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階段(螺旋階段や直通階段など)

階段(螺旋階段や直通階段など)

 階段は建物が多層化した古代からあるもので、科学技術が発達した今日でも無くてはならないものだ。それだけに建築基準法では主要構造物としての規制が厳しく謳われている。安全性が重視されるからだ。歳をとって階段を登るのは一苦労だが、それでも階段しかないビルや尾道、神戸などの坂の街では内外を問わずエレベーターやエスカレーターが無い建物が数限りなくあるから、そういうところで生活している人は足腰が丈夫である。逆に考えれば、身体を鍛える為には坂道や階段を好んで歩けば良いことになる。昔の人はそれが当たり前だったのだ。現代人は全般的に脆弱になっているのだろう。

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住宅の螺旋階段(鴻池の家)上から観る

 まあ、憎まれ口はそれぐらいにして、ボクだって駅の階段よりもエスカレーターを利用する口だから偉そうなことは言えないのだが、エスカレーターは乗るものなのにわざわざ歩く人が居るのには困ったものである。東京では左側にジッと乗っている人が居るのに対して大阪は右側に居る。どちらが正しいのかは、どうでも良いことなのだが(右側にジッと乗っているのが正しいそうだ)急いでいる人は階段ではなくエスカレーターの上昇スピードも加算して登る。それだけ速く登れるからだが何か得をした気分になるのだろう。気ぜわしい話ではある。

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住宅の螺旋階段(鴻池の家)下から観る

 さて、宝塚歌劇のフィナーレの大階段でもないが、階段は華やかな面を持っている。画家のロートレックが階段から滑り落ちて足を悪くしたのは例外としても、風と共に去りぬのスカーレット・オハラが階段を抱っこしてもらって登るシーンなぞは有名だ。女性なら一度はそういう経験をしてみたいものだろう。男だって愛する人を抱えて階段を登るのはセクシーな気分にさせ大層高揚する筈だ。西欧でなくても日本でも通用するだろう。しかし、今時の男性は体力がないから、想いは実現しないのだろう。逆に女性におんぶに抱っこされる男性が増えているだけに情けない時代でもある。

階段
小学校の直通階段(土佐堀)

 今日は昨年完成したマンションと昔、設計した「鴻池の家」の螺旋階段をアップした。最後に、奈良長谷寺の古いスタイルの階段もアップしておいた。レトロな気分にさせてくれる処が良い。「鴻池の家」の奥さんは「まあ、こんな家を私は待っていたのヨ」と目を輝かせてボクのプレゼンテーション図面に見入ったものだった。女性は男性よりもロマンチストなのではないかと思ったものだ。最近はシャープでシンプルなデザインが好まれる時代だからオフィスでも住宅でも見た眼に細い階段が多い。構造的には同じ強度を持たせているから見えない処では鉄骨の骨組みにし、見える部分にはガラスやステンレスの手すりや腰板が用いられる。

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マンションの直通階段(京橋)

 マンションの外階段は容積率の関係で建物内部に設けず、床面積に算入されない外部に設ける場合が多い。それだけ容積率を稼いで居室を多く取る採算上の問題から来ている。つまり、機能性やデザイン性よりも採算性が優先するのだ。デザイナーにとっては法令や採算性は敵のようなもので建築家は当然ながら両方を意識しながら設計する。防災上、二ヵ所の直通階段が要るのは床面積が基準を越している場合だけだから姑息な設計者は出来るだけ一つで済むように考える。防災よりもクライアント受けを狙っているのである。そういう建築家の場合、ユーザーのことを真剣に考えていないから建物そのものも使い勝手が悪い。

玄関内部
木造住宅の直通階段

 しかし、ユーザーは災害時の身の危険を感じていればこそ下見に真剣になるから、そういう建物は直ぐに見破られてしまう。パッと見だけ良くても住んでみて初めて分かる欠点は後々気がつけば付くほど腹立たしいものだ。ホテルや旅館に宿泊する際、非常口や避難階段を見ない人は居ないと思うが、案外、綺麗な景色や雰囲気に騙されて気付かないままの人も多い。事故もなく無事に済むに越したことはないのだが、非常時(災害)というのは何時やって来るか分からないだけに常々注意しておきたいものである。備えあれば憂いなしというとおりである。

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長谷寺の長い階段廊下(奈良)




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