暗闇商会登場!


 書類がたまってきている。入金チェックをしておかないといけない。

はたして何件の約束が守られるのだろう?そんな事を考えながら仕事をしていたが、昨日の夜の緊急電話が気になっている。

午後からは調査しないといけない。それは夜10時頃にスチールのドアが凄い音で蹴られたという電話だった。

警察も動いたらしいが、さすがにローカルの警察署は事件が少ないのか動きが速い。聞いてみるとどうも騒音問題で揉めていたみたい感じだ。

でも夜中にドアを蹴られたら凄く怖いよね。とりあえずドアのヘコミか破損がないか調べなければいけない。

大型量販店の前を過ぎY字を右方向へ約10キロの道のりだ。

潮の香りがしてきた。海沿いの大きい病院の向かいにある物件だ。造りもしっかりしているようにみえるが。ワンフロアーに4戸、ドアはスチール製、蹴られたドアを確認するが異常はみられない。

とりあえずその部屋と隣の部屋のチャイムを鳴らすがだれも出てこない。あとは管理部にまかせよう。隣人同士のトラブルは好ましくない。お互いに配慮が生まれてこないと快適な居住も苦痛になるばかりである。


5月31日
 5月末で退去のスーパー滞納者●●荘の●田さん、のこのこ会社にやって来た。

 私「●田さん、どうしたの退去済みました?」 
「あのーもう少し待ってもらえませんか?」 やっぱりな・・。
私「残念ながら、次の募集がもう、かかってます。」
彼女「保証人がいないとダメみたいで・・。」 
私「娘さんは?娘さんが契約者じゃないと多分ダメだと思うよ。他の不動産会社にはどう言うふうに言ってるの?」
彼女「5月末で出て行かないといけないんでと・・。」あーぁそれじゃ見込みないな。

私「●田さん、言い方がまずいよ。実は娘と一緒に暮らす事になったので、今の場所じゃ手狭になって、それで、他を探しているのですが、身内がほとんどいないので保証人がいなく、保証人の要らない物件で、なにかお安いのがないかと・・・。て、ぐらい言わないとダメでしょう。」

彼女「あーぁなるほど。」チョット勘弁してよ!
私「でも、お母さんじゃダメだから、娘さんが探す時に実は母と、暮らすことになってと言わないと。それで、娘さん連れて本当に来週一番できて下さい。」

彼女の都合ばかり聞いていられない。最終退去日を来週末に決めて娘に動いてもらうしかない。次は決まってないけど、もう次があるからと厳しく言い渡す。もう本当は今日、ドアロックする予定だったけど。

 確かもう一人6月3日退去の女性がいたけど・・・。不安が募る。滞納者の特徴かもしれないが、大体いつもぎりぎりまで、連絡してこない。

半月分ぐらいの家賃をもって尋ねてくるのだが・・・。多分アヤシイ予感がする。


6月2日
 入金連絡がぞくぞく管理部から入ってくる。その割には額が少ないが、引き受けた頃からは大幅に減っている。

管理部全員や他部署の努力が実を結んでいる。私のターゲットは悪質な滞納者ばかりだが、これも頭を押さえて、退去を優先しているから減っている。

しかし滞納額が多くて返済計画を立てている場合は毎月の家賃も掛かるので減りが少ない。

ジレンマに入り込むこともあるが、相手も商売をしていたり生活もかかっている。支払い能力をしっかり判断しないといけない。

 若い飲み屋勤めのオネエチャン、約束通り3か月分入金してきた。
何回訪問しても出て来なかったけど。

夜遅くまで働いていて大変だとは思うが、
「法務部のTさんですか?●●です。」こいつ、声はホント可愛い。
私「やっと、つかまった。元気してたか?」
「ウン、ちょっとまだ、ダルイけど。大丈夫だよ」

私「入金頑張ったね。体壊さないようにしてしっかりね。」
彼女「すみません、今後気をつけまーす。」一回も会えなかったけど彼女の声の明るさに少し気がまぎれるのだった。


 ●●荘の親娘がやって来た。管理部のSさんに、娘さんは25歳だから、持参金付じゃなく、滞納金付でもらってよ!なんてまずいジョークをいっていたのだが。

 とにかく頼りは娘さんなので、こちらも必死の説得を続ける。若干理解力も遅いが彼女にも危機的状況を把握してもらう。
私「とにかくもう5日しかないからスグ動いてね。」やさしくなってきている自分がいる。真剣に頷いている彼女、なんとか次がうまく見つかればいい・・・。


6月4日
 クレーム処理班、私の部署とは一味ちがう、俗に言う「暗闇商会」が忙しく動きまわっている。

どうも、高級マンションの上階あたりで新手のピッキングをされ、入居者が被害を受けたらしい。被害額もかなりデカイみたいだ。その処理に忙しそうだった。

完全無欠のセキュリティは、今のところないが侵入出来にくい体制や入居者自身の防犯体制の意識向上は本当に必要だと思う。

オートロックも必ずしも万能ではない。私の町会でも数件空巣にやられている。妻や母が怖いというので、ホームセンターにいって防犯グッズを大量に買ってきて取り付けている。

こういう仕事は好きなので、詳細は書けないがかなりハードタイプになっている。それでもやられる時はやられるものだが・・・。

ダミーカメラ・センサーライトそしてドアや窓が開くと大音量の警報システムを取り付けている。
この音による警報システムが当初は慣れなくて自分でよく鳴らしてしまい、家族からクレームを受けた。

もう少し欲を言えば防御するシステムもいいが、攻撃できるシステムも考えたいところである。

銀行の防犯体制とまではいかなくとも、町ぐるみやその物件での協力体制は必ず必要となっている。

当社の受け付けにもせめてモニターカメラぐらいあってもいいと思うが・・・。

銀行の話がでたので、ちょっと裏話をひとつ。

銀行にもモニターカメラがたくさんあるが、聞いた話だと全部が全部まわってない(録画されていない)らしい。

緊急時に勇敢な行員が机のしたのスイッチをいれたり、また、不審者及び大型出金者の時に各自が入れるらしい。

考えてみればいつも回ってたら大変なテープ量になるよな。あと、支店長クラスのデスクの電話にはほとんどと言っていいくらい録音機能がついているらしい。
やっぱり爆弾騒ぎなんてあるんだって。

 ごめんね、これ書いていいのかなぁ?もしかしたらこの裏話消えているかも知れないからその時はご勘弁を・・・。



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