死亡多発!?


  しっかり仕事が詰まって来ていた。
  朝から電話がよく鳴り響く、
  「はい、法務部!」
  「アノォー、○○ですが・・・。」
  「どうしましたか?」
  「実は親戚の○○が亡くなったので・・・。今月の支払いが・・・・。」

  またか!同じような電話をすでに2・3回受けている。
  きょうは本当か、どうか解らないが私の周りでよく人が亡くなるらしい。

  他にも事故にあった。(それも知人が)空巣に入られた
  (警察に届けていない)
  なぜか事件や事故のオンパレードである。

  「エッー!大変でしたね。で、ご入金は?」としか言えない私がいる。
  「すいません、もうちょっと待って下さい。」

  「月をまたぐと、大変ですよ!貴方の周りも大変そうですが、
   貴方自信も大変になりますよ!」
  「アッ、それはもう充分解っています。」

  ここで意地悪くもう一回!
  「で、誰が亡くなったの?」
  「・・・・・。」オイオイ、忘れるなよ!

8月20日
  管理部のSGTさんが「Tさん、お客さんですよ。」
  「誰?」
  「●●●●の●●さんです。」聞いたことがない名前だった。

  いかつい感じの若い男性である。管理部のHMさんにお願いして
  デスクに戻ったのだが、どうも様子がおかしい。

  「どうしたの?」と聞きながら彼の書類をみると、●●じゃないか!
  彼は私が担当していなかった滞納者だが、しっかり支払い確約者リスト
  に残っている人物だった。

  「空巣に入られて・・・。」また空巣なの?
   勘違いしないで欲しいが私の会社の物件は、犯罪者に狙われるほど
   セキュリティは甘くない。その大半が鍵のかけ忘れによるものが多い。

  「警察には届けたの?」
  「いえ、まだです・・・。で、一応自分で鍵変更したのですが。」
  「それはまずいよ!」

   ちょっと、いかつい若いオニイチャンがビビッテきている。
  「・・・・・。」
  「ちょっとこっち来て!」と自分の事務所へ、だいぶんビビッテいる。

  と、そこへ管理部トップのSさんが、優しく声をかける。
  ダメだった、こらえきれずにいたのか、彼が泣き出してしまった。

  彼は東北から出てきたのであるが、残念ながらこの北陸を離れなければ
  ならないように、なってしまった。 

   「お母さんにはもう連絡したの?」
   「まだです。」グスン、グスン、
   「それじゃ、ここからお母さんに電話して訳を話さないと・・・。」

   管理部Sさんがスバラシイ!彼の肩をそっと触れながら
   「今まで頑張ったけどなぁ・・・。」サスガ!

8月25日
   『お仕事順調ですか?残暑厳しい折お体にも注意して頑張って下さい』
   彼に送ろうとした、最後の文面であった。

   「Tさん、●●荘の●●さんがお亡くなりになったそうです。」
   「エッ!いつだ!」今、手紙を書いていたのに・・・。

   「昨日みたいです。今日、保証人の方が今までのお家賃を持って
   こられるそうです。」
   彼はまだ45歳、心筋梗塞だった。

   老舗の食品工場に長く勤めていた。入居していた物件も
   20年以上だった。
   保証人の方がきて滞納金額はすべて支払っていったのだが、
   彼の人生の一部を語ってくれた。

   「彼は、勤続20年以上でした。酒が好きで糖尿も患っていました。
    仕事は真面目で最初の10年間で1,000万円以上を貯めて
    それを博打ですってしまい、またこつこつ1,000万円貯めて、
    今度は飲み屋のママに全て注ぎこんでいました。」

   「で、無一文になったのですね。」
   「そうです、それで御社の家賃も滞納気味になったらしいのです。
    彼もとても純な人間だったので、その飲み屋のママと結婚をしたい
    と言っていたのですが・・・。」

   「お亡くなりになった場所は?」
   「アパートの前で、自分の車の中で。死亡時間は午前10時頃、
    発見したのが夕方の5時頃でした・・・。」

   昨日の日曜日は暑かった。車内温度も50度を超えていただろう。
   「以前から苦しい時があったのでしょう。きっと我慢していた
    のでしょうね。」

   滞納者の7割近くがサラ金からつまんでいるのだが、彼はなかった。
   彼は真面目だった、だからこそ長い支払い確約書も書いた。
   45歳は若すぎる。

   入居者の事故、事件などは、警察や消防救急などを手配するのだが、
   既存の入居者への配慮も考える。

   できる限りサイレンを鳴らさないで来て欲しいのだが、
   緊急の場合はそんな事は言っては要られない!生死に関わる重大な
   場合は一秒でも早くないといけない。 

   で、それ以外の緊急時は所轄の交番もしくは管轄警察署の刑事や
   巡査に直通をかける。

   警察とのコミュニケーションにもよるがお願いするとサイレンは
   鳴らない場合がある。実は私は普通救命士の講習を受けているので
   すぐに触れてしまう、できれば何事もないのが一番であるのだが。

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