名演プロムナード

名演プロムナード

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番



チャイコフスキーの曲には好きな曲がたくさんある。世界中にたくさんのファンがいることと思う。親しみやすいメロディーや、卓越したオーケストレーションで多くの曲が有名になっている。
私が特に好きな曲のひとつに、ピアノ協奏曲第1番がある。

1874年12月、チャイコフスキーが34歳のときの作品である。ピアニストのニコラス・ルービンシュテインに献呈しようとしたが、ルービンシュテインがこれを酷評したため、憤慨して献呈を取りやめた。

そして、指揮者でピアニストのハンス・フォン・ビューローに献呈した。この曲を高く評価したビューローは1875年10月に初演の指揮棒を振ることになった。
酷評したルービンシュテインであるが、後にこの曲を認め、ヨーロッパ各地で演奏し、この曲が広く親しまれる基礎を作ったとのことだ。

この曲が好きになったのは、リヒテルとカラヤンのLPを聴いてからである。このLPは評判が良かったので欲しくてたまらず、今は亡き父に頼んで買ってきてもらった。父は音楽好きではあったが、特に詳しいわけではなかったので、一抹の不安はあったが、ちゃんと間違えずに、買ってきてくれた。父を見直したものだ。
これを聴いて圧倒され、すっかりチャイコフスキー・ファンとリヒテル・ファンになってしまったのである。(カラヤン・ファンにはなっていない???)

ピアノの魅力を最大限引き出した曲のひとつといって良いと思う。堂々として力強く、光り輝き、ときに繊細この上ないピアノの変幻自在な響きが極上の料理のように次々と出てくる。
ピアニストにとっては難曲中の難曲なのだろう。しかし、それに挑戦して、見事に弾きこなす情景はアクロバットを見ているようなスリルを味わうことができる。
オーケストレーションも実に巧みだ。3大バレエに通じる劇的な構成をもち、ピアノとオーケストラで魅力を競い合っている。協奏曲であるとともに競奏曲でもある。

ウクライナ民謡「盲人の歌」や、フランスのシャンソン「楽しみ、踊り、笑うべし」を取り入れているという、メロディーの庶民性も大きな特徴だ。チャイコフスキーの旋律はどこをとっても親しみやすく、心に残る。ピアノで語られるメロディーは勿論だが、時折チョロチョロと木管楽器などが奏でるフレーズがいかにもチャイコフスキーらしくて魅力的だ。

このような素晴しい曲が作られるのは、チャイコフスキーの才能は勿論だが、私は数々のすぐれた作曲家を生んだロシアの風土に大きな源(みなもと)を感じるのである。

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: