CARA  SONRIENTE

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浮気宣言~中丸雄一~



実家から戻ってくるや否や、
「今日、たつよし記念日やから!」と、
エイトのDVDを2本抱えて宣言された。


亮ちゃんの彼女に会ってきたんだろう、普段はほとんど出ない関西弁が言葉の端々に戻ってきてる。

どうやら、元より『別バラ』と言って気にしていたたっちょんに、本気でハマった模様。

当時は、赤西の事で、泣いてばっかりだったから、少しでも由美子が笑ってくれるならいいかと多目にみていた訳だけど。



俺にだって、我慢の限界ってもんがある。


テレビで流れているのは、エイトのライブDVD。
枕元にはオオクマ。

キッチンに立って、ひたすら根菜を切る彼女の背中に問い掛けた。


「ねぇ」

トントントンってリズミカルな音に混じって、彼女の声。

「なあに」

「何で、ここんとこずっとエイト流してるの。浮気って、そんな堂々とするもんじゃないからね」


精一杯の嫌味。


「何でだろうねー」

嫌味にも、うっすら笑った横顔。
誤魔化してるつもりかな。そんなに余裕?
俺、そんなに器でかくないって。



「いやいや、俺いるじゃん。まぁここで俺らのDVD流されても微妙だけどさ」



「…何でだろうね」



あれ。
さっきまでの笑顔が消えた。
言い過ぎたかな。
口調強すぎたかな。



トントントンってリズミカルな音に混じって、鼻をすする音。

「…な、いてる?」


さっきまでのリズミカルな音が止まった。



「…玉ねぎだよ。玉ねぎが、目にしみただけ」



強がりを言う彼女の背中から、ぐっと抱き寄せた。
肩越しに見えるまな板の上には、もちろん玉ねぎなんか乗ってない。



「ごめん。言い過ぎた?…けど、思ってる事、ちゃんと伝えて?俺の事、嫌いになったなら、それはそれで、ちゃんとお前の口から聞きたい」



言い終わるか終わらないか、ぐらいで彼女が口を開いた。

「そんなんじゃない」

「じゃあ、あのクマなに?ずっとたっちょんたっちょん言ってんじゃん。もう俺の事なんてどうでもいいんじゃねーの」


「…違うよ。そんなんじゃない」

彼女を抱きしめる俺の腕に、大きな滴が落ち始めた。






「…あたしがすっごい不安なの、分かる?」



意外な言葉。
不安なのは俺の方だよ。
アンハッピーな結末がそこにあると察して、胸の辺りがキュッとなって。
口をつぐんで次の言葉を待った。






「今、KAT-TUNが嫌い」





「はあっ?」



予想外に予想外な言葉に、頭ん中いっぱい。
ガードが下がった瞬間にアッパー喰らった感じ。
何それ。意味分かんねー。
あーそうかよ。
俺だけじゃねーとか、もう末期じゃん。



悲しくて、悔しくて、どんな言葉を口にしていいか分からない俺に、次のパンチが飛んでくる。




「あたし、KAT-TUN結成してから、6人の事をこんなに不安に思った事なかった。
じゅんのが怪我した時も、聖が辞めるって言った時も、仁がLA行っちゃった時だって。
いっぱい泣いたけど、すっごい辛かったけど、KAT-TUNを不安に思った事なんて、一度も無かったんだよ。
いつだって6人が繋がってるって信じてたから。
でも今のKAT-TUNは、ね。
行動もバラバラだったら、心はもっとバラバラだもん。
見てらんない」




俺の腕を振り払って、一気にまくし上げた彼女。





「…で、たっちょんに浮気?」





自分でも信じられないくらい冷たい声が出た。彼女のパンチが効きすぎて、立ってるのがやっとだったんだと思う。

俯いていた彼女がやっと顔を上げた。
やっと乾いた頬に、また大粒の涙が零れた。




「…何で分かんないの。
エイトの絆が、ファンの子の心を、あたしの心を打ってるんだよ。
エイト、内くんの事があってから、誰一人、浮いた話もなく、
必死に走り続けてるじゃない。
帰って来る場所を守る為に、がむしゃらに…。
なのに、今のKAT-TUNは何。
遊び歩いて、写真取られて、変な記事いっぱい書かれて。
なんでそんなに裏切れるの。このままじゃ、誰もついて来てくれなくなっちゃうよ。
そんなの、絶対ヤダっ…。 気付いて欲しかったんだよ」







嗚呼、そっか。
俺って、なんて馬鹿なんだろう。



『君の涙を守りたくてここにいる』 なんて歌ったのに。



こんなに傷付けて。こんなに気を遣わせて。



そっと彼女の肩を抱き寄せた。



「ごめんな、そんな事にも気付けなくて。
大事なもの、ちゃんと分かった。
自分の居場所、大事にする。KAT-TUNも、お前も」





ちょっとだけ逞しくなった俺の腕の中で、彼女が笑った。




「分かればよろしい」

「調子乗んな」



食いぎみで言ってやった。




アハハって笑った彼女が、 「でも、たっちょん見てもいい?」 って聞いてくるから。

「いいよ。浮気出来ないくらい俺に夢中にさせてやるから」 って言ったら、

「調子乗んな」 って右ストレートが飛んできた。



彼女のテンドンに笑ったけど、この人を、もう二度と不安にさせちゃいけないって思った。








明日はKAT-TUN、緊急会議だ。










THE END.


2009.1.9



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