アンハッピーバースデー。




出勤のためいつもの時間に起きて台所でごはんを茶碗に盛っていると、母が話しかけてきた。


「そういやあんた今日、誕生日じゃない?」


「そうだよ」と答えると同居している祖母が「おや、じゃあ何か御馳走食べなきゃねぇ」と言った。


私にとって御馳走ってどんな食べ物だろうと考えていると、すかさず祖父が口を挟む。




「甘エビの刺身でいいだろう」




ちょっと待て、爺さん。それはあんたの好物だろう。自分が食べたいだけと違うんか。

大体、その「~でいいだろう」という決め付け系な物言いは何だ。私の誕生日なんだから、私の意見を尊重するべきじゃないのか。
孫が生まれたこのめでたき日を何かの形で祝おうって気持ちが全然こもってないぞ。


反論しようと私が口を開きかけたところへ祖母が「それがいいね」と賛成した。母も「じゃあそれ買ってくるわ」ともう決定させてしまう。




我が家は祖父による独裁政権で成り立っています。




まぁいい。母の事だ、気をきかせて私が好きな刺身もきっと買ってきてくれるだろう。


淡い期待を抱きつつ仕事を終えて帰宅し、冷蔵庫を開けると本当にエビの刺身しか入ってなかった。


寂しい気持ちで椅子に座り食べ始めると、一匹のメジロ(※虻に似た昆虫、刺されると痛い)が私にまとわりついてきた。
手で払い除けながら食事をしている間に食べ物の方に気をとられていたのか祖母に「頭にとまったぞ」と言われる。
後頭部に手をやるとそこじゃないと言うので「どこー?」と言いながら今度は頭頂部に手を置いた。

「ここ」と言って祖母が私の前髪に手を伸ばし、払う仕種をするのかと思いきやメジロを素手で捕まえた。
そしてそのまま指で潰す。




「ぷちっ」と嫌な音を立ててメジロは絶命した。


私 「ちょっ・・・!」


母 「嫌だ、ばあちゃん」



私と母の非難の声に対して祖母は「さすけね(問題なしとかそんな感じの意)」とさらりと受け流し、もう原形をとどめていないメジロをティッシュに包んでゴミ箱に捨てた。




戦争を体験している人間はやっぱり違うよ!怖い物なしだよ!かなわないよ!!




エビの刺身しかないわ目の前で虫を潰すところを見せられるわ、もう今日は最悪の誕生日だ。
誕生日といえば、つきもののアレがそういえばないなと思ったので母に聞いた。


私 「ねー、ケーキは?」


母 「ないよ。食べたきゃ自分で買ってきなさい」




本当に私はここの家の子なのだろうか…。




暑いのに、心は寒さに震えている私に母は氷を投げ付けるような事を言った。












「ところであんた、今日でいくつになったの?2□?」


























それは昨日までの年齢です。お母様。


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