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金利を考える
翁邦佳 著
入門だけで終わらない根源的考察
普段はあまり「金利を考える」ことがない一般人も、昨年来、金利を意識せざるを得なくなっただろう。日本銀行による金利引き上げ後に起きた昨年 8 月の株価暴落(史上最大の下げ幅を記録)から、金利動向が従来以上に大きくクローズアップされているからだ。
そうした状況の中で、時宜を得た刊行となったのが本書である。著者は日銀金融研究所所長などを務めた経済学者で、金融政策の第一人者として知られる。執筆中に起きた戦術の株価暴落については、その背景などを分析した「エピローグ」として、急遽追加されたという。
本書は、金利の仕組みを基礎から解説する入門書。「金利とは何か」という問いには「一言でいえば、『お金のレンタル料』です」と答えるように、著者は分かりやすい比喩などを駆使するほか、身近な例に寄せて解説する姿勢も一貫している。例えば、金利理解の必須の「情報の非対称性(貸し手と借り手では得られる情報に差があること)」の概念を、缶ビールの購入と消費者金融取引を比較して説明する(後者にのみ「非対称性」がある)、という具合だ。
通読すれば、基礎知識がない人にも、日米の金利差が為替レートを動かす仕組みや、日本の低金利政策が円安の要因になる理由などが理解できるだろう。
また、住宅ローン金利の今後を展望する性があるなど、実用的な側面を持つ書でもある。
本書は秀逸な金利入門書だが、それだけには終わっていない。各省の「補論」では専門的な話題にまで踏み込み、金利について、さらに根源的な考察が展開されているのだ。
平明さと奥深さを兼備し、金融に詳しい読者にも多くの学びが得られる書である。 (原)
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