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死神のイキカタ。
思い出の懸け橋
文月麻莉亜(ふみつき まりあ)中学1年になって、
私は何も変わらない日々を送ってきた。
毎日何も変わらない世界。
心の中でだれかを憎んでいる事実。
何もかも変わらない。
また、たった一人の世界が歩くたびに過ぎてゆくだけ。
誰かに心を開くわけでもなく、誰かと一緒に笑うわけでもない。
―でもあの時からすべてが変わった―
さかのぼること一日前。つまり昨日だ。
私の目の前に現れたのは一人の女性。
隣にいる父はニコニコしながら女性の紹介をする。
『この人は誰?』
紹介を聞いても誰だかわからない。
そして、父は私が誰にも心を開かなくなった理由とも言える言葉を言った。
「この人が、新しい麻莉亜のお母さんだよ。」
私の母親は私が4歳の時に死んだ。
私と一緒に買い物に行っていた母。
そんな母と私に一台のトラックが突っ込んできた。
居眠り運転。
誰もが予想しなかった事故。
母は私をかばおうとして私の前に立った。
母は即死。私は重体。4tトラックだったため、とても大きな事故だった。
救急車で病院に運ばれ、手術。入院。
事故のときの記憶はほとんど残っていない。
そして、退院。
あの時からだろう。父の様子が変わったのは。
私に話しかけるのも敬語。ビクビクしていて優柔不断。バカみたいだ。
そしてそんな父が連れてきたのは私の新しい母親。
「よろしくね。麻莉亜ちゃん。」
よろしくって言われても私は困る。
本当に私の母になるつもりなのか?
私はその場にいられなくなった。
走って自分の部屋に入る。後ろから父が私の名を叫ぶ。
勢い良くドアを開け、閉める。
ハァハァと肩で息をする。
ドアの向こう側から2つの足音が聞こえる。
ドンドンドン!!!
ドアを叩く父親。
「麻莉亜!父さん、急にあんなこと言って悪かった。でもわかってほしい。だからお前にこのことを言ったんだ!お願いだ!わかってくれ!」
「うるさい!もう私のことは気にしないで!」
あまり言葉の意味はない。
ただ、一人にしてもらいたかったからあの言葉を言っただけなのだが、十分に利いたらしい。
ドアを叩くのをやめ、ソロソロと階下へ降りていった。
「ハァ・・・。」
息切れなのかため息なのか自分でもわからない。
「頭の中混乱してるよぅ・・・。」
一人呟いてみる。
「どした?」
急に声がした。ビックリしてキョロキョロと周りを見回す。
「いつものトコにいるだろ!オレだよ!!」
机の横にある大きな窓の向こう。すぐ目の前には幼馴染の長月涼介(ながつき りょうすけ)だった。
「涼ちゃん・・・。」
「どした?おじさんと麻莉の声がしたけど。」
私は涼介のことを「涼ちゃん」と呼ぶ。涼介も私のことを「麻莉」と呼ぶ。そして、私の父は「おじさん」。
「ケンカでもしたのか?」
「ううん。何でもない・・・。」
一応明るく振舞ったつもりだ。
「やっぱなにかあったんだ。」
「そ、そんなこと・・・・。」
「あるだろ。麻莉のいつものクセだ。ごまかすのは。」
さすがに生まれたときから一緒だったのだ。
なんでもお見通しってやつだな。
「気にしないで。ちょっとした言い争いだよ。」
「でも麻莉があそこまで叫んだの初めてだっただろ?」
言われてみれば父親にあそこまで言ったことはない。
「私もちょっと興奮しちゃっただけだよ。」
「ならよっぽどのことがあったんだな。」
読みが深いのか、私が分かりやすいのかわからない。
たぶん、答えは後者だ。
「何があったんだ?」
「えぇっとですねぇ・・・・・。」
いつものことだ。何かある度に涼ちゃんに見つかってごまかしきれなくて最後は話してしまう。
きっと涼ちゃんもそのことを考えて話しかけてきたのだろう。
「うちの父親が新しい母親だってゆう女の人を連れてきたんだよ。」
たぶん、これが一番わかりやすいまとめ方だろう。
「まじかよ・・・。」
さすがに涼ちゃんもショックを隠しきれてない。
「だから麻莉、あんなに怒ってたんだ・・。」
怒っていた?・・・のでは無いと思う。ちょっとショックだっただけなのだ。急に言われて受けいられなかっただけなのだ。
「なんて言えばいいのかわかんねぇよ・・・。」
「何にも言わなくていいよ。」
「でもさ、なんてゆうか・・おめでとう?」
「私は祝ってなんて言ってないよ。」
「もしかして麻莉、昔の母親のこと・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
きっと心の中では怒ってたんだろう。
涼ちゃんが言った昔の母親。今見たく優柔不断な父ではなく、たくましたかった父。その2人が私の両親なのだ。なのに父は新しい母親を連れてきた。私がショックを受けた一番の理由は父が母のことを忘れてしまったんじゃないかと思ったからだろう。
―忘れてほしくなんかなかったのに―
「まぁ、何かあったらオレに言えよ。」
「え?」
「ほらなんだ・・・その・・また争いごととかあって何か言いたくなったらオレでよかったら聞くし。」
「ありがと。」
私たちはまだ気がついていなかった。これからおこる最悪な自体を・・・。
新しい母が来て一週間がたった。
まだ結婚はしてなく、婚姻届もだしていない。
社会では「同居」というのだろう。
「おはよう!麻莉亜ちゃん!」
さわやかなのか元気なのかわからないが朝からハイテンションだ。新しい母の名は砂矢華(さやか)というらしい。
「おはようございます。砂矢華さん。」
一言を素っ気無く返す。
「今日のお味噌汁はちょっとがんばったのよね!味はどうかしら?」
毎日のように自分の朝ご飯のオススメを紹介し、味を聞いてくる。これがメンドクサイ。
「ん~。いんじゃないかな。もうちょっと赤味噌を入れたほうが美味しくなるかもしれないけど。」
なにげに文句を言ってみる。
「そっかぁ~。今度から赤味噌の割合を多くしてみよう・・・。」
でもめげてない。
まぁいいやっと朝ごはんをすばやく食べ、カバンを持って玄関へむかう。
「はい。これ、お弁当。」
玄関で靴を履き替えてると砂矢華が弁当箱を持ってきた。
「麻莉亜ちゃん、いってらっしゃい!!」
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