ジョナサンズ・ウェイク

ジョナサンズ・ウェイク

残像に口紅を(筒井康隆)



この作品の1章では、すでに「あ」が引かれている。「あ」が使えなくなると、「あなた」も「愛」もなくなる。
章が進むごとにどんどん言葉が消滅していく世界。第2部では、なんとすでに28文字が消えている。つまりその文字は使えないのだ。50文字が消えた第3部の迫力は文字通り言葉では書き表せない。

筒井康隆の実験小説には、度々うならされたものだが、この作品はとくに圧巻だった。この作品の凄い点は、単に文字がなくなるというだけでなく、言葉のなくなる世界を哀しく感動的に書き上げたという点だ。まるで奇跡のような1冊。

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