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海底に眠る負の遺産
パラオで進む戦争の後始末
太平洋の青い海に囲まれた常夏の島国パラオ。世界屈指のダイビングエリアとして知られるが、海の底には旧日本軍の艦艇などが静かに眠っている。公的な潜水チームがないこの国で、 80 年経った今も戦争の「負の遺産」である水中爆発物の後始末に当たる日本人たちがいる。
(コロール=パラオ=時事)
元自衛官らが爆発処理を
支配者だった日本人の責務から
水深 30 ㍍に残る爆雷
4 4000 発——。福島県出身の元海上自衛官篠山浩司さんがこれまでに発見・処理した爆発物の数だ。篠山さんは、水中不発爆弾処理に 30 年以上従事した熟練ダイバー。退官後、自衛官 OB らが設立したNPO「日本地雷処理を支援する会(JMAS)」に参加し、 2016 年五パラオに赴任した。以来、パラオ人との混成潜水チームのリーダーとして毎日のように海に出て、爆発物に向き合ってきた。
日本の問い地下にあった第 2 次大戦末期の 1944 年 3 月、南方作戦の拠点だったパラオの湊に米軍の大空襲があり、停泊していた輸送船など多くの日本観船が沈没。積載されていた爆雷船が沈没。積載されていた爆雷や、米国の不発弾などが海中に残されることになった。
戦後、沈没船の探索が進み、主要港であるマラカル港の沖合約1㌔で発見された日本の輸送船「ヘルメットレック」(通称)から約5000個の爆雷が見つかった。爆雷容器は腐食が進み、有害成分が漏出。海洋汚染を懸念したパラオ政府は2012年、JMASに爆雷の処理を要請した。
水深約 30 ㍍の暗くて狭い船内から、もろい爆発物を取り出すには高度な専門技術が必要だ。篠山さんたちは 1 個 150 ㌔ある爆雷を一つずつ水上の筏に引き上げ、陸に移送する地道な作業を進めてきた。
「震度の関係で潜水作業は 1 日に 1 時間程度。あまりにも量が多く、活動当初は途方に暮れた」と振り返る篠山さん。しかし「自分たちの先輩が残したものだから、自分らで処理するしかない」と諦めず、取り組み続けてきた。かつての支配者である日本人の責務だと考えている。
現地ダイバーも育成
パラオでは今なお海中で爆発の危険がある不発弾が見つかる。活動期限が 25 年末に迫るなか、JMASはパラオ政府と協力し、自分たちに代わる現地ダイバーの育成に取り組んでいる。
訓練を受けるコロール州レンジャー隊員のマック・正晴さんは水中での創作方法などを約 3 年間かけて習得。篠山さんたちを「厳しい先生」と評するが、「爆発物処理の技術を身につけて、国の宝である海の安全を守りたい」と笑顔で話す。「パラオの未来のために」。その思いが両国の人々を深く結びつけている。
世界一の〝親日国〟
西太平洋に浮かぶ約 340 の島で構成されるパラオは、屋久島とほぼ同じ面積に約 1 万 8000 人が暮らしている。 1914 年から約 30 年にわたり日本の統治を受け、太平洋戦争では激戦地となった。 93 年には日系 2 世の故クニオ・ナカムラ氏が第 6 代大統領に就任。約 94 年に米国からの独立を果たし、観光業を中心に発展を遂げてきた。
絆を忘れず次世代につなげる
統治時代に多数の日本人が維持住したため日経人口比率が高く、「ダイジョウブ」「ナマイキ」など日本語に由来する言葉が数多く伝わる。当時、日本が玄地産業育成に力を入れたほか、冬眠向け教育を行ったことなどから親日家が多く、「世界一の親日国」とも呼ばれる。日本風の名前を持つ人が多く、日本にルーツがない人も「サトウ」などの姓を名乗っている。
アイタロー外相は「日本とパラオの歴史は長く、兄弟のような特別な関係にある」と強調。「ともに不発弾御処理を進めるのは平和を示す象徴的な動きだ」と述べ、「日本人にはパラオとの絆を忘れず、次世代につなげて欲しい」と訴えている。
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