ココ の ブログ

リンゴ(7)

リンゴ(7)

 最近でこそボクはリンゴを包丁かナイフで皮を上手にスルスルと剥いてから六つに切って食べているが、ついこの間迄は手で半分に割ってそのまま皮ごと食べる事が多かった。半分に割るには可也の握力が必要になる。小学生の時に父が手でリンゴを割ったのを観て以来、真似てやるようになった。ところがボクの息子はそれが出来ないのだ。小学生の頃、悔しがって何度も練習をしたらしいのだが出来ずに泣いていたと妻が笑いながら話していた。青年になった今も多分出来ないのだろう。割っているところを観た事が無いからだ。そういう風に何でも父親に負けるので劣等感が積もり積もって対抗心から反抗ばかりしているのかも知れない。何時まで経っても大人に成りきれないのが哀れだが、自分で乗り越えるしか方法は無い。下手に手助けでもすれば逆に切れるか益々落ち込むだろう。

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 だから何も言わず無視するのが良いのだ。マザコンになったのも自分の心の弱さの表れなのだ。そういう処がボクの父に似ている。父は6人兄弟の末っ子で、兄や姉から可愛がられ両親にも甘やかされて育ったから長じて大人になっても子供の様な面が抜けきらず我ままばかり言っていた。それが反面教師となってボクは覚めた子供として育った。親の我がままなのと幼稚さが許せないのだった。青年時代になって家庭の事情もあって両親と別れて暮らすようになってからは益々その気持ちが強く成り、終生そういう関係で終えてしまった。だから自分の息子が父親に似ている点が嫌で仕方が無いのだ。因果なものだと思って居る。甘える男というのがどうも性に合わずボクの部下になった男連中は苦労した事だろう。しかし、それを乗り越えた部下は男も女も社会でリーダーになって活躍しているのだ。

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 だから、ボクなりの教育指導方法は間違っていなかったと想っている。今もたまに事務所の若い所員と呑み喰いをしながら話をする事があるが、最近は即戦力として使えるまでに成るのに時間が掛かり過ぎて嫌になる事がある。自分から相手の技術を盗んででも自分のものにする器量に欠けるのである。気概が無いというか軟弱な男連中が多過ぎるのである。それも時代のせいなのだろう。因みに、今はキャドで図面を描くから、昔の様にT定規で製図板に鉛筆で美濃紙やトレーシングペーパーに描いていた頃の話をしても分からず、生きた線や死んだ線の事を説明しても一体何の話をしているのだろうという顔をしている有様である。ディテールを描かせても現場での実戦が少ないか全く無いから、図面に迫力も無ければ説得性も無い。まさしく手でリンゴを割るようなスカッとした処が無いのである。

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 この夏、大阪南部の府立高校で耐震改修工事をしたが、施工業者の監督に早く施工図を描いて出せと指示してもなかなか出て来ず、困った事があった。何回も同じ事を言っている内に施工図を描いた事が無いという事が分かって、急きょ業者の社長に電話をして「施工図の描ける技術者をよこしなさい」と指示し、やっとまともな技術者が来たのだった。だんじり祭りの盛んな街の伝統だけはある建設業者だった割には、口ばかりで実戦が弱いと言うか技術的にお粗末だったから怒りっ放しで監理業務をしたのだった。お蔭で何とか無事に工事は終えたが、基本が成って居ず、態度も最後まで悪かったから府への業務評価はCランクにせざるを得なかった。大抵はAランクの評価で終えるのに残念な気がした。その点、中堅以上のゼネコンにはまともな技術者が居るものだ。それが当然なのだが。

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 彼等なら同じ監理をしていても無駄なくスムーズに行くから苦労は少ない。地方都市の地元業者は不勉強な者が多く、指導しても逆に文句を言う始末で馬鹿かと想う。祭りに命を掛けたり、だんじりを引きまわす気概があるなら仕事も一所懸命にやれと怒鳴ってやったが、何処まで理解したか分からない。偶然、NHKのテレビ朝ドラでその街の物語りをやっているのを観たが、綺麗な面ばかりを映しているので懐かしいと言うよりも程度の低い業者を目の当たりにしただけに嘘っぽく観えて仕方無かった。悪く言えば、例の戦後の青森ナンバートラックに中央市場で仕入れた安もののリンゴを満載して産地直送と偽って売りさばいていた悪質業者の様にさえ観えたものだった。もっと自信とプライドを持って仕事をすべきだ。勿論、その街の建設会社全部がそういう訳では無いとは想うのだが。

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 たまたま不良業者に出逢っただけの事かもしれないが、学校の事務局も府の担当者も呆れていた。地方の零細業者にはそういう程度の低い業者が多く、それでも一応、入札資格を持てば参加出来るだけに、最近では電子入札だから偶然、最低落札金額(通常、公示価格の75%)と同じ者同士が数件出れば抽選で決められるから受注できる場合もあって不思議はないのだ。入札資格はあっても肝心の人間の出来が違えば仕事の出来も違うから今回のような粗悪な結果になる。適正価格で落札出来れば会社の経営も何とか上手く出来るのだろうが、最低落札価格で落札するから最初から25%のダンピング工事となり、利益の出ないギリギリの線で仕事をする。どうしても粗悪な工事に成り勝ちで、監督も程度が低く成って行き、そういう悪循環を繰り返しながらやがては潰れて行く事になる。談合は無くなったが、電子入札だから良いとは限らない。(つづく)

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