ココ の ブログ

寂しい人生と楽しい人生(3)

寂しい人生と楽しい人生(3)

 とは言いながら人々は其処に住まねばならない理由をそれなりに持っているのだろう。先祖伝来の土地にしがみつくようにして住んで来た歴史を想えば簡単に捨て切れるものではないのだろう。電力会社から札束で頬を殴られて喜ぶ人も居れば、憤然と反対して賛成派の多い町から出るに出られず孤立しながらも残った人も居たであろう。危険を知りながら住まねばならない矛盾と理不尽を自己解決出来ないで悶々と生活していた人々は、津波で亡くなった人々も含め人生のジレンマに今も悩んでいる事だろう。緊急避難エリアとして事故原発から半径20km圏内は死の町になって強制的に出て行けと言う。その外側の半径30km圏内は自主避難という馬鹿にしたような国の命令だ。踏んだり蹴ったりの人生だ。

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 仮にボクなんか其処に住んで居れば気が狂ってしまうだろう。とても住める環境ではない。ちなみに千年の都であった京都に生まれ育ったボクは、京都の風景は好きだったが、人間が嫌いで飛び出したぐらいだから今では他所者あつかいだ。小学校の同窓会にも50年間、行方不明者にされていたぐらいだった。京都という街は冷たいものである。半世紀過ぎて高校の卒業生名簿を観た同じ大学を卒業した同窓生がボクを見つけて知らせてくれ、初めて出席した同窓会で、担任教師は勿論、仕切っていた連中は気まずい顔をし、往時の元気だったボクの事を想い出し、弁解めいた言葉を発するのだった。50年経っても変わらない元気そうなボクの顔を観て、自分達の傲慢さに恥じ入るだけ少しは恥を知っていたのだろうか。

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 大きく成長し場違いになったボクを観て、何時までも同じ街で仲間同士でしか通じない言葉で交わす弱々しい会話は、矢張り他所者を観る目でしかなかった。古い街というものはそういうものである。自分達よりも出世した相手には羨望では無く嫉妬の目でしか見ない意地の悪い処が染み込んでいるのだ。だから旅行者は表面だけの京都を観て綺麗な街だと言うものの、他所者には住みづらい街だとも言う。千年の都という自負が町衆の誇りとなり排他的になるのは弱者の保身術でもあるのだろう。陰険に成らざるを得ない風土と知恵がふと出てしまうのだ。そんな小さな心なぞ気にせず無視するボクは彼等の強敵でもあるのだ。長い物には巻かれろ式で次第にボクのペースに乗せられる連中の中にも腹の内では抵抗する者も居た。

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 そして壁を造る。しかし、そんな壁なぞ吹けば飛ぶようなものでしかないのだ。公私ともに現実に自由奔放に生活している方が強い。小さな街で仲間内だけにしか通じない会話でしか生活出来ない連中には外の世界は眩しく価値観も全く違うのである。ささやかな庶民の生活を護るのも良いだろう。外の世界を見ようともしないのも勝手だ。ところが、そういう街に原発が来たとするなら一大事で大混乱になるのは必定だ。尤も、京都市内には海は無い。府の北部の日本海(宮津や若狭)には原発がワンサとあるが、其処は辺鄙な別世界で人の住む処では無い。精々、夏場の世界の言わばリゾート地だ。連中は海が無くて幸いだったと想う事だろう。これからも出来るだけ保守的で閉鎖的な街でありたいと想うだろう。

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 ボクは想うのだ。人間は自分の殻に閉じこもっていては大成しないし、外の世界を知ってこそ自分の殻の価値を冷静に判断でき、取り入れるべきは取り入れ、捨てるべきは捨ててこそ未来が開けるのだと。人生を寂しくも楽しくも出来るのは自分の心の問題だと。閉鎖的な処で満足していては原発の町と変わらない。一旦、地震や津波が来れば、いや、自然災害でなくとも黒船が来ただけでてんやわんやになってしまうのだ。自分の心をしっかりと冷静に見つめる事が出来るなら、現在の社会情勢や世界情勢を観て何が最適なのか何が最悪なのかは分かる筈である。義務教育程度で分かる事だ。悪い意味での村社会は先述したように自分達仲間だけが分かる言葉で通じあうと想っている処に弱点があるのだ。

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 表題の「寂しい人生と楽しい人生」を語る時、基準となるものは仲間内の地域社会だけでは無い。もっと目を大きく見開いて外界を観なければ、その普遍妥当性は無い。世界の誰もが感じる事の出来る基準というものが在る筈である。それが大自然に生かされている人間の考えるべき道であり義務である。子孫へ平和で安全な世界を残そうと想うならツケを彼等に残さない事だ。何でも先送りする、まるで機能しなくなった政府や役人社会を基準にしてはならない。夢のある未来にする為には現代を良くしない事には実現しないのである。今を良くする事で未来が開け美しい過去が築かれていくのだ。姑息で老練な大人達が無垢な子供達の目に晒された時、彼等は一体どう言って弁明するのだろう。恥を知れと言いたい。(つづく)

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