人は互いに敬愛し、施しあわなければならないのに、
わずかな利害のために、互いに憎み争うことだけをしている。
しかも、争う気持ちがほんのわずかでも、時の経過に従って
ますます大きく激しくなり、大きな恨みになることを知らない。
この世の争いは、互いに害(そこ)ないあっても、
すぐに破滅に至ることはないけれども、毒を含み、
怒りが積み重なり、憤(いきどう)りを心にしっかり
刻みつけてしまい、生をかえ、死をかえて、
互いに傷つけあうようになる。
人はこの愛欲の世界に、ひとり生まれ、ひとり死ぬ。
未来の報いは代わって受けてくれるものがなく、
おのれひとりでそれに当たらなければならない。
善と悪とはそれぞれその報いを異にし、善は幸いを、
悪は災いをもたらし、動かすことのできない道理によって定まっている。
しかも、それぞれが、おのれの行為に対する責任をにない、
報いの定まっているところへ、ひとり赴く。

