よんよんとともに

(7) ・(8)





静かに時が流れ、山里にも春がやってきた。



あの老木も薄紅色から緑へといつしか色を変えていた。



野の道も

色とりどりの花が咲き乱れ



ふわりふわりと蝶が舞う。





メファは見よう見まねで、ピョルの食事の支度をするようになっていた。

ピョルに教わったのだ。





ピョルも裏の山手の粘土を切り出し、

轆轤を踏み始めた。





まきを割るピョルの近くで

洗濯物をほすメファ・・・・。



当たり前の暮らしを出来ない二人が、

当たり前の暮らしを始めていた・・・。







ピョルはひとつの山を越えたと思った。



花が散る頃にメファが姿を消すのではないかと思っていたのだ。



もう花は一輪も木に残っていない。

変わりに青い実がいくつかなっている。





それでもこうしてメファは傍に居てくれている。

もしかして、奇跡が起きたのかもしれない。



そんなことを考えている。





一日に1回は必ず老木のあたりまで散歩に出かける二人・・・。



メファが思う存分川で沐浴をする間、



ピョルは老木にもたれながら、





『どうか、このまま僕の傍にメファを居させてください。』

と祈る・・・・。







メファも老木に手を触れては、

聞き取れないぐらいの声で話しかける。



『どうか、このままピョルの傍に居させて・・・』





二人は来た道をまた仲良く手をつないで戻って行くのだった。





ある日ピョルは、

南向きの窓辺に置いていたあの名もない花の鉢を



庭に出すことにした。

名もない花は、未だに葉が2枚ほどあるだけで、

ほとんど成長していない。



それでも今日まで枯れずに生き延びてきた。





あの、メファに出逢った日に持ち帰った・・・。



ピョルにとって特別な花だ。









(8)



うすい緑から濃い緑へと村の景色が変わってきた。





登り窯の煙突から煙が昇っている。



ピョルの造った器を焼いているのだった。







雨の日も増え、木々が鬱蒼としてきた。





メファは一人で木浴に出かけた。





戻ってきたメファは、

窯から少し離れたところで



赤く燃え盛る火を眺めていた。





ピョルのために食事を運んでくる。

そして、メファもピョルと一緒に徹夜を続けた。



懸命にピョルに尽くそうとするメファだった。





やがて・・・一組の夫婦茶碗が焼きあがった。

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