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『竜馬は往った』連載その2



(象徴、象徴が神秘的であれば、あるだけ波紋つまりリンクの数は増えていく)


松浦氏が帰社し、私はその戦利品を見た。
「時代メンコ」に「ポンポンお手玉」私もかつて男の子であったため、
興味はメンコにいく、メンコの表面には、日本昔話で活躍したヒーローの絵が、昔見た紙芝居の絵のタッチで描かれていた。

私には、小学校二年生を筆頭に三人の息子がいるが、一昨年から実に三億枚のセールスを記録した「ムシキングカード」や、菓子パンについている付録のカードで、そのパンの売上に最も貢献している「ポケモンカード」を毎日息子達から見せられている立場からすると、その「時代メンコ」に描かれたかつてのヒーロー達の居場所は、狭い我が家にはないなと感じた。
そんなヒーロー達がパッケージされた、「時代メンコ」の封を開け、しばし童心に戻り、メンコ遊びに興じること数分、いっこうにメンコがひっくり返らない。
子どもの頃は、面白いようにひっくり返ったのに、もうどんどんムキニなる、が、自分の技量を棚に上げ、その名刺よりひと回り小さいメンコの大きさに問題があるのではないか、とか、紙の厚みが薄いのではないのかと、ひっくり返らないことをメンコのせいにした。
とうとう、メンコがひっくり返らないのであきらめ、下に置いたメンコを拾いあげた。
裏を見ると、じゃんけんのグー・チョキ・パーの絵柄と、百点・八十点という点数が印字されていた。
「そうか、メンコが裏返った瞬間にじゃんけんと点数勝負ができるんだな、工夫はおもしろいけど、それだけで、ムシキングに勝てるかな」と、ひとり言のような感想をつぶやいた。
そして、メンコを見ながら、松浦氏に、
「もし、このメンコの絵柄が『坂の上の雲』の日露開戦の登場人物シリーズであったら、乃木大将は、間違いなく点数低いでしょうね、世間の評価は高いけど、司馬の本を読めば、その点数の低さに納得ができる。そんな司馬遼太郎メンコがあったら、私なんかは、面白半分で買いますけどね」と、にわか司馬ファンの私が、生粋の司馬ファンである松浦氏に言うと、彼は
「そんなカードゲームがあったら、歴史の見方も変わるかもしれませんね、それ面白いですよ」と云う話になった。

 四十二歳にして、初めて司馬遼太郎の本を読んだことは、前に触れたが、土方歳三にしろ、明石屋万吉にしろ、正岡子規にしろ、全く眼中にない存在であったし、受験勉強において、特に必要な人物でもなかった。
 現に興味が無くとも、生存してこれたわけだが、土方に「組織とは」と、云うことを学び、万吉に「社会福祉」を学び、子規に「仕事とは何か」を学んだ。
ありふれた表現をすれば「目からウロコ」の感である。
どうして中学校の図書室に並べられていた司馬遼太郎の作品を手にしなかったのであろう。
大学卒業時点、あまりに有名であった司馬遼太郎という作家に興味を持てなかったのか、悔恨と妙な焦燥感が私の心を侵食した。

今日はここまで

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