みそあんを食らう


 歌舞伎の幕間に食べる為,柏餅を4個買う.
 ・・・・・上手い!
 ・・・・・みそが濃い.何年ぶりかのみそあん.
 まず,一度目の幕間に一個ずつ.
 弁当の後に残りの一つをいただく.

 本来なら柏餅の場合,独り数個は食べることが可能.
 いただくと言うよりは食らうの方が近い.
 しかし家計をきりもりしている主婦という立場上,二人分合わせて四個の菓子.
 味わってかみしめて,まるで雑誌の『四季の味』や『サライ』のようにいただいたのは想像されるところである.

 京都以外にもみそあんは有るには有るのだが,どうも味が違う.
 喜ばしくない.
 味が薄いというべきかみそをけちっているのかは定かでないが,とにかくいただけない.

 以前,奈良の友人宅を訪ねるにあたり柏餅を購入しょうと店員に問うてみた.
 店員曰く,
「そ,そ,そ,そのようなものはございませんんん・・.」
明らかに異星人を観るような警戒したまなざしが肌を突き刺す.
 ・・・・・・なんかヘンなこと尋ねたかな?
 柏餅にみそあんが有ることすら知らない和菓子屋.
 少し自己嫌悪に陥りながらも店を後にした.
 大阪でも真のみそあんは未だかってお目にかかったことが無い.

 弁当は今回はロビーのテーブルを使用.
 前には上品な身なりのいいご年輩のご夫婦.
 がさつな高校生とペアの私はできるだけぼろが出ないよう,しとやかに振る舞う.
 お上品を心がけ食べる弁当もいよいよ中盤戦を迎えた頃,品のいいご夫婦はごそごそ包みを取り出された.
 なにやら顔をほころばせておられる御様子.
 出来るだけ失礼の無いように小さな包みの中身を見た.

「みそあんですか?」
しまった.つい口が滑る.
「京都に帰ったときしか食べられませんから.
 何処にもないですね,みそあん.」
そしてしばらくの間みそあん談義が始まったのは言うまでもない.

 お上品なご夫婦はあっという間に柏餅を,二口でたいらげてしまった.
 あっけにとられ同時に得た安心感.
 お上品という緊張の時の流れは一瞬で崩れ去る. 


 弁当と柏餅みそあんでは誰しも食べる速度が違うような気がする.
 やはりみそあんの場合『食らう』が正しい.

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