風呂に入らない男？
どうやら無事荷物を置く場所が見つかったらしい。彼女が居た。苛立っている。「息子は全然助けてくれなかった。」
「でも、よかったじゃない荷物預ってもらえて。」
ビデオテレビが１台残っている。
「これ捨てないの？」
「実はこのテレビ拾ってきたんですわ！でも写らなくてそのまま置いていたのですが。」
「で、どうするの？」
彼女「捨てられていたんでもう一回捨ててきますわ。」この感覚が解らない｡
彼女は悪いこと全然してないのに、どうしてこんな目にあわないといけないのかと、涙ながらにいつも話すが、今ひとつ彼女の感覚はずれていると思う。
とにかく、これでまた一人、2DKから1Rに移った荷物好きの老女の生活が始まるのである。もう、なんでも拾ってこないと思うが。
6月18日
●沢市企業局や北陸電力の料金課よりよく電話が掛かる。
昨日の夜もかかっていたらしい、デスクにメモが貼ってある。
見てみると滞納者の物件であるが、平成14年の11月から水道をストップしてあるらしいが、いまでも生活しているのですか？というような内容のメモだった。
●●●ールのビッグ滞納者である。彼は私のなかでも手強い相手だ。でも水道が止まって早や、約8ヶ月？彼はどこで風呂に入り顔を洗い、トイレ？どうしているのだろうか？
彼の部屋を訪れたとき匂いはあまりしなかったが、でもかなり奥の部屋への入室を拒んだのは確かだが・・・。これは次回に報告しよう。
今日は2時に●●●●イツの彼がやってくるはずだ。前回はスッポカシされたが今回はたしてくるのであろうか。
2時30分が過ぎた、また裏切られる。すぐに彼の携帯に電話を入れる。4回目のコールで彼が出た。
「今日2時にお約束ですが、また守られませんでしたね。どうします？」
仏の顔も3度までである。
彼「明日は何時でも大丈夫です。」勝手に決めるな！久々に平日休みたかったが仕方が無い。
「それでは、明日１０時に必ず来社して下さい。もしこれでお約束守られないのでしたら、処理を確実に開始させていただきます。法廷でお会いしましょう。」かれは明日来るのだろうか？
時間が出来た。あのビッグ滞納者●●●ールの●●さんの水道の件が気に掛かる。どんな生活をしているのだろう。
とりあえず水道メーターを見てこよう。●●東、先に●ー●●●レッ●に行き次回入室予定のドアの前に立つ、以前として５月３０日に張り紙を貼ってあり帰宅していない。
ガス、水道のメーターもチェックしたときのまま、すすんでいない。そこからすぐ近くに目指す物件●●●ールがある。もう何回も来なれた道である。
車をゆっくりと停車させ水道メーターをチェックする。
「ん？メーター交換してある。新しいぞ」明らかに動いていない。
他のメーターをチェックしようとしたその時、「ガタン！」と音がした、アパート前にある側溝の音だ。見慣れた自転車、見覚えのある容姿、「彼だ。」
自転車はそのまま通り過ぎようとしている。メーターの蓋が閉まらない。彼を追わないと。車に戻るとすでに彼の姿が見えない。車に乗り込みスポーツカーなみのテクニックで車をターンさせる。
通りに出ると彼の自転車がわき道に入るのが見えた｡ゆっくりとランクルを彼の自転車の横につける。ニヤリと彼が微笑みをかける。
「お出かけですか？」
彼「チョット郵便局まで行っていたんで。」
「お部屋には戻らないのですか？」
彼「・・・。」
「●●さん、今日朝、水道局から電話がありまして、水､止まっているそうですね。どうやって生活しているのですか？」
「いや、あそこはあまり生活していないので・・。」
「それなら早く退去してくださいよ！」
「いや、一応寝泊りだけは。」
「寝泊りだけって、顔洗ってるの？お風呂は？トイレはどうしてるの？」
彼「風呂は友人のところで、トイレは近くの公園で・・・。」
あやしい、
「水道が止まっている事自体不自然ですね。管理会社としてどう言う状態になっているか検室する義務があります。」
義務かどうかは別として、正常な状態でない事は確かである。
「そんなに言うなら、来てみて。」やった！コミュニケーション？が大分出来てきたのか、招いてくれる。
彼が先に自転車でアパートに戻りはじめた。今度はゆっくりと車をターンさせる。そうだ、ついでに水道料金課に電話してやろう。
「今なら彼アパートに居ますよ」
「すぐ、行きます」と、水道料金課との戦いのも見れるらしい。
彼の部屋？まず玄関で靴をぬぐ、あまり脱ぎたくないが、入るとすぐ４．５畳ほどの広さのキッチンである。
それなりにゴミはちらかっているが、量はそれほどでもない。流し台に行き蛇口をひねるが水は出ない。
流し台の横に風呂場、トイレがある。先に風呂場をみるが乾いたままである。トイレを開こうとした時に奥の部屋に呼ばれる。
「ここがベッドルームです。」なにがベッドルームだ！「ん？」似合わない、趣味の悪い？ベッドが置いてある。
三方を白いステンレスの飾りで囲ったメルヘンチックなベッドである。いい夢をみているのだろうか？その手前の部屋が彼のリビングらしい？古びたパソコンとテレビ、テーブルには薬や、綿棒の汚れたものが散らかっている。
「まぁ座って下さい。」どこに座れるスペースがあるのだ？仕方なくキッチンとリビング仕切り戸のさんの上に腰をおとす。
リビングには白っぽい絨毯が引いてあるが、ところどころ、チジレタ毛が落ちている。後悔してももう遅い。2DKの部屋は荷物が少ない。水道課が来るまでたっぷり時間がある。さあ久々のビッグ滞納者との対決である。
「●●さん、しっかり次の移る物件探していますか？」
「いろいろ、まわっていますが・・・。」
私「探してないでしょ！じゃ市役所は､行ったの？」
彼「行きましたよ！」
私「担当者はなんて言っていました？」
彼「しばらくかかりますって」
「●●さん、もっと早く行かないとダメでしょう！生活保護をうけないと、死んじゃうよ！それに水道止まってたらどうやって生活できるの？水道が止まっているんじゃ、トイレの水も流れないでしょ、用をたしてから上から水流していると必ず配管の内部が詰まるよ！水道代ぐらいキチンと払わないと次移っても水供給してもらえないよ」
彼「じゃ、払おうかな・・。」
私「金あるなら、少しはうちにも入金してよ！」
彼「イヤー今度。」私「いつも今度、今度じゃ話にもならないでしょ、じゃ、下に置いてあるあの車は？あれは、●●さんのでしょ？」
彼「もう、動かないんで。」
「じゃ、どうするの！」
彼「・・・・・」
私「駐車場の金額もかかるでしょ、それだけでも金額減らしたいので動かないのなら処分して下さい！」
彼「じゃ、処分します。」
「そんな簡単に処分できるの？」
「木材団地の近くに外人がやっているパーツ専門店にもっていくと１０００円で買い取ってくれるのです。」
こんな事は詳しいなぁ。
私「動かないのにどうやって持って行くの？」
「友人に引っ張ってもらいます。」絶対ないな！
「それじゃ、ここ１週間で処分して下さい。処分出来たら、解約用紙持ってくるから！約束してよ！」
「わかりました。」絶対わかってないぞ！この人､本当にノレンに腕押しだよ。
ノックの音がした。水道の料金課がやって来たみたいだ。彼がすばやい動作でドアに近づく、本当に体悪いのかと疑うような機敏さである。
来たのは､チョット年配のおじいちゃんタイプ。多分ダメだろうな・・・。
「料金課です。あんた！いつもいないので、困ってたんですよ。」
いきなりあんた！である。
「もうやがて１年近くたつよ、いつ払ってくれるの？」
彼「私、水道止めて欲しいと言ったはずですよ！」おいおい自分から言ったのか？彼「いつの事か調べてみるわ！」
水道課が「調べるって、あんた！もうココに書いてあるでしょ。間違いないから払って下さい。１万弱ぐらい溜めるほうがおかしいでしょ！」
その通り！
彼「あんたもしつこいなぁ！こっちから調べて連絡するって！」ないない、がんばれーっ水道課、彼がいきなりドアを閉めようとするので、ここで助け舟。
私「企業局の方？よかったねぇ、上手くこの人に会えて。私この人にここ貸している管理会社ですけど、この人本当になかなか会えないから。」
水道課「家賃もたまっているの？」
彼「水道課に関係ないでしょ！」オッ、反撃してる。
またしばらくやり取りが続いている。少し私以外にも懲らしめてもらわないと、いけない。
「●●さん、一応、弁護士から書類くるからしっかり対応してよ。次回は法廷かもしれないよ！早く役所に認可もらって次の場所探したほうが得策だよ。」
彼「・・・。」
裁判費用や時間を考えると私も出来るだけ早く処理したいが、彼にはきっちり金額の重さと罪を理解させたい・・・。
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