笑顔でハイタッチを交わした。
グリッグは使いなれないレーザー・ガンに四苦八苦しながらヴィシスと戦っていた。
ヴィシスが唸り声をあげ、次々にレジスタンスを屠っていく。
グリッグは素早くエネルギーを充填すると、熱いエネルギー弾をヴィシスに浴びせた。
ヴィシスが大きな悲鳴をあげた。
「お、効く」
グリッグはヴィシスがより苦しむのに気をよくし、さらに撃ち続けた。
しかし、怒り狂ったヴィシスは実に危険だった。
ヴィシスは怒りの声をあげると、レーザー弾をものともせずにグリッグに襲いかかった。
「わ、わあああああああ!」
グリッグは必死に後退した。
ヴィシスが怒りに濁眼を血走らせ、土くれを弾き飛ばしながら塹壕内をグリッグに迫ってくる。
グリッグはひたすら後退した。
しかし、ヴィシスの方が素早かった。
ヴィシスはグリッグに体当たりを食らわせて転ばすと、牙を剥き出しにして飛びかかった。
グリッグはヴィシスに左腕を噛み裂かれ、悲鳴をあげた。
「グリッグ!」
誰かが叫び、ヴィシスの首に飛び乗ると、ヴィシスの頭にハンドガンを連射した。
ネイオだ。
ヴィシスは首にまたがり、自らの頭を攻撃してくるネイオを振り落とそうと激しく身悶えした。
振り落とされまいと、ネイオが必死にヴィシスにしがみつく。
ヴィシスはしばらく暴れていたが、ネイオがあまりにしつこいので痺れを切らし、手段を変えた。
尾で首にまたがるネイオを叩き落とそうとしたのだ。
ヴィシスは尾を高く上げ、振り下ろした。
「ネイオ!上だ!」
グリッグは左腕の痛みをこらえながら叫んだ。
ネイオがとっさにヴィシスの首から飛び下りる。
ヴィシスの尾による強力な一撃はネイオをかすめ、ヴィシス自身の首と頭に直撃した。
ヴィシスが自身の攻撃で地面に叩きつけられた時、背骨が折れる音をグリッグはその耳ではっきりと聞いた。
ドイルは目の前で兵士を食らっていたヴィシスの体に銃口を押し当て、引き金を引いた。
超至近距離から放たれた銃弾がヴィシスの体に埋め込まれる。
いらだったヴィシスは喰らっていた血だらけの兵士の骸を吐き捨てると、素早く身体をドイルの体に巻きつけた。
予想もしない攻撃にドイルは対処できす、なすすべもなかった。
ヴィシスの胴がぎちぎちとドイルの体を締め付ける。
「ぐ………あ………」
ドイルはあまりの締め付けに意識が飛びかけた。
銃が痙攣する手から滑り落ちる。
嘔吐物が食道を昇ってきた。
「ドイルさん!」
突然、声がした。
ヴィシスが頭をカトリーナに向ける。
カトリーナはヴィシスの凄まじい威嚇に震え上がりながらも、その場になんとかとどまった。
ヴィシスが濁眼を怒りに閃かせ、戦吼を周囲に轟かせる。
だが、カトリーナはひるまなかった。
「主よ、はかなき我を守護したまえ!」
彼女はそう叫ぶと、近くのレジスタンス兵士の死体が持っていた銛(もり)を手にし、槍のように構えた。
胸の十字架の首飾りが太陽光を反射してキラリと光った。
ヴィシスが舌なめずりし、ドイルを巻きつけたままずるずるとカトリーナに迫る。
両者は対峙した。
カトリーナとヴィシスの視線がぶつかりあう。
動いたのはヴィシスだった。
ヴィシスは戦吼をあげ、カトリーナに飛びかかった。
と、その時、カトリーナの胸の十字架が再び太陽光を反射した。
その光はヴィシスの濁眼に飛び込んだ。
ヴィシスは突然の光に思わず目を閉じた。
そして目を開いたヴィシスが見たのは、銛を構えてヴィシスに飛びかかるカトリーナだった。
カトリーナは銛を手に跳躍すると、ヴィシスの額に思いっきり撃ち込んだ。
穂先が見事にヴィシスの脳髄を貫く。
ヴィシスがこの世のものとは思えない悲鳴をあげた。
「レイ!今よ!」
カトリーナは激痛のあまり暴れまわるヴィシスに注意しながら叫んだ。
物陰に隠れていたレイと数人の兵士が、チェーンソーを手に飛び出した。
彼らは雄叫びをあげると、ヴィシスの体をチェーンソーで両断し始めた。
ヴィシスの絶叫が地を震わせる。
おびただしい血が噴き出し、肉片が飛び散る。
カトリーナはあまりのむごさに思わず顔を背けた。
敵とはいえ、怪物とはいえ、ヴィシスの壮絶な痛みから助けを求める悲鳴は彼女にとって耐えがたいものだった。
彼女は涙を流しながら胸の十字架を握った。
ふいに、辺りが静かになった。
カトリーナが恐る恐る振り返ると、そこには体を真っ二つにされて息絶えたヴィシスがいた。
返り血で顔や体を真っ赤に染めたレイがヴィシスの屍体に足をかけ、顔の血を拭っている。
ドイルが力を失った胴の締めつけから這い出してきた。
ドイルがカトリーナを見て笑い、お礼を言う。
カトリーナは微笑んだが、ヴィシスの冥福を祈る事も忘れなかった。
「これで最後だ!」
ローグは体に大量の銃弾を撃ち込まれ、ついに力尽きたヴィシスの脳髄に弾丸を埋め込んだ。
ヴィシスが体をビクンと震わせ、永遠の眠りについた。
汗と血にまみれたレジスタンス達が周囲で歓声をあげる。
彼らはおびただしい犠牲を出しながらも10匹のヴィシスを倒したのだ。
ローグも満面の笑顔で歓声をあげたが、ふいにあることを思い出した。
グール。
ローグは塹壕の向こうを恐る恐る見た。
そして、予想通りの光景を見てため息をついた。
グールの大群がすぐ近くに迫っていた。
「おい、グールが!!」
誰かが叫んだ。
レジスタンスは一斉にグールに気づき、迎撃を開始した。
しかし、グール達は食欲を満たすためなら、銃弾をものともしなかった。
しばらくのち、グールの大群が、恐怖に顔を歪めたレジスタンスのいる塹壕になだれ込んだ。
クロウは近くのグールの顔を殴って吹き飛ばすと、ライフルを振り回した。グールが殴り倒される。
だが、グールは後から後から塹壕になだれ込んでくる。
「退却!退却ーーーっ!!」
クロウは怒鳴った。
レジスタンスが必死に塹壕からアジトへの入り口へと逃げていく。
グールは死体の肉を喰らいながら、さらなる食物を求めて押し寄せた。
「逃げろ!」
ネイオが左腕を失ったグリッグを庇いながら叫ぶ。
「Go back!Go back!」
クロウは叫び、味方の退却を促した。
「アメリカ軍はまだですか!?」
グールを銃撃で牽制しながらローグが叫ぶ。
「知るか!」
クロウはそう叫び返すと、ライフルでグールの脊髄を撃ち抜いた。
グールがよろよろと後ずさり、バタリと倒れる。
手榴弾がどこかで爆発した。
グールが空高く舞い上がる。
クロウはジェイクの姿を必死で捜した。
さっき、離れてしまったのだ。
ローグがクロウの後ろにつき、彼を援護する。
「アレックス達は無事か!?」
クロウはローグに訊いた。
「さあ、どうでしょうね」
ローグは目の前のグールの首にナイフを突き立てながら答えた。
「姿は見てませんけど」
「そうか」
クロウはそう言うと、グールの腹に思いっきり拳をめり込ませた。
続けて彼は動きを止めたグールの顔を殴り飛ばした。
「あ、アレックスです!」ローグが突然叫んだ。
「ドイルやカトリーナ、レイもいます。あとスコットも。みんな、アジトに向かってます」
ローグはそういうと、ちらりとクロウを見た。
「僕達も退却しません?」
もはや塹壕に残っているレジスタンスは少ない。
クロウはしぶしぶ頷いた。
ジェイクが既にアジトに撤退している事を祈るしかない。
「そうだな。退却―――」
その時、クロウは大量のグールの向こうにジェイクの姿を捉えた。
グールに囲まれ、孤軍奮闘している。
「ジェイク!!」
クロウは叫び、駆け出した。
彼はグールを次々に薙ぎ倒し、ジェイクの所までなんとかたどり着いた。
「クロウ!?」
ジェイクが息を荒げながら驚いて言う。
「クロウさん!」
ローグがなんとかグールを突破してきた。
「突然なんてことするんですか!?」
「お前ら、2人そろって馬鹿か!」
ジェイクが叫んだ。
「こいつらの背後をとれたからここまで来れたが、どうやってここからアジトまで退却するつもりだ!?」
『あ』
クロウとローグは見事にハモった。
グールがさらに数を増やし、彼らに迫る。
「死ぬのは俺だけで良かったのに……」
ジェイクがつぶやいた。
「くそ………。多すぎる……」
クロウは唇を噛んだ。
と、その時、爆発音が轟いた。
「ヴェノム!?」
ローグが狼狽して叫んだ。
ヴェノムがアジトから飛び出し、塹壕のグール達に猛攻をしかけたのだ。
ミサイルを受け、グールが吹っ飛ぶ。
「早く!こっちだ!」
クロウはその声に振り返った。
ネイオが手招きしている。
クロウ達は急いでそちらに向かった。
「なにもたもたしてたんだ!?」
ネイオが怒ったように言った。
「アレックスに後で感謝しとけよ!」
彼はそう言ってヴェノムを指さした。
ヴェノムにはアレックスが乗っているらしい。
ネイオは通信機を取り出し、怒鳴った。
「アレックス!退くぞ!」
しかし、ヴェノムは指示を無視し、塹壕に満ちたグールを蹴散らし続けた。
「アレックス!」
ネイオは再び叫んだ。
ヴェノムは攻撃をやめようとしない。
グールを殺す事に夢中なのだ。
「アレックス!死にたいのか!?」
ヴェノムがようやく攻撃をやめ、ネイオ達に向き直った。
次の瞬間、ヴェノムはミサイルを受けて爆発した。
至近距離の爆発に、ネイオ達は薙ぎ倒された。
ヴェノムの頭部が炎上し、足が力を失って倒れた。
「アレ……ックス……?」
ローグが呆然とつぶやいた。
ヴェノムは無情に炎上し続ける。
「アレックス!!」
ローグが再び叫んだ。
しかし、返事は無かった。
塹壕の向こう、山のふもとからヴェノムが数機、駆け上がってくるのが見えた。
「………急ごう。入り口を封鎖しないと」
ネイオがぼそりとつぶやいた。
「スイッチ!」
ジェイクが叫んだ。
とたんに仕掛けられていたダイナマイトが爆発した。
爆風が皆の髪をなびかせる。
アジトへの入り口が瓦礫で封鎖された。
「こんなこともあろうかと、ダイナマイトをセットしておいたのさ」
スコットが説明した。
「さて、これからどうするか………」
ジェイクはつぶやくと、地べたに座り込んだ。
「ま、アメリカ軍を待つしかないだろうな」
ドイルがつぶやいた。
数時間後―――
クロウ達は外から攻撃を受けているらしい瓦礫を不安げに見つめていた。
爆発音がときたまし、そのたびに瓦礫の山が揺れる。
しばらくは持ちこたえるだろうが、長くは持たないだろう。
「おい、クロウ、アメリカ軍は?」
「さあな」
スコットの問いに、クロウは簡潔に答えた。
さっきからなにか嫌な予感がする。
彼は周りを見回した。
特に何もない。
「気のせい、か……」
クロウはそう言うと目を閉じた。
「大丈夫ですか?」
ヴィシスに噛み裂かれたグリッグの左腕を治療していたティアが、グリッグに訊いた。
グリッグが痛そうな顔をしながらも頷く。
「そうですか?痛かったら言って―――」
次の瞬間、ティアはバッと上を見上げた。
「どうかしたんですか?」
カトリーナが訊く。
「あの………なにか感じて……」
「気のせいだろ」
スコットがあくびをしながら言った。
「疲れてるんだって」
「そうかもしれ―――」
ティアはそこまで言うと、目を見開いた。
「フィアです!」
皆、一斉に上を見た。
アジトは縦穴の底にある。
上の丸い穴から空が見えた。
しかし、その丸い穴のへりに、蠢く影があった。
フィアだ。
フィア達は次々に穴のへりから飛び出してきた。
パラシュートのような物が膨らむ。
「上だーーーっ!」
ネイオが叫んだ。
キャンプが騒がしくなる。
生き残った兵士達は上空に向かって銃を撃ち始めた。
フィア達もレーザー・ガンで攻撃しながらキャンプに向かって降下してくる。
クロウの狙撃に撃ち抜かれたフィアの体が、だらりと力を失った。
フィア達が次々に縦穴の底のキャンプに降り立つ。
女性の悲鳴が響いた。
「ああ、くそっ!」
ネイオは頭をかいた。
「女子供を守れ!」
クロウは叫びながら、近くに降り立ったフィアの脊髄を一瞬で撃ち抜いた。
フィアが悲鳴をあげて倒れる。
フィアが次々にテントに押し入り、中にいた女性や子供を殺害していく。
「ちくしょう!」
ドイルがいたたまれない気持ちで叫んだ。
ローグは近くのテントに押し入ろうとしたフィアの頭蓋を撃ち抜くと、テントの中にいた女性を退避させた。
周りで次々にフィアが降下し、攻撃を開始している。
スコットとフィアが取っ組み合っているのが見えた。
「もう逃げ場が無いぞ!」
彼はつぶやくと、逃げ惑う人々の中に、リアナの姿を捜した。
いない。
彼は、レジスタンス兵士にのしかかってとどめをさそうとしていたフィアに銃弾の嵐を浴びせて倒すと、兵士を助け起こした。
「大丈夫ですか?」
「あ、ありがとう。助か―――」
次の瞬間、兵士はレーザーを胸に受け倒れていた。
ローグは振り返りざまに銃を乱射した。
フィアが銃弾を次々に受け、ばたりと倒れる。
しかし、レーザーがローグの肩を撃ち抜いた。
「ぐ……」
ローグは肩を押さえてうずくまった。
出血している。
ローグは服の袖を噛み裂き、それを止血帯にして肩に巻いた。
レーザーに感染能力はないから、ただのケガだ。
その時、ローグはようやくリアナを見つけた。
彼女は自らのテントの前でおろおろしていた。
「リアナ!」
ローグは叫ぶと、そちらに向かった。
「ローグ!」
リアナがローグの姿を認め、安心した表情をする。
「早く逃げろ!」
ローグはリアナに怒鳴ると素早く振り向き、背後から迫り来たフィアの脳髄を撃ち抜いた。
フィアが血を頭から噴き出しながら倒れる。
「ローグがいなきゃいや!」
「わがまま言うなよ!」
ローグはリアナに呆れながら叫んだ。
「リアナ、とにかく安全な場所に避難するんだ。アメリカ軍が到着するまでなんとか僕達が時間を稼ぐ」
リアナが首を傾げた。
「安全な場所って?」
ローグは周囲を見回した。
どこにもない。
「とにかく!早くどこかへ!」
「だけど、逃げ場なんてないよ?」
急に声がすると、テントから少年が現れた。
「誰だ、この子」
「リードよ」
「……わかった。リアナ、リード、テントに隠れてろ。リアナ、お前、銃は使えるか?」
「銃!?ま、まさか!」
「だよな」
ローグは困って頭をかいた。
なんとか護身武器を持たせないと、心配でならない。
「わたしだったら使えるわよ」
突然、声が降ってわいた。
ローグが振り返ると、そこにはティアがいた。
レーザーがかすめたのか、あちこちケガをしている。
「元<SAF>だしね」
ティアが頬のすすを拭いながら言う。
ローグはティアの言葉に頷くと、ハンドガンを抜き、ティアに渡した。
「リアナを頼みます」
ローグはそう言うと、その場を去ろうとした。
「ローグ、待ってよ!」
リアナはローグに叫んだ。
ローグは振り返るとリアナに微笑んだ。
「大丈夫。必ず生きて戻ってくる!」
「ローグ………」
リアナは再び戦場に向かうローグの後ろ姿を見てつぶやいた。
「死亡フラグ立てないでよ………」
銃声が響く。
ドイルは血まみれのフィアにとどめをさすと、周りを見回した。
だめだ。
フィアがひっきりなしに降り立ってくる。
「どうする!?」
グリッグが叫んだ。
「ネイオ、いい考えはないか?」
クロウがライフルに銃弾を装填しながら言った。
「リッカーとの戦いを4回も生きのびてるだろ?」
「むちゃくちゃ言うなよ」
ネイオは銃を撃ちながら答えた。
「そう簡単にいい考えが浮かぶわけないだろ!」
「だよな」
クロウもため息をついた。
次の瞬間、轟音が響いた。
瓦礫が吹っ飛ばされる。
突破された出入口からヴェノムが突入してきた。
頑丈な足が兵士を踏み潰した。
ヴェノムの後ろからグールやフィアがなだれ込んでくる。
「ああ、くそっ!」
ジェイクが頭をかいた。
「全滅する!」
「……………いや」
ネイオが首を振った。
「あきらめるにはまだ早い。聞こえないか?」
皆、耳を澄ました。
銃声、グールのうめき声、フィアの不気味な言語、ヴェノムの機動音。
その中に、小さいが力強い音が聞こえてきた。
「まさか……」
グリッグの顔が輝く。
次の瞬間、いくつもの武装ヘリが縦穴に飛び込んで来た。
ミサイルやガトリングが火を噴き、次々にグールやフィアを薙ぎ倒していく。
武装ヘリの後ろから輸送ヘリが現れ、キャンプに着陸した。
アメリカ軍兵士が輸送ヘリから飛び出し、フィアと交戦を開始する。
「よっしゃあ!」
スコットが拳を握った。
「助か―――」
次の瞬間、武装ヘリがヴェノムのミサイルを受けて爆発した。
「………そうでもなさそうだな」
レイがぼそりとつぶやいた。
「急げ!皆を輸送ヘリに乗せろ!」
クロウが叫んだ。
ローグは身を翻すと、リアナ達のいるテントに向かった。
ジェイクもだ。
2人は必死で走った。
テントが見えた。
ジェイクとローグは絶句した。
ちょうど2体のフィアがテントに入ろうとするところだった。
銃声が響いた。
フィアの1体が喉を押さえてよろよろと後ずさり、ばたりと倒れた。
残る1体が怒りの声をあげる。
次の瞬間、ティアがテントから飛び出し、そのフィアの股間に膝をめり込ませた。
「oh……………」
なぜかローグとジェイクが痛そうな声をあげた。
ティアは間髪入れずにフィアを殴り倒し、ハンドガンでとどめをさした。
「ふう………」
ティアは安心して汗を拭いた。
「ティア!」
ティアは自らにかけられた声に振り返った。
ジェイクとローグが駆け寄ってくる。
ティアは笑顔で手を振った。
しかし、彼女は気づかなかった。
倒したはずのフィアが最後の力を振り絞り、レーザー・ガンを持ち上げた事に………。
レーザーの発射音がいくつも鳴り響いた。
ティアの体をいくつものレーザーが貫いた。
ジェイクの悲鳴が響く。
ティアは地面に倒れ込んだ。
自らの回復能力が傷口をふさごうとやっきになっているが、これほどの傷では無理だろう。
「母さん!」
声がした。
リードだ。
ティアは力無く微笑むと、自らの顔を覗き込んだリードの頬を優しく撫でた。
「リード………」
「ティア!」
ジェイクがティアの顔を覗き込んだ。
「ジェイク………」
ティアはできるだけ優しく微笑んだ。
「ごめんなさい。先に逝きます」
ティアはそう言うと目を閉じ、心地よい闇に滑り込んだ。
「…………………そんな………」
ジェイクは冷たくなったティアの手を握りながら、愕然とつぶやいた。
「そんな…………」
リアナがすすり泣いている。
「そんな……」
ジェイクはティアの安らかな死に顔を見た。
次の瞬間、彼は発狂した。
ジェイクは獰猛な唸り声をあげると、素手のままフィアの部隊に向かって駆け出した。
彼に気づいたフィア達がレーザー・ガンを構え、発射した。
しかし、ジェイクは体を貫くいくつものレーザーを無視し、フィア達に突っ込んだ。
ジェイクはフィアを殺戮した。
素手で喉をえぐり、背骨を蹴り砕き、肉を引き裂くその姿は、まさに悪魔だった。
フィア達が恐怖の絶叫をあげ、逃げていく。
しかし、ジェイクは彼らを次々に屠っていった。
断末魔の叫び声がキャンプに響く。
しばらくした後、ジェイクの周りには何十体ものフィアの死体があった。
ジェイクは最後に一声吼えると、血の海に倒れた。
「ジェイク!」
ローグは慌ててジェイクに駆け寄り、脈を見た。
ひどく弱く、乱れている。
「ローグ………」
ジェイクがゆっくり目を開けた。
「すまない………。俺はアメリカに帰れないみたいだ」
「そんなことありません!大丈夫です!」
ローグは叫ぶと、必死に止血しようとした。
ジェイクは憑かれたかのようにしゃべり続けた。
「俺はティアの後を追う。ローグ、リードを、あの子を頼む……………」
「……………………ジェイクさん?」
ローグはジェイクが急に静かになった事に気づいた。
脈をとると、もはや心臓は動いていなかった。
ローグは涙をこらえ、ジェイクの死に顔にこうべを垂れた。
「うわあ!」
ネイオは背後からきたグールに押し倒された。
グールが汚れた口を開け、ネイオを喰らおうと迫る。
ネイオは必死にグールの攻撃をいなしながら、スコットの名を呼んだ。
スコットがネイオの状態に気づき、銃を構える。
しかし、スコットに別のグールが襲いかかった。
スコットはやむなく銃を離し、取っ組み合いを始めた。
ネイオは再び目の前のグールの攻撃をかわそうとやっきになった。
しかし、グールは異常な力でネイオに迫ってくる。
その時、銃声が轟いた。
グールの体がびくんと跳ね、力が抜けた。
「大丈夫か?」
手をさしのべたのは、ハンドガンを手にしたシュナイダーだった。
グリッグは自らの血にまみれ、地面に倒れた。
フィアがレーザー・ガンを構え、彼にとどめをさそうと近づく。
「まさかこんな………最期とは……な」
グリッグは自らに迫るフィアを見つめた。
「お前らには殺されないぜ………」
グリッグはそう言うと拳銃を抜き、自らのこめかみに当て、不敵に笑った。
「じゃあな」
戦場に再び銃声が鳴り響いた。
「グリッグ!」
ドイルは叫んで駆け寄ろうとしたが、後少しで間に合わなかった。
拳銃の銃声が響き、グリッグの体から力が無くなる。
「くそっ!」
ドイルは銃を撃ちまくった。
フィアが銃弾を大量に受け、倒れる。
「ちくしょう………」
ドイルはグリッグの遺体の側に膝まづくと、いたたまれない思いでグリッグの死に顔を見つめた。
と、その時、
「ドイル!」
声と共に銃声が響き、直後にグールがのしかかってきた。
「うわあああああああっ!」
ドイルはグールに噛まれないように必死に抵抗した。
そして気がついた。
このグールはもはや死んでいる。
「ケガは無い?」
カトリーナがドイルを助け起こした。
彼女がグールを撃ち倒したのだ。
「あ、ああ。サンキュー………」
ドイルはなんとか起き上がった。
その直後、近くの武装ヘリがヴェノムに撃墜され、ギュルギュル回転しながら墜ちてきた。
「危ない!」
「きゃあ!」
ドイルはカトリーナを押し倒すとその体の上に覆い被さり、飛び散る火の粉や部品から彼女を庇った。
アメリカ兵達がフィアのレーザーに撃ち殺されているのが見えた。
「早いとこ逃げた方がいいな………」
ドイルはカトリーナを助け起こしながらつぶやいた。
「早く乗れ!」
クロウは遅れてきたドイルとカトリーナに怒鳴った。
ドイルとカトリーナがクロウのいる輸送ヘリの兵士輸送ベイに乗り込んだ。
既にネイオとスコット、そしてUウイルスから完治したシュナイダーが席についている。
「ローグとジェイクは!?」
クロウは心配になって叫んだ。
「さあ」
輸送ヘリの側でレイが辺りを警戒しながら答える。
キャンプは火炎と血と悲鳴に満ちていた。
ヴェノムが圧倒的な戦闘力で次々にアメリカ兵を殺傷していく。
「早く脱出しないと……」
他の輸送ヘリは次々に縦穴から脱出していた。
「ローグはどこだ!?」
クロウはいらいらして叫んだ。
「ここですよ」
声と共に、ローグが戦塵のカーテンの中から現れた。
リアナとリードもいる。
「早く乗れ!」
クロウは催促した。
そして気がついた。
ジェイクはローグと一緒にいたはずだ。
「ローグ、ジェイクは?」
ローグは押し黙っていたが、しばらくして首を横に振った。
クロウは愕然とした。
ようやく会えた友が、死んだのだ。
「………ティアは?」
クロウの問いに、ローグは再び首を横に振った。
「………………そうか」
クロウは必死に涙を悟られまいとしながら、一言そう言った。
「おい、逃げるなら早くしろ!」
突然、レイが叫んだ。
戦塵のカーテンの中から、大量のグールが現れたのだ。
「乗れ!早く!」
クロウが叫んだ。
「待って!」
突然、リアナが身を乗り出した。
「あれは………」
「バーナード教授!?」
ローグが驚いて叫んだ。
確かに、グールの群れの中にあのバーナードとよく似たグールがいた。
それは、知識欲のあまりフィアとコンタクトをとろうとした男の末路だった。
「パパ………」
リアナは寂しそうにつぶやくと、目を閉じ、静かに首を横に振った。
と、その時、戦塵の向こうからヴェノムが猛スピードでこちらに向かってくるのが見えた。
「レイ、早く乗れ!」
クロウは輸送ヘリの扉に手をかけながら叫んだ。
レイは輸送ヘリの中を見た。
クロウ、ローグ、リアナ、リード、ドイル、カトリーナ、シュナイダー、ネイオ、スコット……。
他にもレジスタンスが大勢乗っている。
「…………誰かがあのヴェノムを足止めしなくちゃ、間違いなくみんな死ぬぜ」
レイは微笑みながら言うと、銃の撃鉄を起こした。
クロウが驚愕にうちひしがれた顔をする。
「レイ、お前―――」
「行ってくれ」
レイは再び微笑んだ。
「ここは俺が死守する」
「バカ野郎!そんな事できるか!」
ネイオが叫んだ。
「行くんだ!絶対に逃げ切れよ!」
レイはそう言うと、迫りくるヴェノムに向かって駆け出した。
「レイ!待て!」
クロウはレイの後を追おうとしたが、それをローグが引き留めた。
「……………行きましょう」
ローグは残念そうに言った。
「レイの犠牲を無駄にしてはいけません」
クロウはしばらくしてからようやく頷き、輸送ヘリのパイロットに合図した。
輸送ヘリが徐々に高度をあげていく。
レイの姿は既に戦塵の中に消え失せていた。
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