有限日記  

脳みそパン(ドイツ)

脳みそパン(ドイツ)

 ドイツを旅行していた時、一番印象に残っているのがローテンブルクという街だ。ドイツ観光の王道、大体のツアーに組み込まれる街の一つだが、私はこの街が大好きである。周りを城壁に囲まれた、こじんまりした街。建物も、その建物のあちらこちらで、色とりどりの花が咲き乱れ、あらゆる場所の装飾がなんとも愛嬌がある。
 石の敷き詰められた古い路地、ぱかぱかと長閑に歩く馬車のウマ。街のあちらこちらには、可愛らしい雑貨を売っているお店があって、見ているだけでウキウキしてしまう。小さい街なので、あちらこちらで観光客と出くわすが、この街で生活できるなんて、なんて幸せな人達なのだろう、と地元の人を眺めてうらやんだものである。ちなみに大学もちゃんとあって、ローテンブルク大学は確か理系が専門だったとか。ばりばり文系の自分は心底ガッカリして、理系に転向しようかなと本気で考えかけたくらい、私はこの街がすっかり気に入ってしまった。

 さて、この街で偶然私が見かけて購入したパン(?お菓子)がある。後で、有名な土産の一つと知ってガッカリするのだが、名づけて「脳みそパン」。この名前を最初に聞いた人は、一気に食欲が落ちるだろうが、現物を見てもらえば分かる。まさに脳みそ。
 というのは、ドーナツ生地を幾重にも重ねてボール状にしたパン(パイ?)なのだ。だから食べるときはひたすら円状に巻きついているその生地をはがして食べる。ただ粉砂糖がまぶしてあるだけのシンプルなお菓子。単純な味の繰り返しがキライではない自分は、延々バスの中でお腹がすいてはこのパンを取り出し食べていた。何しろ幾重にも細かいパイ生地が重なっているので、なかなかなくならない。私が脳みそを着々と消費していくのを見て、隣の祖母は変わったものが好きねえ(祖母にはパイの油がダメだったのか、それとも単純な味の繰り返しがダメだったのか、あまり評判は良くなかった)と、半ば呆れて眺めていたが、ついに3日目にさしかかったところで、自分もギブアップとなり、そのまま僅かに残った脳みそくんは、廃棄処分となった。

 さて、その脳みそパンの名前は「シュネーバル」。実はローテンブルク発祥の名菓子と後で知った。Schneeball 、すなわちSnowballで、「雪の玉」という意味だ。

 なにはともあれ、こんな「雪の玉」という、ローテンブルクにふさわしい、可愛らしい名前のパンを、知らぬ存ぜずとは言え、「脳みそパン」と呼んでいた自分は、なんて詩心がないのかしらと愕然としたのであった。



© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: