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自分と向き合う
作家 伊東 潤
BS11
それはなぜかと探ったところ、そうした偉人には共通点があった。何らなの理由で幽閉や投獄された後に開放されると、偉人は人格や能力が一変しているのだ。
戦国時代、豊臣秀吉の天下取りを支えた黒田官兵衛孝高は、約一年の幽閉生活を経て、有能な交渉役から名軍師へと成長した。真田信繁は紀州九度山に流罪となった十四年間、古今の兵法書を読破したうえ、父昌幸薫陶を受け、大坂の陣で家康を追い詰める活躍をした。
幕末、吉田松陰は一年半という牢獄生活で五百冊以上の文献を読破。出獄後、尊王攘夷思想のリーダーとしてまた同志たちの教育者として明治維新に貢献を果たした。
西郷隆盛は一年半に及ぶ遠島刑の間、過酷な環境の中で、短気でいかりっぽい性格を強制し、包容力のある大人物へと変貌を遂げた。
その後、多くの人から敬慕された西郷は、明治維新の大業を成し遂げた。
かれらに共通しているのは、囚われの身となったことで自分と向き合う時間が持てたことだ。そして解放されると、それまでの人格を一変させるほどの大人物となり、偉大な業績を残す。これらの事例から、いかに自分と向き合う時間が大切か分かる。
人は多忙すぎると、目先のことで精一杯となり、大局的な見地から自分を涵養することを怠る。かくいう私もそうだ。それゆえ暇ができると、取材旅行という名の一人旅に出掛け、自分と向き合う時間を設ける。それが人格にも創作にも多大な影響を及ぼしている。
【すなどけい】公明新聞 2025.2.28
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