乾いた心を癒す音

乾いた心を癒す音

バレンタイン論争 3


その、一種マニア向け悩殺ポーズを惜しみなく披露する乾にその姿を見咎めたのは乾いわくヘンタイの彼。

「どうかしたか、乾。」
「………手塚、あとで部活あるかメールしてくれ。」
「それはかまわないが・・・どうした?」
「今からちょっと氷帝まで行ってくる。」

正確な解答を与えられない上、いきなり爆弾発言をかました乾に、バンダナ、ヘンタイ、魔王から一斉に声が上がる。

「「「なに!?」」」

「……うん、それがいいよな。
どうせ休み時間ごとに女の子に追い回されるんだろうし。
それだったら……。」

しかし彼は御得意の思考の迷路へと迷い込んでいて自分に問われた質問を理解することなくただ独り言を繰り返すのみ。
自分の導き出した結論に満足がいったのか嬉しげな声でうんうんと頷いている。

「誰か本命がいるのかっ!」

手塚は言葉とともに彼の肩をつかんでゆする。
突拍子のない言葉に乾はまた始まったか…と言うように白い目で彼を見つめる。
パシリとその手を払いのけ、

「……なに言ってんの、手塚。
残念だけど氷帝の女の子に知り合いはいないよ。」

そう言って、一種侮蔑に近い瞳で手塚を見やる。

「ち、違っ、……そうではなくてだな。」
「ちょっと鳳君に誕生日のプレゼントを渡しにね。
ついでに跡部あたりのチョコの数でも集計してこようかなぁ。
マンモス校だし、きっとすごい数なんだろうな。」

「待て、乾。なぜ…。」

よりにもよって氷帝に、なぜ…この日に出かける…とその目は語っていた。
少なくともその気持ちは乾を取り囲む人間の殆どが気づいていた。

「なぜって…手塚にだって誕生日プレゼント贈っただろう?」

さらに話題の相手を思い出したのか遠い目で、手塚に対するときに比べればよほど楽しげな瞳で笑って話を続けた。

「鳳君とは、試合の後仲良くなってね。
誕生日が今日だって聞いてプレゼントあげるっていったんだ。
だったら欲しいものがあるって言うから。」
「……ちょっと待ってよ、乾。それって…。」

それまで、手塚に話の主導権を譲り、自分はせいぜい手塚が乾に嫌われる様を楽しんでいた不二だったが、欲しいものという言葉を聞きとがめ話に割って入り乾に尋ねる。

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