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アステくん

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Aug 2, 2008

「代魂　～ダイコン～　」

(27)

カテゴリ：小説

命・・・。

それは肉体という入れ物に入った魂の事である。

人は魂が肉体に入っていてこそ人として機能する。

その魂が肉体を抜け他の人と入れ替わったら・・・

もしも入れ代われるとしたのならば・・・

魂が入れ代わることができたのならば・・・

大田　三郎　81歳

大手企業の創設者として人生を歩み世間では成功者と呼ばれている。

妻とは死別。

昔から持つ持病のため3年前から入退院を繰り返す。

そして今日未明、容態が急変。

その生涯を終えようとしていた･･･

「お父さん。頑張って！」

三郎の周りには多くの人だかりができていた。

「会長！」

スーツを着た人間も多く見られる。

「おじいちゃん！」

孫であろうか。4.5歳の子供の姿も見える。

その人たちの声は届いているのだろうか。

まさに臨死状態の年老いた耳に届いているのであろうか・・・。

なぜならもうすでに彼の魂は肉体を離れてしまっているからである。

入れ物だった肉体がその活動を止めた時、死が訪れる・・・。

彼の魂は闇の中にいた。

漆黒の闇・・・ここがどこか、何処に行けば良いのか。

それどころか方向すらわからない。

彼はその場に座り込んだ。

静寂が包み込む。

何も見えない、何も聴こえない。

その中で彼は自分の人生を思い返していた。

幼少期は貧乏で苦労したこと。

借金取りから逃げまどう日々。

両親の死、妹の死。

ようやく得た成功に可愛い妻。

4人の子に恵まれ健やかな成長を喜ぶ親の幸せ。

その反面、会社を大きくするために行ってきた汚れた過去。

結果、最後は成功者として迎える死。

妻に先立たれた日は泣いた事。

妻以外の女を抱いたこともある。

愛人もいた。

隠し子の存在も妻は許してくれた。

たとえ世間から成功者と言われても父親としてどうだったであろうか。

妻に先立たれたあとも子供たちは誰も一緒に住んでくれない。

会社は長男に継がせたものの今は実権は何もない。

かつての部下も長男に擦り寄ってこちらには見向きもしない。

こんな人生でよかったのだろうか。

死の間際になって生まれた疑問。

もう終わりなんだ。

そう思うと急に心残りが生まれてくる。

あれもしたい、これもしたい。

でも本当にしたいことは・・・。

三郎を包む漆黒の闇に急に一筋の光が射した。

目がくらむ。

その光は大きくなり中から人影がでてきた。

「誰だ」

ようやく目が慣れてきた時その人影の姿がはっきりわかった。

少女である。

歳はおそらく成人していないだろう。

もしかしたら高校生位かも知れない。

その少女が三郎に近づいてきた。

「あなたは最後に何がしたいの？」

三郎はあっけに取られて言葉が出てこなかった。

「今から3時間と35分後の17時36分にあなたは死ぬわ」

少女は自分の時計に目をやりそう言った。

「そうか、やっぱりわしは死ぬのか・・・」

改めて宣告を受け三郎はショックを受けた。

少女は三郎に近づき力強い声で語りかけた。

「でもまだ死んでない。あなたの魂はまだこの世にあるわ」

「私の体を使いなさい。あなたの想いをこの世に残さないために」

この少女は何を言っているんだ？

三郎は事態が飲み込めずにあっけにとられた。

『わしの想い・・・』

少女は光を指差した。

「あの光を通れば私の体に入れます。入っていられる時間は体が死ぬまでよ」

「急いで。時間がないわ」

三郎は戸惑いの中、少女の目を見た。

長年人の上に立ってきた経験だろうか。

嘘はついてないと思えた。

知らず知らずに光のほうに近づいていく。

『どうせ死ぬんじゃ』

少女はそんな三郎を見つめながらその場を動かない。

「もし時間までに戻らなかったらどうなるんじゃ？」

その問いに少女は眉一つ動かさずに淡々と答えた。

「私もあなたも魂が消滅する。でも大丈夫。あなたは帰ってくるわ」

少女が軽く笑みを見せた。その笑みに三郎は決心した。

今の状況が良く理解できない。

嘘か本当かもわからない。

でも自分はもうじき死ぬらしい。

ならば目の前の少女を信じてみよう。

最後の望みが叶えられるなら！

三郎は一つ大きく深呼吸をし、光に飛び込んでいった。

「いってらっしゃい。あなたの体が死ぬ一秒前までね・・・」

光に包まれて三郎は目がくらんだ。

今まで味わったことのない感覚だった。

浮遊感に虚脱感。

そして、何かの壁に突き当たり三郎は止まった。

目を開けると今までの闇とは違い、見慣れた光景が広がっていた。

多くの患者と看護士が行き来する通路。

入院していた病院の待合室だった。

三郎は慌てて立ち上がりあたりを見渡す。

そして自分の下半身に違和感を感じた。

目をやるとスカートをはいているではないか。

手を顔にやる。

シワがない。柔らかい手に若さに満ちた顔。

胸に手を当ててみる。

そこには小ぶりながら確かに女性の胸があった。

急いで男性用トイレに行き鏡をみた。

そこには先ほどの闇で出会った少女の顔があった。

『あれは夢じゃない。本当だったのだ』

信じられない気持ちでいっぱいになった。

しかし、先ほどの事が本当ならば死が訪れるのも事実。

「急がねば！」

突然男性用トイレに入ってきた少女に驚いてる男性を突き飛ばし慌ててトイレを飛び出した。

病院を飛び出してタクシー乗り場に急ぐ。

幸いにも一台のタクシーが止まっていた。

しかし一人の中年男性がタクシーに乗ろうとしている。

三郎はその男を突き飛ばした。

そのままの勢いでタクシーに乗り込む。

運転手も驚いた感じでバックミラーを覗き込んでいる。

「○×の3-1-5まで頼む」

驚きのあまりかなかなかタクシーは発車しなかった。

その間に突き飛ばされた男性が立ち上がって文句を言ってくる。

「おい、出て来い！」

『面倒じゃのぉ』

そのまま無視をし運転手に発射を促す。

しかし車は発車しない。

「お客さん困ります。トラブルは勘弁ですよ・・・」

そんな運転手の態度に苛立ちがつのる。

「料金は倍払う。不服なら何倍でもいい。さっさと行ってくれ」

その言葉に運転手は黙って前を向いた。

そして文句を言い続ける男を無視して車は走り出した。

『全く、貴重な時間を無駄にした・・・』

車が到着するまでしばらく時間があった。

その間今一度気持ちを落ち着かせてよく考えた。

『あの少女の言葉は本当だった。本当に魂が入れ代わった』

『信じられんが・・・とりあえず今はこの体を利用させてもらうしかないか』

色々考えているうちに車は目的地に着いた。

そこは三郎の実家だった。

周りの家に比べてはるかに古くて大きい。

木造の平屋建て。

大会社の社長の家とはとても思えなかった。

「着きましたよ。料金は３万になります」

『メーターは2600円ではないか。10倍とは欲深い』

しかし約束は約束と払おうとした時三郎は気付いた。

この少女がそんな大金を持っているのだろうか。

『多分・・・もってないな』

そう思った三郎は運転手にこう言った。

「家に行って取ってくる。少し待っていてくれ」

そういって運転手の返事を聞く前に車を飛び出していった。

『タクシーの時計は14時30分だったな。あと3時間か』

家に入ろうとしたときすでに誰かが家の中にいることに気付いた。

『誰じゃ？』

戸を開けずに裏に回り家の中を覗いてみた。

「まったく親父のやつ。会社の株やら財産やら何処に隠した」

何人かのスーツ姿の男たちがタンスやら押入れやらを漁っていた。

「弁護士に聞いてもわからないという。たくっ、大金払ってそんな答えあるか？」

「親父が死んじまったらあの弁護士は首だな。」

部屋の真ん中に立って愚痴っているのは三郎の長男の博だった。

『あいつ・・・実の父親が臨終の時に財産探しとは・・・育て方間違えたな』

「しかし兄さん、病院へは行かなくて良いのかい？」

そうやって話しかけたのは愛人の子の浩介だった。

「いいんだよ。死んじまう奴より金・・・だろ？」

長男が浩介を愛人の子と蔑んで扱き使っていた事は知っていた。

しかし父の臨終に財産探しの手伝いをさせるほどとは・・・。

三郎は悲しくなった。

自分の子が自分の死をどうでもいいと言い、金の亡者となっているとは。

必死に生きた人生の最後の日に身内のこんな姿を見るとは。

こんなことならば少女の誘いに乗らずあのまま死んでいたほうが良かったかもしれない。

しかしいくら悲しくなっても少女の体は涙を流さない。

所詮は借り物の体というわけか。

もう身内や金のことはどうでもいい。

最初も目的を達成するため三郎は近くの納屋からスコップを取り出した。

そしてスコップを担ぎ庭の真ん中にある痩せた木に向かう。

三郎はその木を目の前にしてしばし目を閉じた。

そして，おもむろにその木の根元を掘り始めた。

木を傷つけないよう優しく，丁寧に掘り続ける。

根っこもできるだけ傷つけないように・・・。

木がもうぐらつく位掘った時，博が三郎に気付き庭に出てきた。

「おい！何してるんだ。お前誰だ？」

三郎はその問いに答えずに掘り続ける。

「何だと聞いてるんだ！警察呼ぶぞ！」

その問いにも答えずにいると博がスコップを取り上げた。

「お前何なんだ！いい加減に・・・」

三郎の，といっても少女の体であるがコブシが博の顔面にめり込んだ。

博が後ろに仰け反る。

鼻からは血が出てきた。

「あ、あ、あ・・・」

言葉にならない声を出しながら博は震えている。

「ふん、お前にやる遺産はこれで十分じゃ」

地面に落ちているスコップを拾い作業を再開した。

外の異変に気付いた浩介が慌てて外に出てきた。

三郎はそれに気付き浩介を見た。

「とう・・・さん？」

三郎は驚いた。

浩介が少女の姿を見て父と当てたからである。

「浩介・・・お前なんで・・・」

「やっぱり・・・なぜかわかるんだ。でもなんで・・・」

疑問に思うのは仕方ない。

実の父が年端もいかない少女の格好で現れたのだから。

「上手く説明できんが・・・この木を植え替えるために少しだけこの体を借りておるんじゃ」

もう木は横に倒れてしまっている。

三郎は掘るのを止め，その木を抱きしめた。

「この木には綺麗な花を咲かせてもらいたいんじゃ」

そのままタクシーのほうに向かう三郎に浩介はついて行った。

タクシーにつくと待ちくたびれた運転手がタバコを吸っていた。

木を担いで戻ってきた姿に驚き、慌てて外にでてきた。

「え？それ・・・え？」

混乱する運転手を気にも留めず三郎はそのまま車に乗り込もうとした。

「早くドアを開けてくれ！」

しかし、土つきの木を抱いた客を乗せるのに躊躇しない運転者はいないだろう。

なかなかドアは開けてもらえなかった。

「礼に100万くれてやるから！」

その言葉にようやく車のドアは開いた。

乗り込もうとするが木が邪魔してなかなか上手くいかない。

その姿を見かねて浩介が手を貸す。

「よくわからないけど手伝うよ」

浩介の手助けもあり，ようやく車に乗ることができた。

「近くの××公園まで」

タクシーは木を抱いた少女とその息子を乗せながら動き出した・・・

続く

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Last updated Aug 5, 2008 11:58:09 PM
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■コメント

性感エステってもったいないよね

★ みゆきち★ さん

ムラムラってきたら性感エステに通ってたけど、
今思えばもったいなかったなぁ…って☆

今は男を買って思い通りのS E X 楽しんでるよっ♪
4 万で男が買えるなんて良い時代だねっ♪
http://fe7a4.net/n-doll2_h/666t0p5 (Aug 6, 2008 12:50:27 AM)

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