◎河竹豊蔵 同人雑誌「果樹園」

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果樹園11号「同類の君に」

果樹園11号なんの事やら、粗末な話(2)から

五「同類の君に」

私は、地球に生きている、人間と云う定義の生き物です。君と同じです。たまたま
、日本で生活しています。蛇でも熊でも昆虫でも、植物でも魚でもカビでもありま
せん。まして、石でも水でも空気でもありません。私は、君と同類の人間です。君
と、ほぼ同じです。食べる物も、リズムも同じで、同じ様な体験を繰り返していま
す。私達の人生、あまり変わらないと思いませんか。それなのに、君を妬んだりし
て、ごめんなさい。悲しませて、ごめんなさい。
 ところで、観察力は、私が失ってしまいたくない、一つのテーマです。家の前を
婦人が自転車で通ります。私から婦人までの距離は、十五メートルほどあります。
三次元の世界の中で、空気を二つに割って、走っています。空気が、流れています
。木の葉も揺れます。君と僕も、同じ三次元の空気の中で、離れたり、近づいたり
しています。それなのに、心は別もののように言ったりして、ごめんなさい。
 私は、しゃがみ込んで、花を見ました。這いつくばって見ました。目線は、低い
。じっと、花を見る。誰だって、その造形美に感嘆するだろう。色合いだって、不
思議に思える色なのです。自分以外の、いや人間以外のものを観察するのは、安心
感を私に与えます。それは、違って当たり前だからです。
 ところが、人間を観察するとなると、非常に疲れます。見ただけでは、考えてい
る事が分からないからです。それに、心は、毎度のように変化するから、以前の解
釈では、もう心は計れなくなっています。思い込みは、自分に安心感を与えますが
、他人を不快にします。君が、夢と希望に向かって、いつも努力しているのを忘れ
て、ごめんなさい。
 私は、疲れています。それは、いつものことです。それから、何かしようと動き
ます。動くと、疲れが逆になくなります。止まると、また疲れます。その繰り返し
だった気がするのです。あんなに小さかった子供は、いつのまにか、私より背が高
くなっています。時間の経過とは、そうしたものでしょうか。
 君は、私に言った。あなたの良い所は、決して諦めないところだって。私は、嬉
しかった。ありがとう。でも、私は君にそうした言葉を伝えていない。いつか、私
も、君に伝えたい。どんな言葉を伝えるかは、もう少し、君を見てからにしよう。
「私は、決して諦めないよ」
          「なんの事やら、粗末な話2」終わり

    同人雑誌「果樹園」第11号より 2008年9月10日発刊

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