参院選医師を国会に、見事当選、国民新党,元郵政大臣、じみ庄三郎先生

参院選医師を国会に、見事当選、国民新党,元郵政大臣、じみ庄三郎先生

理念なき郵政民営化に反対する10の理由



じみ庄三郎先生のホームページより



理念なき郵政民営化に反対する10の理由

平成17年6月  衆議院議員 自見庄三郎


 私は小泉政権が進めている郵政事業の民営化に強く反対し、衆議院の本会議でも反対票を投じました。第123代郵政大臣を務め、130年続いた郵政事業を熟知する政治家として理念なき郵政民営化に反対しているのです。以下、私が反対する理由を挙げて説明いたします。



1.国民の多数は民営化に反対

 平成17年3月~4月に全国47都道府県の全県議会が、郵政民営化に反対又は慎重にやるべきだという意見書を総理大臣と関係大臣に提出している。福岡県では平成16年6月に、北九州市では17年6月に議決した。民営化に賛成の県は一つもなかったと言う事実をマスコミも総理大臣も国民に知らせていない。

 共同通信社が平成17年6月18・19日に実施した全国電話世論調査の結果

「民営化を進める必要はない」
「この国会にこだわらず議論をすべきだ」が合わせて72.1%
「この国会で成立させるべきだ」の21.7%を大きく上回った。(平成17年6月21日佐賀新聞)
小泉総理の言う「国民の理解」は得られていないのが本当だ。



2.過疎地・へき地の切捨て

 平成の大合併前、日本には約3,200の市町村があった。郵便局は全国2万4700あり、すべての市町村に郵便局が最低1カ所ある。日本最大の民間銀行・みずほ銀行でも全国に店舗が627(出張所を含む)しかない。
 現在(平成15年度末)、537の町村では、郵便局以外の金融機関がない。過疎地域で郵便局以外に金融機関の役割を務めていた農漁協は平成9年度末から15年度末までに30%も減った。民営化して1兆円の「社会・地域貢献基金」を作ってもその利子は180億円程度に過ぎない。2兆円としてもその倍でしかなく、これで過疎地の赤字局の経費補填をしても焼け石に水である。

 民間企業とは、採算性を重視し、利潤を追求することがその経営の責務であり、赤字経営は許されない。過疎地の郵便局の多くは赤字だから遅かれ早かれ消滅せざるをえない。
国家には損得を度外視してもしなければならないことがある。公共性の高い事業は国家の役割である。義務教育と同様、郵便・貯金・保険のユニバーサルサービス(全国一律、どこでも)は地域社会の保全に対する当然の義務である。特に、過疎地に住む人々への温かい配慮を忘れてはならない。

 アメリカの例でも明らかなように、インターネットとEメールの普及で、商業用や家庭用の郵便物が増加している。アメリカでは、郵便と宅配便などの物流はきちんと「棲み分け」ができている。「棲み分け」の成立が郵便の安定した成長を可能にする。この成長分野の「棲み分け」をどう調整するか、これが政治の役割である。




3.郵便料金は全国ばらばら、九州は200円に値上げ

 民間会社はコストに応じた料金が大原則。距離や扱い量によって料金が変わるのは採算性から言って当然だ。専門家の試算では、民営化されると現在50円の「はがき」の料金は、東京都だと20円に値下げ、過疎地の多い九州では200円に値上げされる。現在、は、郵政3事業の黒字地域東京と東京周辺、大阪と大阪周辺、名古屋と名古屋周辺のみである。50円を維持しようとすると、民営化したイギリスのように結局は巨額(1250億円)の税金を投入して補填しなければならなくなる。

4.郵便局員の給与はすべて「自前」

 郵政事業に携わっている公務員26万人の給与(年間約2.4兆円)は、郵便・貯金・簡易保険の3事業で得た利益で人件費を全て賄っているのだ。他の公務員と違い国民の税金を1円たりとも使っていない。公務員だから税金で給料を支払っているので税金のムダ遣いと思っている人もいるがそれは間違い。だから26万人を非公務員にしても、それは公務員の数を減らすだけで、国庫には何のメリットもない。

5.各国の郵政民営化は失敗ばかり

 民営化したドイツ、イギリス、ニュージーランド等の国では民営化に際し郵便料金は上がっているし、結果としては大失敗に終わっている。
 ドイツでは、全国約3万の郵便局があり、すべて直営であったが、約1万3千に減少し、かつ直営の郵便局はわずか5千局となった。これが社会問題となり、政府は郵便局を1万2千局以下にしてはならない、との政令(ただし国会承認が必要)を作らざるを得なくなった。2分割した郵便事業のドイツポストは、ドイツポストバンク(郵貯事業)が85%の郵便局からの離脱を示唆したため、ドイツポストバンクを子会社化せざるを得なかった。ポストバンクの株式の50%以上を政府が保有していたのでこれができた。民営化を実施したベーチェ元郵政相は私に「分割しても過半数の株式は絶対に政府が保有しておかなければならないよ」と語っていた。ポストは民営化したものの、100グラム以下の郵便に関しては独占権が認められている。
イギリスでは民営化後、ブレア首相は昨年、過疎地の郵便局が廃止され、社会問題となった。このため存続補助のために1250億円の政府支援を決めざるをえなくなった。

 アメリカの郵政公社(U.S.P.S=70万人の国家公務員を抱えている)のラニオン総裁(フォード自動車の元副社長、全米の最高民間経営者賞受賞者)は「広いアメリカのどこへ出すにも同一料金(30円くらい)である郵便はがきの仕組みは絶対に公営でないとできない。民営化が好きなアメリカ国民でも郵便を民営化すべきだという人はいない。大切なことは公営で効率化を図ることだ」と私に語った。また3年前に大統領の下の諮問委員会は「郵便は引き続き公営、公務員でやる事が米国にとって最適である」との結論を出した。またフランスでは、現在も公法人形態を堅持している。

6.「郵政公社」でやってみようじゃないか

 公社発足後、常勤職員が2万人減っているなど人員削減の効果は上がり、合理化・効率化も進んでいる。
公社は民間のように税金を納めていないと言われているが、必要な資本を確保した後は50%を国に納める制度になっている。法人税の約40%より高い納付金(一種の税金)を支払うようになっている。

 公社発足後まだ2年。4年の第一期中期経営計画の半分が終わったところだ。経営状態も一定の成果を挙げている。最初の一期も終わっていない現在、その経緯も見ないで、経営形態を変えてしまう民営化を急ぐのはあまりにも危険だ。郵便制度は明治4年創業以来130年間、国の直営事業だった歴史を持つ。時代の要請に合わせて作られた郵政公社のあり方をもっと長い目で見ることが必要だ。
郵便、簡易保険、貯金の郵政3事業のうち利益の9割以上は郵便貯金で得ている。三つの事業をばらばらにすれば、郵便事業は多額の支出を必要とし、税金による補填が必要だ。郵政公社の3事業一体の経営は特に郵便事業を維持する上で絶対に必要である。

7.ムダ遣い資金はすでに是正

 345兆円(平成16年度末)にのぼる郵貯・簡保資金が財政投融資に流れ、これが放漫運営・ムダ遣いされているという批判がある。しかし、特殊法人などに融資された財投資金が戻ってこない割合は2~4%と言われている。これらは政策の「コスト」とも言うべきで、財投のすべてが焦げついたわけでは決してないのだ。
しかも、4年前の平成13年に、郵貯の全額預託義務を廃止し、財投債(国債の一種)を発行して金融市場から一括調達する財投改革で是正されている。これまで財投に預託された資金は平成19年までに返還されることになっており、順調に実行されている。       (参考資料1)

 また、財投を受けていた特殊法人は財投機関債で直接金融市場から調達できるようになった。その結果、財投融資額はすでにピーク時から6割削減されている。郵貯・簡保資金が財政赤字を生み出している、という議論があるが、財政赤字の補填は国債を発行すればよいわけで、財投債を郵貯が買わなくても財政赤字自体が減るわけではない。「火事が起こるのは消防自動車があるからで、消防自動車をなくせば火事がなくなる」と言うに等しい。

 ドイツでは個人の預貯金の約半分は公的金融機関に預けられている。その資金は官民を問わず貸し付けられており、きわめて経済は好調で、世界一の輸出国となった。個人の預貯金を経済の活性化にどう役立てるかが大切である。
わが国の発行国債の4分の1は郵貯・簡保資金で買われている。わが国の長期金利が1%上昇すれば、国債の利払いに1兆5千億円(18年度)の追加的な財政支出が必要。郵貯は国債の安定発行にも大きな役割を果たしている。民営化するとこの安定が保たれなくなる危険性もある。     (参考資料2)

8.民営化を求めるアメリカは「国営堅持」

 会社の株を買い占めれば、その会社の支配権を握れる。財政赤字に悩む米国、米国金融資本は分割民営化された各社の株式を買い、経営権を握ることで、郵貯・簡保資金345兆円をこの赤字の解消に充てることを狙っているのだ。国民の汗の結晶である345兆円の郵貯・簡保資金を結果として外資に売渡すことになる。外資の融資を受けたライブドアによる放送会社の株買占め事件は記憶に新しい。日本政府の担当者は民営化法案作成のために17回も米国と交渉している。民営化は国民の資産を米国による日本買占め資金に回す結果となるのだ。        (参考資料3)  

 アメリカでは2003年に財界人、学者、福祉活動家らがメンバーとなった「米国郵便庁(USPS)に関する大統領委員会」が大統領の諮問に答えて、報告書を出した。それによると、「郵便ネットワークの改革」について「ユニバーサルサービスの維持に必要な郵便局は、たとえ大幅な赤字であっても、閉鎖すべきでない」と明確に「郵便局によるユニバーサルサービスの維持」を位置づけた。
 米国は身勝手だ。国内では「ユニバーサルサービスの維持」を守りながら、わが国には「民営化」を迫る。郵貯・簡保と他業務(郵便)の資本、会計の完全分離を求める。郵便業務だけで採算が合うはずがない。結局、赤字局=へき地局、都市の中小局の切捨てにつながる。米国の内外政策の使い分けを認めるわけには行かない。いままで日本政府はこの身勝手な要求を拒否し続けてきたのだ。

9.「郵政民営化」は公約じゃなかった

 政府や多くのメディアは「郵政民営化は直近の衆院選、参院選での公約だ。だから民営化を実現しなければ公約違反になる」と説明している。 
  しかし、これは間違っている。

 衆院選での公約を説明したマニフェスト「小泉改革宣言―自民党選挙公約2003」では郵政事業改革の項目で「郵政事業を2007年4月から民営化するとの政府の基本方針を踏まえ、日本郵政公社の経営改革の状況を見つつ、国民的論議を行い、2004年秋頃までに結論を得る」とある。

 「基本方針を踏まえ」とは議論の足がかりにすることで、その通りになることではない。「国民的論議を行った後に民営化するかどうかの結論を出す」ことなのだ。

 これは、「民営化」について意見がまとまらず、どちらとも取れるようにした「玉虫色」の表現だった。現に当時の額賀政調会長は「論議の結果、イエスもノーもありうる」と発言している。

 郵政公社発足後わずか2年、国民も「郵政民営化は急務ではない」と考えている状況で「国民的論議」を尽くしたとはとてもいえない。政府は「玉虫色」の一方だけを強弁しているのだ。


10.安全・安心な金融機関があってもいいじゃないか

 自分の貯金を株や投資で増やすことを望まず、ハイリスク・ハイリターンよりローリスク・ローリターン、安心・安全な金融機関に預けておきたい人々にとって、国家の後ろ盾がある郵便局、郵便貯金の存在は必要な事だ。現に国民の85%が郵貯を、55%が簡保を利用している。
 130年間の郵政事業の歴史を1日で崩してしまう事はできるが、一度崩したものは二度と元には戻らない。

 民間の企業を中心とする市場経済・市場主義は1929年の世界大恐慌を見ても明らかなように大失敗を起こす事がありうる。わが国でも「失われた10年」間の土地・株式の暴落で、1千兆円もの国富が失われたと言われている。民間企業だけに任せておけば、時々取りかえしのつかない大失敗を犯すものである。「市場の失敗」をできるだけカバーするためには、国が関与する公社の郵便局があることが必要である。

 郵貯や簡保が膨らんだのは、民間の金融機関がバブルを加速させたあげくに崩壊したからにほかならない。この間に国民の不安を和らげたのは郵貯・簡保だった。

 要するに利用する国民にとって民営化後の国々の例を見ても料金が高くなるか、税金による補填が増えるだけでなんら良い点がない。国民にとって何の利益もない民営化を推し進めるのは小泉総理の個人的思い入れのみである。

 政治とは長い歴史や物事の成り立ち経緯という縦糸と国内・国外を含めた国際情勢という横糸を巧みに織り上げた布のようなものだ。深い洞察と歴史観、哲学が必要なまことに理性的で高尚な仕事であろう。ただ勘に頼ってのみ行う民営化は日本社会の現状を無視した、拙速、先見性なき悪政である。私は理念なき郵政民営化に強く反対する。

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: