梅雨入り（６）
現場事務所が使えるように成ったのは６月に入ってからの事で、５月は梅雨入りが早かったせいで殆どが雨天だったから耐震工事は準備工事だけで終えてしまった。田舎の業者だから段取りが悪く、ヘマもやらかしたから思い通りには行かなかった。しかし、大阪府下の耐震改修工事は大分進んでいて、本庁舎、税務署、警察署、消防署、学校、その他公共施設の８０％は終わっている。学校は地域の避難所としても利用するから最終段階に入っている。それだけに校内の校舎棟の耐震改修工事は殆ど完了しているだけに慣れない業者であってもそれを観れば段取りは直ぐに分かるから難しい仕事では無い。夏休み中にほぼ完了してしまうから７月から８月に掛けてがピークで９月には最終仕上げ工事になる段取りだ。
一般に学校は夏休みを挟んで工事が為されるから暑い盛りの中の工事となる。それだけに体力の消耗戦になる。数年前にも別の府立高校で耐震改修工事をやった際も暑い盛りの頃だった。矢張り其処でも、学校側は事務局と教員との対立があって、お互いにけん制し合っていた。特に事務局は神経質になっていてピリピリと神経が張り詰め、定例工程会議でもその態度で臨んでいた。だから会議は暗いものになり勝ちで、言わば木端役人の能力不足を見せまいと虚勢を張るから、変な雰囲気が漂っていた。その点、同じ大阪でも大阪市の小学校の場合は事務局は無く、教員（校長と教頭）が対応して和気あいあいの雰囲気だったから定例工程会議もスムーズに進み、トラブルなぞ全く無かったのだった。
それを想い出すにつれ何と高校は阿呆な教職員が多いものかと想ってしまう。高校と言えばボクの高校時代を想い出すのだが、京都の公立高校の中でも屈指の学力校だったから教員レベルは高く教育熱心でもあった。その割には生徒は自由奔放で制服も無かったから伸び伸びしていた。３年間の学校生活で多分、校舎の改修工事はあったのだろうが気がつかなかった。６０年安保運動の頃だったから当然ながら耐震改修工事なぞ無く、精々、食堂棟の建設工事があったのを覚えている程度だ。今では東大・京大への合格者を毎年４０名近く輩出しているから、現在工事中の大阪府の高校と見比べると生徒や教職員の雰囲気が全く違う。幾ら教職員が定例工程会議で気取って威張り散らしてもボクには連中が馬鹿に観えてしまうのだ。
威張らず、もっと品良く紳士的に会議を進めれば彼等も賢く観えるのにと気の毒にさえ想えて来る。そういう覚めた気持ちでボクが会議を司会運営するから余計に苛立つのかも知れない。それはボクの偏見かも知れないが、むしろ大阪だけの問題では無く全国的に今の高校はそういう時代なのかも知れない。のんびりとしていた５０年も昔の時代と比べるのは可哀想なのかも知れず、まして、東北大震災や福島原発事故で政府や東電が嘘ばかり言って重大な状況をひた隠しにするのを目の当たりにすると、権力者や大企業というものが実にいい加減なものであるかが白日のもとに晒され、何れ責任問題が浮上するのが分かっているだけに連中はビクビクしながら如何に誤魔化すかで汲々とし、心の余裕なぞ全く無いのだろう。
そういう風に考えると木端役人が威張る時代は世の中がおかしくなっている事が分かる。当たり前の事が当たり前に行かず、体裁ばかりを繕い、結果が出無いのである。目先の些細な事にしか目が行かず大局を見据える余裕も無いのだ。まともな業者もまともな事をしていたのでは儲からず木端役人の顔色ばかり観るようになる。自信を持って堂々と仕事をすれば良いのに姑息な事を考え、亦は、田舎の業者故に従来の土建屋意識が抜けきらず間違った自分流のやり方でやるからヘマをやる事に成る。先日の休日作業も事前届けを出さなかった為に校内から追い出され、週初めに早々に学校事務局へ謝罪に行く羽目になる。お蔭で事務局の怒りは収まったが、余計に連中が威張る様になってしまった。
その結果が予想した通りサービス工事を無償でやらされたり、無理難題に近い工事の騒音規制を強要される事になる。ボクとしては業者に同情しつつも身から出た錆だから自分で解決するしかないと割り切って居る。尤も、業者も蛙の面に小便程度にしか堪えていないから、どっちもどっちだ。そう言えば昨日の国会は肩透かしの不信任案で、何とか首相辞任の時期がぼんやりと見えたものの、之もどっちもどっちだ。しがみ付く方も引き倒そうとする方も将棋の対局のようなものだから駆け引きの上手い方が最後に笑う事に成る。本当に国民の事を考えていたら権力闘争なぞ後回しになる筈が、そうも行かない処が政治屋の処世術なのだろう。悪名を轟かせて粘る首相を辞めさせる方法は政治資金規正法違反で決着を付けるしか無いのかも知れない。（つづく）
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