地球温暖化とその日の天気



●「地球温暖化」とは
今ではTV、新聞でも頻繁に取り上げられ、この言葉を知らない人はいないでしょう。ところが、それを誤解している人が意外に多いのも事実です。一応、おさらいしておきましょう。

人類はその経済活動により、化石燃料を燃焼してエネルギーを取出しています。古来、人類は暖房のために木を燃やす程度の酸素消費及び二酸化炭素排出しかしておらず、それは自然界(植物の光合成)による二酸化炭素消費及び酸素放出のバランスの中で吸収できる範囲でしかありませんでした。ところが産業革命以降、工業の発達、自動車の普及、電気の普及(=発電所での燃焼)により化石燃料消費が爆発的に増加しました。結果、それに伴って排出される二酸化炭素が、植物の光合成(森林及び海洋)により取り込まれる量を大きく超え、地球の大気組成の中で二酸化炭素の濃度が年々増えつづけています。

地球の大気組成は概ね、8割が窒素、2割が酸素で、1%に満たない二酸化炭素とそれ以外の元素により構成されています。全体から見れば、二酸化炭素の組成は大きく変わっていないと言えるのですが、「温室効果」と呼ばれる二酸化炭素分子の熱エネルギー保持性が、他の元素より大きいため、大気の保温効果が増し、地球全体の平均気温が現在では産業革命以前より上昇している事が、科学者達の研究により明らかになっています。温室効果ガスは二酸化炭素の他にも、フロン類(オゾン層破壊でも有名)やメタン等があり、これらの人類の活動に起因する増加も、大気の温室効果を上げる原因になっています。

これら温室効果ガスの排出により、地球全体の平均気温が上昇する事を一般に「地球温暖化」と言います。これはあくまで「地球全体」の「平均気温」の上昇であり、各地域の統計的なばらつき(冷夏とか暖冬とか)とは直接関係無い事を、まず覚えておいて下さい。 


●気候変動
 「エルニーニョ現象」という言葉は、皆さん一度は聞いたことがあるでしょう。南米チリ沖の太平洋の海面温度が異常に(2~3℃)上昇する現象を指しますが、原因は良く分かっていません。ただ、これも地球温暖化現象の一部だというのが通説です。問題は、これによって大気の対流現象に平年と違う動きが現れ、地域によって干ばつや水害を引き起こすと言われている点です。また、上空のジェット気流のコースにも影響し、地球全体で暖冬や冷夏の原因ともなると言われます。

このように、地球温暖化とは、ただ地球全体の平均気温を上げて南極の氷を融かすというだけではなく、上述のような異常気象を引き起こすものです。「温暖化」というと干ばつとか砂漠化だけと思っている人も少なくないかもしれませんが、気候変動により、地域によっては水害や冷夏といった、温暖化という言葉とは逆の影響が現れる事も全て含まれます。

ただ、これは前述のような、人間の産業活動により発生する二酸化炭素の量と同期しているため通説となってはいますが、それもたかだかここ200年とかの単位の統計でしかなく、地球規模の気候変動は、何百万年も、何億年も前から氷河期と温暖期を絶えず繰り返しながら起こっている事を考えると、人間活動と気候変動を直結するのも、実は短絡的で、人間のある種の驕りではないかとも、個人的には考えています。

もちろん、地球の大気は玉子を地球に例えれば殻の厚さ程度しかなく、わずかな(前述のように、過去も現在も99%は窒素と酸素です。二酸化炭素他、温暖化ガスの増加は0.1%とか0.01%のオーダーでしかありません。)組成の変化によりその微妙なバランスが崩れてもおかしくはないのですが、この統計が地球の悠久の時間の流れの中のごくごく一部(4億年の中の、この200年)でしかない事を考えれば、偶然、小温暖期に向かっている時期と重なっただけかもしれませんし、「異常気象」と言っているのは人間だけで、今起こっている程度の気象の変化や変動は、地球全体の生態系から見てもごく普通の振れ幅でしかない可能性も高いのです。豪雨で川か氾濫しても、そこに人間がいなければ誰も「水害」だなんて言いませんし、全て人間の都合で考えられているような気がしてならないのです。

かといって、どんどん温暖化ガスを吐き出して良いとは思いません。実はそれに伴って排出される有害物質(例えば自動車からのSOx、NOx)や煤塵も大きな問題であり、その方が直接人間や動植物の生体に有害なので、それを抑える方が実は大事だと思っています。そして、化石化燃料に頼った現状の人類の経済活動自体を見直す意味でも、太陽光発電や風力発電、低公害車やハイブリッド自動車のような、所謂「環境にやさしい」製品や、産業構造になる事を、小生は夢見ています。

●ヒートアイランド現象
 次に、この言葉について述べておきましょう。これも近年、新聞、TVで盛んに取り上げられる言葉ですね。特に夏場、都市部の温度(地表温及び気温)が周辺より異常に高くなり、温度分布で見るとまるで「熱の島」のように浮き上がってくる事を、このように呼んでいます。

原因はほぼ明らかになっており、次のようなものです。
(1)土や緑地の代わりにコンクリート、アスファルトの構造物が大半を占め、熱を蓄え易い。
(2)自動車や工場等の熱源が都市部に集中している。
(3)エアコンの普及により都市部でのエネルギー消費が急増している。

この中で特に(3)のエアコンです。自動車が走れば熱を出す、というのは皆さん理解し易いでしょうが、エアコンを使うとなぜ熱くなるのか、ピンと来ない方もいるでしょう。

そもそもエアコンは、電気の力で圧縮機を回して空気を圧縮し、それが膨張する時の吸熱効果により冷やした冷媒を循環して、冷たい空気を室内に供給している訳ですが、室外機の吐き出す空気が異様に熱いのを気が付いた方もいるでしょう。単純に考えても、室内には冷気を供給しますが、屋外には熱い空気を吐き出し続けているのです。ここで「窓を開ければ結局、熱い空気と冷たい空気が混ざって元に戻るんでしょ?」という勘違いをしてはいけません。吐き出している熱風の熱量の方が、冷気によって相殺される熱量よりずっと大きいのです。

そもそも、上述のようにエアコンを回す時は必ず電気(エネルギー)を使います。エネルギーは、何も無い所からは生まれないし、消えて無くなる事もない、というのは高校物理で習った通りですが、要するに使った電気はどこへ行ったのか、という事です。そう、吐き出される熱風の「温度」に変わって放出されているだけなのです。つまり、ざっくり言えば:(排気の熱)+(室内の冷気)=(元の空気の熱)+(電気から変わった熱)という関係が成り立っているのです。簡単に言えば、夏場にみんなして、エアコンが消費している電力と同じ電力の電気ヒーターを回し続けているのと同じ、という事です。寄ってたかって夜中までエアコン付けて、街の空気を熱し続けている訳です。

だから、持論ですが「真夏に皆で一斉にエアコンを消せば、気温は3℃下がる」と小生は考えるのです。ちょっと思い出して下さい、ほんの15~20年前、夏場の最高気温は東京で、30~31℃がせいぜいだったでしょ? 32℃なんていうと、「うあ~、暑い」と言っていたものです。扇風機があれば(うちわぐらいでも)充分しのげましたよね。ところが最近は、35℃とか36℃なんて平気で出ますよね。最低気温も熱帯夜も通り越して27~28℃とか。これは異常です。

しかも、決して「地球温暖化」のせいではありません。間違えないで下さいね。「最近の夏は暑いねえ。地球温暖化かねえ。」なんて言っているあなた、大間違いです。暑いって、皆で一斉にエアコン付けるんですから、余計暑くなって当たり前です。「天に唾吐く」とか「自分の首を絞める」っていう表現が、正に適しています。要するに、エアコンやめれば気温も下がるんです。

「でも、暑いからつい・・」っていうのが人間の愚かなところで、便利さや快適さに慣れるとその水準からは落とせなくなる。そうして発電所では化石燃料をガンガン燃やして、それでも夏場のピーク時には電力が不足し、さらに燃やそうとする。エアコンを止める事が、地球温暖化を防ぐ最も効果的で身近な方法だ、と言っても多分、誰もついて来ないでしょうね。ウチはこの夏は、殆どエアコンを使いませんでした。<母>と菊華さんが頑張ってくれたのと、「暑い時は暑いのが良いんだ!」と言い張る小生の強情さに負けたのでしょう。

皆さんも地球温暖化防止に少しでも貢献しようと思ったら、今度の夏はエアコンを我慢して下さい。確実に貢献できます。

●あなたの町のその日の天気
 前述までに殆ど説明してしまいましたが、もうお分かりですね。気象というのは殆ど統計学の世界であり、「降水確率10%」の予報でも10回に1回は雨が降る訳です。あなたの住んでいる場所がたまたここの数年暑かったから「地球温暖化」だとか、大雨だったから「異常気象」だとかっていうのは、そもそも違うんですね。それは、あなたの町の「その日の天気」や「その年の天気」でしかないのです。

それを百年も千年も記録を取って統計として見た時に初めて、「この年は異常だったね」と言えるので、よく天気予報で聞かれる「観測史上最も~」という言葉を聞かなくなった頃にやっと、「平年」に対して「異常」かどうかが言えるようなるのです。まあ、それも4億年の地球の営みの中ではほんの、ごく一瞬の出来事ですけど。

平成14年12月27日

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