13. Pasatiempo GC



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中年男の旅、最後のラウンドはカリフォルニア州サンタクルーズにある
パサティエンポゴルフクラブ



パサティエンポは1929年に開場した歴史のあるゴルフクラブでオーガスタをボビージョーンズと
共にデザインしたアリスター・マッケンジーがデザインしたコースだ


より正確に記すならば、パサティエンポをラウンドしたボビージョーンズが、そのコースの
素晴らしさに感銘を受けアリスター・マッケンジーに自分の夢のコース、すなわちオーガスタ
ナショナルの設計を依頼したのだった


マッケンジーの作品はオーガスタやパサティエンポにとどまらず、ゴルフマガジン社2007年版の
世界のトップ100のナンバー2にランクするサイプレス・ポイントも彼の手によるものだし、
遠くはなれたオーストラリアのトップコースであるロイヤル・メルボルンも彼の手によるものだ


それだけではなく、このトップ100にはなんと9つもの彼のデザインによるコースがランク
されているのだから、彼がいかに素晴らしい設計家であったかが容易に想像いただけるだろう




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6番ホールのティグラウンド脇に建つマッケンジーの家

マッケンジーはそれらのコースの中でもパサティエンポを特に愛し、故郷のイングランドを
離れ、この地を終の棲家と決めて6番ホール脇に居を構え、自分が納得するまで手を入れ
続けたという

この事実を知ってから尚のこと、パサティエンポを回ってみたいと思っていた






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1番ホールのティに立ち、グリーンを見れば、遥か向こうには海がうっすらと見える




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早朝のスタート、朝日の中をバンカーが果敢にグリーンを狙う




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あたりを見回せば画一的な住宅が広がる新興のコースとは違い広々とした敷地に多くの
歳月をかけてコースと調和する住宅がぽつんぽつんと建っていた

こんなところで余生を過ごしたい



この日は秋のコースメンテナンスの最中で、コース中がエアレーションが行われグリーンは
砂が浮いて白くなっていた


それでもこのコースが自分の懐にまで飛び込んでくる感覚は一体どうしたことだろう




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成長した木々の陰がフェアウェイに落ちていた

どのホールもオーガスタのように美しいバンカーと大きくうねったグリーンを持っている

いや、このコースがオーガスタに似ているのではなく、オーガスタがこのコースの
エッセンスを元に設計されたのだ




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こんなに美しいバンカーなら何度つかまっても良いと思える

曲線の美しさに思わず見とれ、自分がゴルフをしていることを忘れてしまう




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9番ホールグリーン左サイドで待ち構えるバンカーに入れてしまった

なんとかグリーンに乗せるだけで精一杯だった






このコースをラウンドして感じたことは、一つとしてつまらないホールがなく、それぞれ特徴が
あり、同時に重機を用いたコース設営時代前の設計だけに自然の地形との調和が取れて
いる

なおかつルーティングも素晴らしいこのコースは、いったいどれだけのポテンシャルを持っている
のだろうか?




この日同伴してくれた同僚のディーンはハンディキャップ2.8の凄腕のゴルファーでアメリカの
トップ100コースは過去15年掛けて制覇し、世界のトップ100もほぼ90%を回ったという
生粋のゴルフ◎◎だった



彼の説明によればこのコースはマッケンジーの死後に多くの木を植え、またバンカーも潰して
しまったそうだ


開設当時のコースは木もまばらで、インランド(内陸)リンクスタイプのコースだったそうだが、
植えた木がやがて成長し以前の面影をなくしコースの評価も次第に落ちてしまった





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近年の世界的な傾向である、ゴルフ場をオリジナルの状態に戻す流れに沿ってバンカーを
復活させ、大きくなりすぎた木を切り、当時のレイアウトに戻す変更を行った結果、急速に
その評価を取り戻している




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マッケンジーが最も愛したという16番ホールは唯一といってよいブラインドのホールで
200Y打てばフェアウェイの丘の頂にボールを運ぶことができる

そこから160Y先のモンスターグリーンを臨む





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このモンスターグリーンが曲者で、奥行きが50Yもある3段グリーンで、奥と手前では優に
人の背丈を越える段差がある

試しに一番奥から最も低いところに切られているピンに向かってパットをしてみたが、どんなに
デリケートに打ってもボールはグリーンをこぼれてラフに飛び込んだ


オーガスタで御馴染みの複雑で鏡のように速いグリーンをこのコースでも楽しめるらしいが、
今回のラウンドでは砂が大量に入っていてそれは敵わなかった

とはいえ、それでこの状態なのだからグリーンがベストコンディションであったなら、いったい
いくつの3パット、いや4パットを打っただろうか?









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この日もjunhiroのショットは安定することなく、ゴルフの内容は酷いものだったが、
TV中継で見るオーガスタを思い起こさせるデザインを随所に見ては、その美しさと周囲との
調和に感動していた




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最終の18番ホールは150Y強の谷を越えるパー3

1枚前の写真も同じホールだが、ちょっとだけアングルを変えれば、こんなに美しい姿を見る
ことができる

同時に美しいものにはトゲがあるとは良く言ったものだ





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偉大な設計家が作ったコースは偉大なゴルファーも輩出していた

ジュリ・インクスターはこのゴルフ場のドリンクの売り子からスタートし、ゴルフの腕を磨き、
やがて全米女子アマ3連覇の偉業を達成し、プロに転向すると7つのメジャーと31もの
LPGAでの勝利をもぎ取った






今回のアメリカ西海岸の旅で回った6つのコースの中で最も印象的であり、再訪したいと最も強く
思ったのはこのパサティエンポだった



昨年7月にアイルランドを巡ったリンクスツアーで、junhiroが最も気に入った ラヒンチGC も、
セント・アンドリュースで有名なオールド・トム・モリスが設計した後、マッケンジーが手を入れた
ものだった


彼のゴルフ場に込めた何かがjunhiroの琴線に触れるのかもしれない




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昼過ぎにラウンドを終えるとマッケンジーの名を冠したグリルでダークビールを飲みながら
昼食を摂った







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ラウンド後はサンフランシスコのダウンタウンを目指して北上を続け、バンカーの思い出の
留学先であるサンフランシスコ大学のキャンパスへと立ち寄った





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ゴールデンゲートブリッジを見下ろす展望スポットへとドライブ





夜は以前にゴルさんに連れて行ってもらったガーリックの効いたうまいカニを食わせる店に3人で出かけた


ワイン通が注文してくれた白ワインを楽しみながらカニにむしゃぶりつき、夕日で金色に輝く
ダウンタウンの高層ビルが、やがて漆黒に浮かび上がるさまを眺め、仕事の話、人生観の話、
4つのコースについての感想などを思いつくままにいつ終るともなく話し続け、夜は更けて
いった


そしてこの夜の豪華なディナーはjunhiroのツアーのコーディネーションと運転の労に対して
ワイン通とバンカーがご馳走してくれた



もちろんそうした気持ちは嬉しかったが、何よりも嬉しかったのは二人が性格の全く違う4つの
コースを楽しみ、ゴルフの難しさや、素晴らしさに触れ、またここに帰ってきたいと思ってくれた
ことだった








1週間の休暇中に丘陵のブドウ畑に広がるポピーリッジ、雄大なモントレー湾の景色を眺めながら
進むペブルビーチ、同じく海に面しながらも多様な植物体系とタフなコースが同時に楽しめる
リンクスコースのスパニッシュベイ、そして偉大な設計家がデザインした静謐あるいは秘宝とも
言える、パサティエンポとタイプがそれぞれ大きく異なるゴルフ場を友と共に歩いた


色の濃いビールを昼間から飲みほし、海沿いをドライブし、旨い料理を喰う中年男の旅も
終ろうとしていた



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