かをのひとりごと

かをのひとりごと

レディ・サマナー



「子供の頃に見た魔法少女のマンガを見て
 絶対に自分も魔法使いになると決めちゃったんだ~」

子供の夢と言うものは少々現実離れしたものも多い
しかし、その少女はいつまでも
その現実離れした夢を追いかけていた・・・


「りおん」は今日も憂鬱になる
黒い衣服に身を包み、数々の怪しげな装飾品を身に付け
今日も勤労に勤しむ所だ
その姿はまさに、魔法使いと呼ぶに相応しいものだった

だが
彼女は悩んでいた
自分が目指したものはこれだったのか?

昔憧れた魔法使いの姿は
魔法で何でも解決していたものだった
しかし、
そんなものを教えてくれる所はどこにも無かった

そして
現実の魔法というものは
黒魔術・・・つまり呪術のことだったのだ


それでも、憧れの魔法使いに近づこうと
呪術の文献を読み漁ったが
手に入るアイテムはすべてレプリカだったため
かなり、心が折れかかっていた

「現代で魔法使いになる方法は無いのだろうか?」


そんなある日、ネット上で面白いものを発見する・・・



第2話

ネットオークションに出品されていた奇妙なもの
その内容を詳しく見てみた

「幻の魔道書”ソロモンの鍵”をお譲りします
 怪しげなものなので、返品も可です」

ソロモンの鍵がオークションに?
どう考えても偽者としか思えないものだったが
返品できる事と、最低落札価格が5万円だったのが
微妙に信憑性を高めていた
そして
しばし考えた末、入札する事に決めた


数日後、代金の受け渡しも済み
無事にソロモンの鍵が届けられた
あとは、これが本物である事を祈るばかりだ

どうやらこの本は、何者かを召喚するための本らしい
しかも召喚の方法が細かく書かれており
用意する道具も、日常で簡単に手に入るものばかりだった

「コレは、本物かもしれない!」

興奮して寝付けなかったが
早速深夜に試してみる事にした


時間は午前2時を回った
事前に書いておいた魔法陣の中央で、本に書かれていた呪文を唱える

「我、血の契約により強きものを呼び起こす
 我の思い届きし時は
 悠久の時を超え
 その姿をここに示せ!!!」

・・・・・・

・・・



何も起こらない
期待してみたものの現実はこんなものか


ふて寝しようとしたその時
黒い光が部屋全体を包み込んだ

「ま、まさか!」



第3話

黒い光が辺りを包み、同時に邪悪な波動が感じられた

「何か・・・来る!!!」


そこに現れたのは
異形の形をしたモノではなく
ましてや、美形の悪魔でもなく・・・

2匹のかわいらしい生物だった

「おい、俺達を呼んだのはお前か?」

あまりの、あまりの予想外の展開に面を食らったりおん
しかしこの光景はどこかで・・・

そうだ、この2匹は
昔やってた”魔法使いカレン”に出てきたルーとリーにそっくりなんだ!

「そう、あなた達を呼んだのは私!
 そして、私を魔法使いにして欲しくて呼んだの」


「おい、聞いたか?」

「ウケケ、聞いた聞いた!」

2匹の生物は楽しそうに笑っている


「もう、願いを叶えてくれるの?くれないの!!」

りおんが大声で叫んだ

「叶えられなくもないぜ、その願い」

「でもその前に一つ、その願いを叶えるために
 何かを犠牲にしなくちゃいけないの、
 その覚悟があなたにあって?」

何かを犠牲に?
この部分がとても引っかかったが、このチャンスを逃したら
もう一生魔法使いになれないと思った

「魔法使いになれるなら、すべてを犠牲にしても構わない!」


「よーし、よく言った」

「ウケケ、なら叶えてあげる」

2匹は呪文のようなものを唱えだした


魔法のステッキのようなものが出てくるかとワクワクしていたが
なにやら浮遊感がし始め、それと同時に体が輝きだした

「これで、魔女になれるぜ」

「ウケケ、夢を叶えるために、あなたの未来を貰っておいたからね~」


「そ、そんなのって~」

そう言い終わるか、終わらないうちに
強い衝撃に見舞われ、りおんは気を失った・・・



第4話

災いは何の前触れもなく訪れる
ただ惰性の毎日を送っていたりおんにとって
この環境の変化は想像を絶するものだったに違いない・・・


「ここはどこかしら?」

りおんは気が付いた
どうやら、どこかの小屋に寝かされていたようだ
そして
全身に手当てをした後がある

そこに一人の女性が入ってきた
この家の人だろうか?
どうも外国の言葉を話しているらしく
話している言葉はまるでわからなかった

そして、
なにやらいいにおいのスープを運んできた
どうも、それを飲めと言っているようだ
あまりおいしいものではなかったが
おなかがすいていたので全部いただいた

どうやらこの女性は敵ではないらしい
けれど
とても不思議な格好をしている
まるで、子供の頃に絵本で見た、シンデレラのような格好だ

「ここはどこなのかしら?」

いろいろな思いが駆け巡ったが
疲れと満腹感でまた眠気が襲ってきた

悪魔が最後に言っていた
「夢を叶えるために、あなたの未来を貰っておいた」
とはどういう意味だったのだろう

一抹の不安を抱えながら
りおんは深い眠りに落ちていった・・・



第5話

あれから数日が過ぎた・・・

お世話になっている女性の言葉は相変わらずわからないが
どうやら、シャクティと言う名前らしい

そして体のほうもかなり回復し、今では出歩けるようにもなった
この数日間でわかった事は
電気やガス、水道の類は一切無いこと
さらに
ここは森の中に立っている小屋だということだった

森の一軒家だから電気が通ってないのか
それとも電灯が発明されていないくらい古い時代なのか?

一体今は、西暦何年の何月何日なの?
何度もシャクティに尋ねたが
彼女は困った顔をするだけだった

「言葉が交わせないと言う事はこんなにももどかしいものなの?」

いくら日本語で話しても伝わらない
知りたい情報はたくさんあるのに
肝心の言葉が伝わらないのではどうする事もできない

「そうだ、もしかしたら魔法が使えるかも!」

思いつく限りの呪文を唱えてみるが
なにも変化は起こらない

何も情報がつかめないまま数日が過ぎた
そんなある日
いきなり武装した集団が、シャクティの家に上がりこんできた!!



第6話

荒々しくドアを開け放った男達は
ヤリの様な物を構え、大声でシャクティに何かを言っている

シャクティは激しく否定しているようだが
聞き入れてもらえず
2人とも縄で拘束され、城のような所に連れて行かれた

町並みから見て、どうやらこの世界は中世ヨーロッパのように見えた


私達は広い部屋に通された
そして
そこの偉そうな人とシャクティがなにやら言い争っている

しばらく言い合った後、私達は別室に連れて行かれ
体を何かに括り付けられると
男達はムチの様な者を叩き付けて来た
これは、まるで拷問のような?

「何故、私がこんな目に!」

拷問の最中、男共が何度も何かを聞いていたようだったが
言葉がわからず
私は苦痛の叫びを上げるしかなかった

永遠に続くとも思えた拷問だが
シャクティが男共に何かをつぶやくと
拷問は突如終わりを告げ
私達は牢屋のようなところに放り込まれた

なぜか、シャクティは何度も私に謝っている様に思えた
多分シャクティは拷問を止めるように言ってくれたのだろう

恐怖から開放された安心感からか
深い眠りが私を包み込んだ・・・



第6話補足 シャクティ視点から見た場合

「シャクティの家はここか!」

突然、城の衛兵が現れた

「お前に魔女の疑いがかけられた、直ちに連行する」

何を言ってもダメで、
私と、りおんは捕まってしまった

そのあとすぐに裁判がかけられた
私を魔女だと言ったのは商売敵の女だった

「私は見たんです、あの女が魔法を使うところを!」

ひどい、いくらライバルとはいえこんな形で私を亡き者にしようだなんて!

「嘘です!、私は魔法なんて使ったことはありません!」

「強情なやつめ、、白状するまでこの女を拷問にかけろ!」

そして、私達は拷問にかけられた

「さあ、自分が魔女だと白状しろ!」

こんな事で負けたくない、
でも、言葉のわからないりおんは白状する事もできず
永遠に苦しみ続けなければならないかもしれない

それに・・・私も・・もう・・限界みたい
ごめん、りおん・・・

「私達・・・魔女・・です」

「おお、ついに白状したか」

私達は牢屋に放り込まれた

「りおん、ごめんね」

苦しさから逃れたいために、この娘まで巻き添えにしてしまった
言葉が通じないのはわかっているが、それでも言わずにはいられなかった

いつの間にか、りおんは眠ってしまったようだ
明日、処刑されることも知らずに・・・



最終話

寝ているところを突然起こされた
相変わらず何を言っているのかわからないが
これから良くないことが起るということだけはわかった

私とシャクティはしばらく歩かされ
杭の2本立てられた、広場のような所に出た

そして、杭に括りつけられると
火を点けた松明を持った男が近づいてきた

どこかで見た光景
そうだ、これは火あぶりをするつもりなんだ!

「ちょっと!誰か助けて!!」

「ウケケ、それは無理な相談ね」

確かに聞いたことのある声がした
その声は、りおんをこの世界に送り込んだ悪魔のものだった

「私は火あぶりして欲しいなんて頼んでない!」

「お前は魔女になりたかったんだろう?」

「そうよ、皆に魔女だと認められたからこそ
 こうして火あぶりされる事になったんじゃない」

「だからって、こんなのイヤ~!!」

りおんがいくらわめこうと
処刑が中止されることはなかった

業火に焼かれながら、りおんは悪魔と契約した事を悔やむのだった・・・



・・・・・・・・



・・・・






「はっ!!」

りおんが目覚めると、そこは自分の部屋だった

「夢・・・だったの?」

「お目覚めかな、お穣さん」

声の方へ振り向くと
明らかに人間ではない男・・・が立っていた

「おっと、自己紹介がまだだったね
 ボクはペイオール、人に幻影を見せる事を生業としている者
 君は魔法の力を欲していたようだから
 魔女の末路を知らすべく
 あえてあの映像を見せてみたのさ
 例え火あぶりにあうような事があっても、まだ魔法の力が欲しいかい?」

「りおんは、マッハの速さで首を横に振った」

「そうそう、手に余る力は自らを滅ぼす事にもなりかねないからね
 ということで、ボク帰るよ♪」

りおんは、今までの出来事はペイオールの幻影だったと言う事を悟った
もうあんな目にあうのはこりごりだが
何も収穫がないのは非常に残念に感じた

「そうだ、次はもっと頭の悪い悪魔を呼び出そう!」

死にかけたにもかかわらず、再度悪魔を呼び出そうとするりおん
もう本当に、バカは死ぬまで直らないようだ



© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: