ヤバイ!ついに戦闘!?


   トゥルルルル・・・!私のデスクにある法務部直通電話音は一般の
   電話音よりかなり高音であるのでわかりやすい。

   その甲高い音量が私の反射をさらに鋭くさせている。

   「ハイ、法務部です。」
   「Tさんかね?」893な土建屋である。

   「お金、工面出来ましたか?」
   「今日、銀行で手形を金に替える。」

   「よかったですね、集金にいきます。」
   「アッ、チョット待ってや。」

   なにやら、騒がしい声で彼が部下にどなり散らしている。
   月末なので支払いの振分けをしているようである。
   「アーTさん、すんません!チョットバタバタしているもので。」

   「お忙しそうじゃないですか?何時ごろにお伺いすればいいですか?」
   「ンー、わしの所の責任者から電話入れさせるから、お昼まで待って
    くれんかいの?」
   「わかりました。電話お待ちしています。」

   毎度のことであるが、その待つ間隔が少しずつ短くなって来ている。
   滞納になる原因の多くは、督促の緩やかなところからその支払いの
   順位を後回しに、しているのでやはり、しつこいと思われる程督促を
   かけないと、なかなか減少しないのである。

   しばらくして、申し訳なさそうに、彼の社の責任者から、電話がかかった。
   「あのー、今日の午後3時か4時に私がお持ちいたしますが・・・。」
   「いえ、私が集金にお伺いしてもいいですよ!」
   「いや、必ずお持ちしますので・・・。」
   どうも、歯切れが悪いが。

   「わかりました。それではお待ちしております。」
    嫌な予感がするが、どうしても来て欲しくないみたいな感じである。
    エッ私、強面じゃないですよ。体にアートはないし、
    指も揃っていますから。

   4時が過ぎたが、残念ながら責任者は来ない。
   仕方が無い、こちらから出かけようと、思ったその時に私の携帯が鳴った。

   「Tさん、●●です。」ワカルッテ!その声は。
   「今からお伺いしようと思っていたのですが!」
   「スマン、どうしても必要な金が出来て、今5万しかサイフに
    ないんじゃ。」
   「ンー・・・・。」わざと、しばらく沈黙する。

   「Tさん、本当申し訳ない。来月の1日に残り入れるから今日は
    これで、勘弁してくれんかいの?」
   なかなか上手いじゃないか!こちらとしては解除を優先したいが、
    もう少し様子を見た上で対応しよう。
   「今からすぐに伺います!」
   5万でも入金させとかないと。

   彼に会うのは、3度目である。小柄ではあるがその昔、
   数々の武勇伝を作った面影が随所に残っている。

   「約束が違いますが!」

   「無い物は無い!」

   「解約手続を開始いたします。」

   「わしが頭を下げているのにか!」

   解約書を引きちぎり、彼の右フックが飛んでくる。遅い!

   ダンベル30キロを持ち上げる左腕でその、フックを左に流す。

   まだ、攻撃してはならないとの神経が私の脳に働く。

   「この野郎!」彼の左手には金属の灰皿が握られている。
    投げつけるのか、それを持って攻撃してくるのか瞬時に
    判断する、持ったまま左に大きくフックである。

   重い金属の灰皿であるがために右のフックよりさらに遅い。
   今度は強めに右腕でそれをはね返す。

   灰皿が宙を飛んで彼の事務所のドアガラスを粉々に砕いていく。

   「くそっ!」小柄な体を前倒しにしてタックルで突っ込んでくる。

   無駄なあがきだ。
   横須賀の海兵隊基地に黒人の友人がいる。
   最強のUSAネービィーである。

   その彼から、これまた最強の戦闘術をガキの頃たたき込まれた。
   その頃から街でのケンカは追い込まれるまで手を出さなくなった。

   彼のタックルは見事にかわされて、彼は床に転げてしまった。

   「これ以上やると怪我をしますよ。」穏やかに彼の動作を
    見守りながら口を開いた。

   彼の体から、戦闘の気配が消えた。


   と言うような感じにはならなかった。
   ゴメン!もうすぐ『影の法務部』が『完』となるので
   チョット戦闘シーンも入れてみたかったの。

   彼は申し訳なさそうに自分のサイフから5万円を
   とりだしたのであった。



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