かごむすめ

かごむすめ

耳のこと


まだNICUに入院中でした。

入院中の子は、いろいろな検査を受けます。
それでムスコもABRを受けました。
(薬で眠らせ、音を聞かせて脳の反応を頭につけた電極から記録する検査です)

検査のあった日、面会時間に病棟を訪れると、
看護士さんが、ムスコがABRで反応しなかったことを教えてくれました。
「でも、小さい赤ちゃんは反応しないことがありますから、まだ分かりません」と
その春ナースになったばかりの彼女は言っていましたが、
ツレアイも私も特にショックを受けてはおらず、淡々と受け止めていました。

生後4か月が過ぎて、退院が決まった頃、またABRを受けました。
やはり反応はありませんでした。
NICUの担当医師から、病院内の耳鼻科に話を聞きに行くように言われました。

翌日、耳鼻科の外来に行きました。
待合室は狭く、診察室もベニヤのような薄い板で仕切られただけで、
これが本当に大病院の耳鼻科なのかと疑うような粗末さでした。
しばらくして呼ばれた”診察室”で、医師は「今日は子どもの難聴の担当がいないので、明日また来てください」と言いました。
???
小児科では、今日行くようにと言われたのに?

また翌日、耳鼻科外来へ行きました。
居心地の悪い待ち合いから、ようやく呼ばれたと思って入った診察室で、
医師はカルテを斜め読みして、
「聞こえてないみたいですね。ABRをしましょう」と言うのです。
話をしていても、会話が嚼み合いません。
ようやく分かったのは、先日ABRをしたばかりだということを
医師が読み落としていたことでした。
また2ヶ月後に検査の予約を入れ、外来を出ました。

その日の午後、NICUに面会に行った時に、
ムスコの担当ナースに耳鼻科でのいきさつを話し、
「あそこではお世話になりたくありません」と言いました。

話はすぐにNICUの医師に伝わり、
「同じ病院の医師として、大変申し訳ない」という言葉とともに、
他病院への紹介状を書いてくれました。

行く事にしたのは、子ども専門の総合病院でした。
電話で予約を入れ、一ヶ月後に検査を受けに行きました。

リニューアルしたばかりのその病院は、明るくて、清潔で、子どものための設備が整い、
私はそれだけで嬉しかったです。
ABRの検査官(若い女性)は、ムスコの着ていた服をほめてくれました。

ABRの結果を持って、耳鼻科の外来へ行くと、老齢の女医が、
「聞こえてませんね。身体障害者手帳の手続きをしましょう」と言うので、
私は驚き、事の成り行きにやっとついていったという感じでした。

耳が聞こえないことは受け入れていましたが、
具体的な事は何も考えていなかったのです。

ただ、今から考えれば、
どのようにムスコを見守って行くのかを少しでも話してくれたあとに
障害者手帳のことを言い出してくれたほうが親切だったように思います。
実際、その後、ろう学校で一緒になったママが、
その女医の言い様に打ちのめされてしまい、立ち直れなかったと話してくれました。

とにかく、役所に行って必要書類を提出し、障害者手帳を申請しました。

ムスコは、補聴器をつける事になりました。


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