皐月の日。

皐月の日。

無題SSS 1(マス→イチ→ゼロ)



キミが好きですきで仕方がなくて・・・・・・でも、僕は。




「ゼロ、僕、ゼロのこと好きだよ」

「俺もすきだよ」


何度言っても、君はずっとこう答える。

だから、違うって言ってるのに、通じない。

『イチと同じ『すき』だ』・・・って、言うんだ。


・・・違うんだよ、ぜろ。



だって僕は、こんなにもキミを愛していて。


キミの仕草が好きで。

いち、と僕の事を呼ぶキミがいとおしくて。

・・・キミの笑顔が綺麗すぎて。


何もかもがいとおしくて、愛したくて。


「『  』してしまいたい程に」




そう呟く僕の言葉はキミに、聞こえない。




     *     *     *




――――唄を紡ぐ僕ら。

ゼロと僕の歌声は、似ている様で違うもの。


僕は、ゼロの歌声の伸びが好きで・・・一緒に歌っていると、つい、聞き入りそうになってしまう。

勿論、そんな事は僕ら・・・『VOC@LOID』には許されないのだけれど。


「はい、ここまで。・・・二人のオリジナル曲、指定した期間までには完成しそうだな。二人とも、よく頑張った」


マスターが僕とゼロの頭を優しく撫でる。

その手つきに少しびくり、とちょっと身体を跳ねさせてしまう自分が、嫌だ。

これはゼロの前では見せたくない、とこだから。


「・・・ゼロは・・・うん、ここは問題無いな。イチは・・・そうだな、このフレーズがあとちょっと上手くいかないから、真夜中にこの部屋に来てくれるか?」

「分かりました、マスター。では。」

「はい・・・では、また夜に。」


・ ・・あぁ、嫌だ。また、あの時間が来るんだ。

『上手く行かない』を言い訳にした、あの情事。


逃げられない、避けられない・・・マスターからの、『愛情』。

『ソレ』がキミに向けられていない事だけが、今の僕の救い。


だから、キミは知らない。


マスターに、そういう道具にされている事。

身体を蹂躙され、あられもない状態になる事。

・・・僕が、こんなにも汚れている事。



僕は、隠す。・・・ただ、キミに心配を掛けたくないから。

純粋なまま、そのままのキミで居て欲しいから。



     *     *     *



―――階段を上るのが、億劫だと思うのは『ソレ』が終わって、いつもの事。


僕は、マスターに散々されてふらふらしている身体で、ゼロの居る部屋に睡眠を取りに行く。


あぁ、明日早く起きられるかな。

また、キミに怒った顔で起こされるのかな。


・・・ううん、今はそんな事、どうだって、良いんだ。


「・・・ぜろ・・・・」


とにかく、疲れた。早く、大好きなキミの顔が見たい。

寝顔でも良い。・・・とにかく、キミの顔を見て安らぎたかったんだ。



ゼロを起こさないように、ゆっくりと部屋のドアを開けると、ゼロの寝息が聞こえた。

足音を立てないように、ベッドに近づいて行く。


目の前に眠る、キミの顔を覗き込む。


「ぜろ、」


あぁ、身体が痛くて、疲れたよ・・・ゼロ。




「・・・ぜろ、」


そっと、マスターに汚された指で、ゼロの頬に触れる。


・・・触ってしまって、ごめんね。

でも、触れたいんだ。汚したくないって、思ってても。


だって、僕はキミが・・・『好き』だから。


「おやすみ、ゼロ」


・・・『あいしてる』、から。




この身体はマスターのものだけれど。


――――こころだけは、キミだけの許(もと)に。












『・・・大好きだよ、ぜろ。』

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