皐月の日。

皐月の日。

「過去」への服従 前編(極ヴィル+a)












――――――「キオク」の片隅で、「コエ」が聞こえた。








『お前はもう、すでに僕の手の中に有る』



『僕の、「   」にナレ――――」










・・・そう、夢の中で。
















































「・・・っ!!」




―――――やはり、夢。


・・・だけれども。



「妙に、現実感があるな・・・」



――――お前はもう、すでに僕の手の中に有る。

・・・その後の言葉の一部が思い出せない。



そして・・・そういう、あいつが誰なのだか分からない。


「・・・どうしたら思い出せるものか・・・」




そう思っていると、こんこん、と自分の寝室のドアをたたく音が聞こえる。



「・・・ヴィルヘルム?起きてるか?」


――――クレイスの声だ。



「あぁ。起きている。何だ、俺の朝食でもできたか?」


クレイスは、まぁ、それもあるけど。と少し頭を掻く。



「今日、買い物に行こうと思ってるんだ。ジャックと一緒に。だからお前も来るか?」


それを聞いて、自分がこの時代の世界をまだ見て回っていない事に気づく。

・・・良い機会だ。



「じゃあ俺も一緒に行こう。どこに行く?」

「デパートって所だ。お前の服と食いもんを買いにな。・・・お前、ちっこいから俺の服着られないもんなー」


にやにやと笑うクレイス。


――――・・・俺の身長が、小さいと。





・・・・そう言うクレイスに俺はちょっとかっとなってしまった。





「な・・・っ?! ま、まだ俺は伸びるからな!」

「おっと、上司っぽくないぞヴィル上司!」

「うるさいっっ!!!阿呆クレイスっ!それに俺はもうお前の上司じゃない!」

「まぁそうだけど・・・あの時のお前はかっこつけだったよなー・・・『私の命令を聞け、クレイス。私はお前の上司なのだからな』・・・ってさ」

「・・・~っうるさいうるさいっ!! あぁもう思い出したくないことを・・・! お前こそ組織にいるときえらそうにして・・・!」

「えらそうだったさ!あーえらそうだったね!」




クレイスと俺は散々言い合いをして息が切れたころ。




「・・・あの、ヴィル・・・クレイス・・・近所じゅうに響いてるぞ」




起きてきたジャックがそう、俺たちに忠告した。




     *     *     *


クレイスの作ってくれた朝食をとった後、俺は最近の楽しみの、クレイスが俺のために買ってきてくれた菓子ぱんとやらを選んで口にする。


「この『めろんぱん』とやらは結構美味しいな・・・」


・・・はっきり言って俺は甘党だ。

向こうの世界でも甘いものはよく食していた。


・・・ショートケーキ、とか、クッ、キー等・・・。


・・・・・・まぁ、そんな女の子が食べているようなものを食べる事は男としては、恥ずかしくもあるわけだが。

好きなものは好きだから仕方がないだろう。



「・・・よし、じゃあヴィルはジャックの服を着てくれ」


渡されたのは、こちらで生活するのに不具合の無い私服だと言う。

・・・俺にしては、なんとも言えない服だ・・・。


「クレイス、買い物メモ」

「ん、ありがとなジャック。ヴィルは気になる服とか有ったら言えよ? そこに一旦置いていってやるから」


――――それは助かる。

短時間だが、この、俺たちのいる地域をよく見ることができるからな。


そこに帰る事も、まぁ、俺の洞察力なら大丈夫だろう。

仕事先でも、迷った事はない。


「そんじゃ、行くか!」


     *     *     *


――――・・・騒がしい。


迷わない前に、周りがこんなに騒がしいとは。



・・・あの、神の世界なら、まぁ、分かる気もするが。



そして俺たちはでぱーと、とやらのえすかれーたー、という乗り物に乗り、上まで上がってゆく。


「ヴィル、このフロアが服の売っているフロアだ。よーくみて回ってくれ」

「あぁ。わかった」


その服のふろあとやらには、たしかにその世界の服が沢山並んでいる。

なるべく安いのにしてくれな、とクレイスは俺に囁き、3時にここで待ち合わせということで二人と別れた。


――――・・・さて、どうするか・・・。


待ち合わせまで余裕が1時間見たとして、2時間ほどある。

長く時間を取ってくれたのは、本当に助かった。


・・・この場所が、長く見ていられるからな。



そして俺は、デパートの外へと走った――――


     *     *     *


「・・・ここなら、よく見渡せるな」


俺は、自分の「チカラ」を使い姿を消し、空を飛んで辺りを見回した。


「広い、狭い町だ・・・」


建物だらけ。・・・あっちの滅びた、俺たちの住んでいる場所とは大違いだ。

・・・その古び、滅びた工業都市はもう、ないのだが。


「ん?」


そんな事を思いつつ、下を見ると、妙な奴が何かを演説している・・・ように見える。



―――俺は何故か、その、演説に興味を持ってしまった。

その興味ゆえ、姿を消したまま、演説をしている奴の近くまで降りる。



「・・・・我々が、変えよう! お前たちは今日から我が軍の一員だ!」



見ていた「ヒト」は、その演説に聞き入り、・・・洗脳されているように感じる。




―――――なんだ、この、「チカラ」は。




果てしなく、強い「チカラ」を感じる。

俺よりも、強い・・・。

・・・果てしない、「チカラ」・・・。


俺も、洗脳されるような・・・。




は、と気づいて俺は首をぶんぶんと振る。

――――――これは、いけない。



少し間を置いて、俺はそこを立ち去ろうとした。











「・・・僕の演説をまだ途中で立ち去るとは・・・良い度胸だな?」









―――ぞくっ・・・・


背筋に、悪寒が走る。



「姿を消していても分かったぞ。・・・お前はこの「セカイ」の人間ではない。・・・そう、別の「セカイ」の人間だ」

俺は嫌な予感が頭の中を走り、タイミングを計り、逃げようと「チカラ」を静かに高める。


「そうだな・・・お前は、僕が少し前に滅ぼした・・・あの「セカイ」の住人か?」




―――・・・え・・・?

俺たちの、セカイを・・・・?





「・・・さぁ、そうなのか。そうでないのか答えてもらおうか」


――――やばい。本気で、どのタイミングで逃げたら良いか、分からない。


「さぁ、早く・・・早く答えろ」



・・・そうだ、今。

質問しているだけなのだから・・・!



「―――――――っ!!!」


俺は今まで高めていた「チカラ」を使って、移動を試みた。



・・・・だが。







「どこに逃げようというんだ?お前は・・・」







―――――真後ろに、演説をしていた奴が居る。


まさか、一瞬でここまで来る事ができるなんて。

・・・油断、していた・・・。



「・・・そうだ、まずはそれより姿を見せてもらわねばな」


思いついたように、後ろの奴は言った。

―――そして奴の手が、俺に触れる。



「・・・っぁ・・・・・」



力が、抜けてゆく。

体も、自分本来の「チカラ」も。


・・・体が、不自由になる。





「・・・っはぁ、はっ・・・」


俺はそれに耐え切れなくなり、自分の姿を見せてしまった。

それを見て、奴は嬉しそうにこう言った。


「・・・・・・あぁ、君は・・・」



――――あの、僕が助けてやった奴か。






・・・一瞬。



一瞬、意識が、凍った。








「お前、が・・・?」




―――俺に、「呪縛」をかけた奴。

ジャックに、対する。



「お前がっ・・・!」


怒りの感情が、とまらない。

あの呪縛のせいで、俺は、ジャックや、クレイスを・・・!




「何を怒っているんだ?僕が助けてやったんだぞ?怪我を治して・・・」

「そして呪縛をかけた」



――――俺は、目の前に居る奴を睨んだ。





「・・・ほぅ。どうして、分かった?」


やはり、当たっていたらしい。

ジャックの、意見は。


「俺の、結論だ」


ジャック達の名前は、まだ、出していない。

俺が一人でいるというように見せるためだ。


・・・あいつらは、もう、二度とこんなことに巻き込みたく、ない・・・!




「・・・・・・その表情・・・気に入ったぞ、お前」


目の前に居る奴は、にやり、と笑い、俺の顎をくい、と持ち上げた。







「僕の名前は極卒だ。・・・お前の名前は?」


「・・・・ヴィル、ヘルム」




それを聞くと極卒は「ヴィルか」と嬉しそうに言い、俺の顔を舐めるように見回す。

・・・正直、かなり、気持ち悪い。





「・・・ヴィル、お前はもう、すでに僕の手の中に有る」


「・・・・・・何?」




「僕の、「ドレイ」になれ」





――――・・・奴隷・・・?





その意味を理解するのにはそう時間はかからなかった。







「お前・・・俺に、奴隷になれ、と・・・?!」



夢の内容と、同じ。

同じ、言葉。


そうだ、あの空白は。


この、奴隷になれという、話だったんだ――――








「・・・さて、どうするヴィル?」


「どうするもこうするも・・・お前の奴隷になぞ、「私」はならない」




――――久々に口調を変えたな。

この言葉のほうが・・・やはり、威圧感はあると思う。




「・・・ほぅ、口調を変えるとは。・・・この言葉遣い・・・ますます欲しいな」


目の前の奴の獲物を捕らえたような目にぞくり、と背筋が立つ。

――――何か、間違えていたか?



「とにかく、私はお前なんぞに付き合ってはいられない。・・・手を、離してもらえるだろうか」


「嫌に決まっているだろうヴィル?・・・それと、僕の事は極卒で良い」



・・・誰が呼ぶか。

俺を奴隷にしようとしている奴なんぞ。



・・・それより。

このままでは埒があかない。


どう、この場を抜け出そうか―――――





「・・・あぁ、そうだヴィル。こんな取引はどうだ?」


極卒が俺にいきなり話を振ってきた。

・・・嫌な、予感がする。










「もし、お前が僕の「ドレイ」になるならば・・・お前の大切なジャックとやらには手を出さないでいてやろう」








「・・・・?!」


――――『ジャック』。




「何故、お前がジャックの事を・・・?!」



「・・・それは、お前が呟いていたからだ。『ジャック』と」





―――――――なんという、ことだ。


これだけは、隠していなければならなかったのに。




「・・・さぁ、どうする? ジャックを守りたいだろう?」



僕は名前さえあればすぐそいつを探せるぞ、とさらに極卒は脅しをかけてくる。

・・・俺は、一体・・・どうすれば・・・。



「さぁ・・・返事は?」




返事は―――――







「・・・あと、一週間、待ってくれ・・・」







――――苦渋の選択だった。


ここから抜け出すには、こう言うしかなかったから。





「一週間か・・・まぁ、良いだろう。それまでに決めて、ここにまた来い。僕はいつでも待っているぞ?」

ひょひょ、と極卒が笑い、俺の私服の中に手を入れてきた。



「――――っやめろ!!!」



俺は顔を真っ赤にして極卒を引き離す。

今こいつのやる事は、まだ、阻止できる。


「まだ俺は、お前の奴隷じゃないっ・・・!」


・・・そう、まだ。

まだ、奴隷じゃないんだ。



「・・・・・・そうだな。では、色好い返事を待っているぞ」

極卒はそう言って、また演説へと戻っていった。









































――――なぁ、ジャック、クレイス。





俺は、どうすれば、良い―――――――?



















今度こそ・・・








お前らを、今度こそ、守りたいよ―――――――

































****************************
・・・何だか長ったらしくだーらだーらと書いてしまいました。うわ、3時間かかってる・・・;

いつもならもっと短いんですけれども。

というか見直ししてません・・・!(お前)


・・・というわけで、また後日に直すかもしれません; うわー、絶対雑なところあるよー;


それで物語なのですが。

極卒くんをついに登場させることができました・・・!
これでもっとヴィル様をいじめられますね!^^←

そしてヴィル様は極卒の奴隷になってしまうのでしょうか。

・・・それは次回をお楽しみにしてやってください(お前)


あ、ちなみに今回は「前編」「中編」「後編」にしようと思っています。
前回より長いですね(苦笑)



ではでは、次の執筆も頑張りますよー!^^





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