皐月の日。

皐月の日。

はっきりしないお兄ちゃん。(ボカロ家族)


 だから私はフローリングに直に寝て、ごろごろしていました。これがまた気持ち良いんだよ?是非やってみてください!
 そんな時、リビングからミクちゃんの大きな声が響いてきたのです。

「お兄ちゃん!いい加減に答えてっ!!」

 ミクちゃんの声が、家中に響く。
 私は何かと思い、リビングに直行したのです・・・。

 リビングをドアの隙間から覗くと、ミクちゃんが兄ぃにに座布団を投げつけていたところだった。・・・ぜんぜん何が起こったのかわかりません!
 ソファには相変わらずレンが何か読みながら座っている。
 ・・・レンはもうちょっと活発になれば良いのに。リンはそう思うのです。

 でも、それより今は兄ぃにとミクちゃんのが先だよね。・・・どうしたんだろ?
 兄ぃにはまず座布団を自分から引っぺがす。それで青い髪をくしゃ、と掴んでミクちゃんに困ったような顔を向ける。
「だからミク、俺はだなぁ・・・」
「ぼくが好きなの?愛してるの?!どっちかにしてええ!」
 ミクちゃんはわぁわぁと泣き出す。・・・え、もしかしてミクちゃん・・・・兄ぃにに告白したの?
 ・・・胸が凄いざわついて嫌だなぁ。とりあえず話は全部聞くけど!
「ミク、お兄ちゃんはミクが大好きだ。でも愛してるって言うのはな・・・その、もっと大切な人ができた時に言う台詞だ。いいね?」
「・・・・ぼくにとっては、お兄ちゃんが一番だもん。大切だもん。」
「それはきっと、兄弟に対する思いだ。違うか?」
「・・・・うう・・・。」
 兄ぃににそう真面目な声と目で言われたミクちゃん。それでさすがに何も言えなくなってしまったみたいで。
 私がそれでまだ、兄ぃには誰のものでもない、と安心していると、ミクちゃんはへの字にして閉じていた口を、何か思いついたのか、ゆっくりと開ける。
「じゃあお兄ちゃん。お兄ちゃんがぼくでもない、リンちゃんでもない人を好き・・・愛しているのだとしたら・・・あとはお姉ちゃんとレンくんのどっちかだよね?!」
「ぶっ、・・・・!」
 あ、兄ぃにが思いっきり吹いた。
 私がそういう対象じゃないのは分かってたからいいけど・・・・ずばぬけている発想でびっくりした。
「ミク、だから俺はな・・・!」
「あ、でもお姉ちゃんだと尻に敷かれちゃってるよね。恋愛対象じゃないかも・・・・だったらレンくんか!」
 今度は静かに座っていたレンが吹く番。え、でもさすがにそれはない、よね?
 レンは少し間をおいて はぁ、とため息をつく。
「ミク姉ぇ、何でそうなるんだよ。オレと兄ぃがそうなる訳ないだろ?」
「でも世の中の『びぃえる』はよくあるよ!!」
「っ、ミク、何見ているんだ?!そんなものを見ちゃいけません!」
「だ、だってお兄ちゃんが可愛いんだもん!もえなんだもん!」
 ミクちゃんがほっぺを膨らませる。・・・びーえるって、何なんだろう?リンにはさっぱりです。
 でも面白いものなのかなぁ。後でぐーぐる先生に教えてもらおっと。
「ミク、お兄ちゃんにもえ、なんてきっとそんなもの無いぞ?ミクやリン・・・レンとかならあるかもしれないけど」
「何でオレが入ってるんだよ。・・・なんだ、オレはショタってやつか?」
「お兄ちゃんを攻めるのはレンくんだもん!逆は駄目えええ!!」
「ちょ、何言ってるんだミク!だから俺とレンはだな・・・!」
 ・・・なんだか会話がカオスになってきました。私も入って大丈夫かな?
 うーん・・・むつかしいタイミング。もうちょっと様子を見て・・・。
 そんな事を思っていたらおねーちゃんが私の脇を通り過ぎてゆきました。そしてドアを開けて。

「あんたたちうるさいわよ!こんなゆるーっと過ごすような日に騒がない!」

 そう言ってぴしゃり、とドアを閉めました。怖いです。
 そーっとドアを開けて中に入ってみると、みんな真っ青でした。
 ・・・そう、お姉ちゃんは、ゆるーっとしたこんな日。そんな日に気持ち良く眠っていたのです。みんなそれを忘れて騒いでいたのです。
 そういえば、思い出してみたらちょっと前に寝る、と一言言ってたっけ。
 おねーちゃんは怒らせると本当に怖い。・・・今日私の夢に出そうだ。

「兄ぃに、ミクちゃん、レン・・・大丈夫?」
 私が心配して話しかけたら、各自こんな返事が返ってきました。
「リン、か・・・はは、久々に姉ぇの怒ったとこ見たぞ・・・・」
「ぼくも、久々・・・・」
「お、俺は大丈、夫・・・・あはは」
 みんな顔が蒼白です。・・・うん、私もきっと同じ顔だと思う。

「じゃあ、私たちもうるさくしないようにねよっか。」
 我ながら名案だと思う。きっとみんなこの陽気ならすぐに眠れると思うし。
 兄ぃにレンも、ミクちゃんも納得してくれたみたいで、私の近くに寄ってくる。床で昼寝・・・あぁ、気持ち良いだろうなぁ。
「さんせーい。じゃあオレここで寝るから」
「そうだな。じゃあ俺はここに寝て・・・」
「あ、じゃあぼくが隣!」
「えー、ミクちゃんずるい!私ここ!」
「ちょ、二人ともさすがに今はそれじゃ暑い・・・・」
 そんな風にまた騒いでいるとおねーちゃんがまたばん!と扉を開けて。

「うるさーい!あんたら、いい加減にしなさあああい!!」

 あぁ、ほらまた。おねーちゃんがまた来ちゃった。
「っ、めーちゃんごめん!これからは静かにするから・・・!」
「・・・次起こしたら、ぶっ殺す・・・・・・」
 うわぁ。おねーちゃん、本気だ。目が据わってる。
 それでその目のまま、ちょっとぽかーんとしている間におねーちゃんはいつの間にか部屋から居なくなっちゃった、んだけど。

 おねーちゃんはいなくなったけど、ぺこぺこしてた兄ぃにはもう、震えちゃって。
 ちょっと可愛いかもなんて思っている自分もいるわけだけど・・・その前におねーちゃんが怖かった。怖すぎて、オーラだけでしんじゃいそうだったよ、私・・・。
「じゃあ、寝ようか・・・」
 二度目のお休みコール。うん、そうしよう。ミクちゃんももうおにいちゃんにひっつかないようにしてるし・・・私も。
「じゃあみんな、おやすみな。」
 兄ぃにが目を閉じる。きっと寝つきの良い兄ぃにのことだから、すぐ寝ちゃうんだろうなぁ。
「おやすみ・・・オレはとんだとばっちりだったよ。」
 レンがそっぽを向いて眠る。・・・背中、震えてる事に気づいてるのかなぁ。弟のくせにクールぶっちゃって。
「じゃあおやすみリンちゃん。騒がせちゃってごめんね。」
「大丈夫だよ。私もちょっと楽しかったし!・・・じゃあみんなお休みー」

 目を瞑ろうとした時、もう兄ぃには穏やかな寝息をたてていた。
 ・・・寝るのやっぱり早いなぁ。それで、やっぱり私は兄ぃにの寝顔は可愛いな、と思う。
 無防備で、・・・まつげ長い。私より長い。女としてはかなり羨ましいなぁ、と思う。・・・もっと可愛くなりたい。
 でも兄ぃに本人は、今さっきの怖いおねーちゃんの夢でも見ているのか・・・顔、凄い真っ青だけどね。

 もうちょっと私はそんな兄ぃにの寝顔を見ていたかったのだけど、やっぱり眠気には勝てなかった。
 私は瞼の重みに耐え切れなくなり、眠ってしまったのです。

 ・・・・できれば怖いおねーちゃんじゃなくて、優しい兄ぃにの夢を見られますように。

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