Jive the Keys

勝手な感想付きで、もちろん小田さんの出番を中心にお届けするライブルポ
Jive the Keys
FUNKY802 14th Anniversary Special
2003.06.01
於:大阪城ホール


アリーナの片側にステージが設営され、その前のアリーナ席と、さらにそれを360度囲むスタンド全体が客席になっている。
ステージの客席側は、巨大なピアノの鍵盤の形になっていた(らしい)。
残念ながら、私の席はステージ斜め後ろのスタンド後方。その鍵盤はよく見えなかった...

ステージ中央に2台向き合う形で2台のグランドピアノが置かれている。
その後ろでパーカッション、ベース、ギター、オルガン等の演奏が行われる形。

定刻の5時を少し過ぎ、ようやく客席が埋まった感じがしたころ、FM802DJのヒロ寺平がスーツ姿でステージに登場。
(ラジオでよくこの人のDJは聞いているけれど、実物は初めて。あの声は、この顔、身体から出ていたのかと感心する)
今日のライブは静かなライブになるはずなので、携帯の電源はマナーモードではなく切っておくこと、長いライブになるが、用を足しに行くのは曲の途中ではなく必ず曲の合間に行くこと、等、鍵盤を中心として音楽をじっくり聴かせるライブであることを強調。
その言葉どおり、それぞれのアーティストが音の一つ一つ、歌詞の一言一言を心を込めて聴かせる、静かでなおかつ熱い、ちょっと緊張感の漂う大人のライブとなっていく。


   orange pekoe
   「やわらかな夜」
   「やさしさに包まれたなら」
   orange pekoe&矢野顕子
   「いいこ いいこ」

「orange pekoe」という男女二人組み、名前はどっかで聞いたことがあるけど、、、1曲目もどこかで聞いたことがあるけど、、、と思っていたのだけど、家に帰ってから、以前にFM802のヘビーローテーションで流れていた曲であることを思い出した。独特のムード漂う歌声。

  鬼束ちひろ
   「月光」
   「青春の影」
   「Sign」

今日はこの人目当てできた人も多かったようだが、私は最近新曲をテレビで歌うのを立て続けに見たくらいのもので、あまりよく知らなかった。熱唱する姿は鬼気迫るものあり。「月光」でうずくまって歌う姿を後ろから見ているとちょっと怖かった。「青春の影」は財津さんの飄々とした歌い方とは違い、力強いというか迫力があるというか...こういう「青春の影」もなかなか(たまには)面白いものだ。

  ハナレグミ(永積タカシ)
   「音タイム」
   「サヨナラCOLOR」
   「いかれたBABY」
  リクオ&ハナレグミ
   「ミラクルマン」

スミマセン、この人たちのことは全然知りません。でも初めて聴く曲ばかりだったにも関わらず、リズミカルな演奏、見かけよりも硬派な素敵な歌声に引き込まれた。スキップでファンキーに登場したリクオ氏の歌うような踊るようなピアノは素晴らしい。リクオ氏のMC「港港に女がいる、ではなく、全国の港港にピアノがあるが、今日は大阪でも一番良いピアノを用意してもらった」。深い響きの音が印象的なほうのピアノを「響子」、割合乾いた音に聞こえるピアノのほうを「みゆき」と命名。「みゆき」で軽快に奏でた「ミラクルマン」は圧巻だった。ピアノ弾きながら片足振り上げてたぞ。

  矢野真紀
   「恋におちて」
   「タイムカプセルの丘」
   「時代」

またまたスミマセン。この方はどなたですか?太さのある声の素敵な、お上手なボーカルではありましたが...最近こういう歌い方の女性ボーカリストが多すぎて、よく区別がつかないのだ。言ってみれば、先の鬼束ちひろもこの人も同じ部類の歌い方のような...個人的には嫌いではないし、あんな歌い方ができることが羨ましくもあるのだけど、あまりにみんながあの歌い方なので、いささか食傷気味。オリジナル曲という「タイムカプセルの丘」は心に響くメロディーと歌詞で気に入ったけど。「時代」は2番の歌詞をちょっと間違えてたよね(指摘マンのおばハンです)。みんなが知ってる歌のカバーは、大変だね。

  佐藤竹善
   「真夜中のギター」
   「HOLD ON」

シークレットゲスト。レコーディング中にもかかわらず駆けつけたそうな。私はよく知らないけれど、竹善氏はFM802の人気番組を持っていて、こういう802のイベントには欠かせない人物ということで、場内湧き上がる。登場を予測していた人も多かったようだが。ステージ裏のお客さんに向けて、「お尻を向けてしまいますが、僕はお尻には自信があるので」と言って笑わせる。「真夜中のギター」は、インドの弦楽器(だったっけ?)を入れてアレンジに工夫をしたということだったが、歌い方は普通だった。竹善氏の生声を聴くのは初めてだが、素晴らしい伸びと透明感。CDより生が、やっぱり良いね~。SING LIKE TALKINGのオリジナル「HOLD ON」は素敵だった。この曲のピアノは、竹善氏と二人で「SALT&SUGAR」というユニットを組んでいる塩谷哲氏。「SALT&SUGAR」と言えば、オフコースのトリビュートアルバムを思い出してしまう私。ひょっとしてここで小田さん登場か、「生まれ来る子どもたちのために」などやってくれるのでは、とひそかに期待したが、ハズレ。

  森山直太朗
   「さくら(独唱)」

シークレットゲストその2。思わぬ旬の人の登場に、場内から「フォ~」と言ったような低いざわめきが波のように広がった。ここまで登場のアーティストは、みんな2,3曲は歌ってきたが、この人と言えば「さくら」しかないやん、と思ったら、やっぱりこの曲だけを歌って早々に引っ込んでしまったのが笑えた。この曲、初めて歌詞をじっくり聴いた。やっぱり生は良い。でもファルセット部分はあんなに多くなくていいのになあと、この曲を聴くといつも思う。男性はファルセット流行りで、女性は地声ツッパリ系の歌い方が流行りなんだよねぇ。

  小谷美紗子
   「さよなら」
   「ON MY LITTLE GIRL」
   「Off you go」
  小谷美紗子&宮沢和史
   「からたち野道」

小谷美紗子といえばオフコースのトリビュートアルバムの「さよなら」のカバーしか知らない私。今日もしょっぱなからピアノの弾き語りでこの曲を...CDで聞いていたときはちょっと(いや、かなり)...と思っていたけど、生で聞くとこの人の個性が際立って迫力があってなかなか良かった。尾崎豊を歌うのにはびっくり。ピアノを弾かないと手持ち無沙汰なのか、スタンドマイクの前で、手を後ろで組んで突っ立って歌うのはかなり奇妙に感じられた。なんたって尾崎の曲だもの。塩谷氏とのピアノ連弾でのオリジナル曲はやはり水を得た魚という感じで生き生きとしていて、これがこの人の世界なんだな~と納得。宮沢和史と一緒に歌うのを聞いてみると、普通の歌い方もできるんやん(あたりまえか)。デュエットはなかなか美しかったです。
それにしても、小谷氏の曲の合間に、席を立つ人の多かったこと!曲の終わるたびに民族大移動が起こっていた。開演からすでに2時間半近く経過していたし、場内はかなり冷えていたし、何よりこの後の大物アーティストの登場に備えたいというのはわかるけど、ちょっとあんまりにも、でした。


  川村結花&堂珍嘉邦(chemistry)
   「春夏秋冬」
   「朝焼けの歌」

シークレットゲスト。特に堂珍氏の登場には、会場からワァ~っという声が。奇妙な取り合わせに感じられる二人だが、川村氏のアルバムレコーディングを堂珍氏に手伝ってもらったつながりとのこと。今日はそのアルバムからの2曲。川村氏のピアノ伴奏での「春夏秋冬」、今までのこの曲のイメージとはかなり違っていて面白かった。二人のハーモニーが美しい。川村オリジナルの「朝焼けの歌」は、歌もピアノもかなりの迫力。川村さんてすごいんだと改めて思った。

  小田和正&川村結花
   「夜空ノムコウ」

このライブは、前の出番のアーティストが、次のアーティストを紹介してバトンタッチするという形で進行するのだが、堂珍氏が退場してステージに一人残った川村氏が「この大先輩の音楽、活動で、私達はどれだけ励まされてきたことでしょう」と言い始めると、早くも会場から「小田さ~ん!」の声が...
川村氏の「小田和正さんです!」という声で、勢いよくステージに飛び出してきた小田さん、ステージ中央のギター席まで来ると、いつものあのご当地喋りで「お待たせしました!皆さん、楽しんでますかぁ?」とハイテンション。張り詰めていた感じの会場の空気が一気に変わった気がした。
続けて小田さん「いや、楽しんでるはいいんだけど、ずっと楽屋でイライラして待ってたんですよ~。長いからね~」などといきなりぶつぶつ。小田ワールド炸裂。ピアノ前に座っている川村結花の存在をしばし忘れたかのように、喋る喋る。その後のおしゃべりは、順番をかなり忘れたので、思い出すままに書いてみると...(細かい言い回しも違っていると思いますが)

小田、川村を振り返って「さっきの『朝焼けの歌』、すさまじい歌でしたね~」。
川村「え?すさまじかったですか?」
小田「うん、すさまじかった」
川村「楽屋に戻るのが怖いような...何か言われそうで...」

楽屋といえば、小田さんこんなことも。「今日のライブは、楽屋に戻ってくると、他のみんなが拍手で迎えるんですよ。素敵です。昔○○や○○(注:アーティストの名前なんだけど、誰だったか忘れた)とジョイントやった時は、楽屋に帰ってもみんな知らん顔で、つーんとしてたものだけど」

川村と小田がコラボレートするきっかけについて...
小田「彼女が作った曲を僕にプロデュースしてくれって、彼女から申し出があったんですよ、厚かましくもですね。それで、僕が引き受けて、色々考えてそれを伝えるんですけど、いちいち彼女からいちゃもんが来るんですよ。それで、もう僕はキレましてね、もう俺おりるって。自分でやってくれって、そう言ったんですよ。」
川村「え?そうだったんですか?知らなかった」
小田「そうだったんだよ。そしたら彼女、慌てて『私はそんなつもりでは...』って。それで顔合わせて話してね、それまでは顔合わせずにやってたから。それで仲直りしたんですけどね。あの、プロデュースした曲、なんだっけ?もう、この頃すぐに忘れちゃうんだよ」
川村「ビューティフル・デイズ」
小田「そうそう、『ビューティフル・デイ』」
川村「『デイズ』です。ズがつくんです」
小田「それも機会があったら皆さん、聞いてみてください」

お尻を向けてしまうことになる、ステージ後ろのお客さんに対して...
「さっき竹善がお尻を自慢してたけど、僕のお尻のほうがもっとかっこいいですから」(でも小田さん、座ってばっかりだったから、お尻は見えなかったよ)

途中、ギター席の横にペットボトルの水が置いてあることに気付いた小田さん、「ここに水があった。(手を出そうとして)あ、これ誰かの水だったのかな?ヤッベ~!」(いえいえ小田さん、アレはちゃんとスタッフが小田さんのために用意したものでしたよ。)そのあと小田さん、ちゃんとその水飲んでましたが。

「夜空ノムコウ」について...
小田「この曲は、もう本当に大好きで。彼女が曲を作ったんですよ。この曲聴いたときは、日本にもこんなにいい歌ができるようになったんだって感心しましたね。詩を書いたスガシカオ君にはまだ会ったことがないんですけど、会ったら『夜空ノムコウ』は名曲だって言う、用意はしてますけどね(笑)」

小田さんのギター、川村さんのピアノで二人が歌った「夜空ノムコウ」はハーモニーも美しく感動ものでした。小田さん、この曲は間違わなかったようだし(笑)。


  小田和正
   「風の坂道」

川村氏が退場し、一人ステージに残った小田さん、ペットボトルを手にピアノ(響子ちゃん)前に移動。座るなり「次の曲の歌詞がここに用意してあると思ったんですけど、ないですね~。きっと間違うと思いますが、そんなことは気にしないで聞いてくださいね。」
そう言いつつ、ピアノを始めたきっかけを喋りだす。
「今日は、ピアノの上手な人がたくさん来ていますが、僕はピアノをちょっと触る程度で...初め、バンドでギターをやってたんですが、もっと音の広がる楽器をということでピアノを始めたんです。初めはギターと同じようにコードを押さえてたんですが...。コードって、わかりますか?」と言いながら、ジャンジャンとコードを押さえて見せる。「ほら、これだとなんだか濁った音になるでしょ?それで、色々他の人のを聞いてみて、あ~左手でベース音というものを弾いて、右手でぱらぱらと弾くんだなあとか勉強して...」
2,3、コードを弾いて確かめてから「こんな曲で練習したりしました」と、「Let it be」のイントロを弾いてみせる。続いて「キャロル・キングなんかもやってみたりしたけど、知らないよねぇ」と言いつつ、キャロル・キングの曲らしきものもワンフレーズ。
ここで、照れたように笑いながら「どうしてこんな風にウダウダ言っているかと言うと、ウダウダやってるうちに歌詞が届くんじゃないかと...でも、そんな心遣いはまったくないようで...絶対間違うと思うけど、やりますか」
そこへ、スタッフが大急ぎでやってきて小田さんに歌詞カードを渡す。
小田さん「また、字が小さいんだよなあ。でもこういうものを用意してるんです」と眼鏡を取り出してかける。
そんな風にして弾き語りを始めた「風の坂道」。それまでの演者のピアノがすごかったせいか、ごくシンプルな構成のピアノに感じられる。一部、あれ、コードのアレンジを変えたのかな?と思う部分があったが、演奏が終わってギター席に戻るなり、小田さんが「間違えました」と言ったところをみると、アレは多分コードを弾き間違えたのだろう。


  小田和正&矢野顕子
   「言葉にできない」
   「中央線」
   「中央線」(やり直し)

「風の坂道」ピアノ弾き語りを終えて、中央ギター席に戻った小田さん、また喋り出す。
「この前、早稲田大学でライブをやったんですが、その時早稲田のパン屋さんで、美味しそうなパンがあるかなあと物色していた時に携帯が鳴りました。見てみると『通知不能』となっているんです。『非通知』ではなく『通知不能』。国際電話ですよ、ニューヨークからの...」
この前フリで矢野顕子を紹介。登場した矢野さん、ピアノ(みゆきちゃん)の前に座る。以下、二人のかみ合わないトークを思い出すままに...

矢野「こういうジョイントライブに呼ばれると、最近はもうたいてい最年長なんですが...」
小田、話に割って入って「もう、オチが見えてるよ」
矢野「いや、そうじゃなくて、二人の年齢を足すと、今日出ている若い人たちの歳を4人分足したくらいになるんじゃないかと」
小田「なんで足すんだよ。足してどうするんですか(笑)」
矢野「いえ、このユニットを特徴づけようと思ったんですけど」
小田「あぁ、ユニットね~」

小田、前後の脈絡なくいきなり「どうして君はニューヨークに住んでるの?」
矢野、突然の質問にびっくりした様子で「え?!え~っと、まあふとしたきっかけがありまして、え~~っと、まあ色々と......夫の仕事の都合ですね」としどろもどろ。
小田「で、日本はどうですか?」
矢野「食べ物がおいしいですね」
小田「いや、そういうことじゃなくて」
矢野「え?そういうことじゃないんですか」
小田「アメリカから見た日本はどうですか?」
矢野「う~~~~~~ん......ピッチャーの投げる球が遅い」
小田「あぁ、大リーグは上手ですからね」
矢野「いえ、そういう意味じゃなくて」
小田「そうじゃないの?」
矢野「生活のすべてがゆっくりということで...」
小田「ふぅ~ん」とそっけなく。
小田「でもこうして二人で話してるのも不思議な感じで。こうしていると、親しいように見えるでしょうが...」
矢野「え?親しくないの(笑)」
小田「だって、実際に会うのって、まだ3,4回くらいでしょ?」
矢野「あぁ、そうですね」

小田、ギターを手にしながら「本当は二人でピアノを連弾して勝負したらいいんだけど、負けるのがわかってるからね~」
そう言った途端、ギターを置いて席を立ち、さっき弾き語りをしたピアノのほうへ行く小田さん。もしかしてピアノ競演か、と一瞬拍手が起こったが、置き忘れた老眼鏡を取りに行っただけだった。な~んだ。

小田さんギター、矢野さんピアノでの『言葉にできない』。ワンコーラス目は小田さんがメインで、2コーラス目は矢野さんが。矢野さんの「♪切ない嘘をついては~」は予想通り、完全に矢野節。別の曲のよう。さすがにハーモニー部分は崩さずに歌うけれど...
終盤に差し掛かり、小田さんが「♪あなたに~」と声を張り上げた時の出だしの「あ」の音がふらついてたなあと思ったら、小田さん突然歌をやめ、素っ頓狂に「間違っちゃったぁ~!」とギターもやめてしまった。「小さなミスなら知らん顔するんだけど、こんな風に盛り上がっちゃったんじゃ、このあともうどうしようもない」などとぶつぶつ。でもさすが矢野さん、小田さんが演奏をやめてもくねくねと身体をゆすりながらピアノを弾き続け、歌うように「まちがってないんじゃないですかぁ~?」と...
しばらく間をおいて、小田さん、矢野さんの弾き続けていたピアノに合わせながら「♪あなたにあえて~」と歌いだし、なんとか無事に最後まで。矢野さんのおかげです、という感じ。
曲が終わって、小田さん「これが年取るということです。歌ってる途中で歌詞とかメロディーとかわからなくなっちゃうんだから。」
さらに小田さん「ちゃんと練習したんですよ~」と。
矢野さん「ねぇ、私たちいっぱい練習しましたよね」
小田さん「いや、私たちじゃなくて、僕が個人練習をいっぱいやったんだけど」
矢野さん「......」
気をとりなおして矢野さん、フォローするように「でも、小田さんと話してると、あぁそれそれ、あるあるって、なんかホッとします」といったようなことを。それに対して小田さん「何言ってるのか、ぜんぜんわかんないけど」

ミスにかなりいじけた様子の小田さん「どうせ次の曲も間違うし...」。
それに対して矢野さん「いいじゃないですか。どうせ次は人の曲だし」。もう、さすが大人!私が矢野さんならとっくにキレてるなあ。
でも、小田さんが「言葉にできない」を間違えたのは、あまりに矢野節になっていた2番に撹乱されたのでは、という気もしますが。

さっきと同じ矢野さんピアノ、小田さんギターでの宮沢和史作詞・作曲の「中央線」。とても素敵な曲だった。矢野さんはそんなに崩して歌うことなく、2人のハーモニーもきれい...
でも、なんだか小田さんのハモリが少ないというか、中途半端な感じが。
最後まで歌い終わるなり、小田さん「すみません、間違えたのでもう一度やらせてください。宮沢君もいるし、ちゃんとやったんだってところを見せたいから。」これに対して会場からはためらいがちの拍手が。私は、この曲が2度聴けてラッキーだなと。
小田さん、矢野さんを呼び寄せ、二人でなにやら譜面を指差して打ち合わせを。
そして始まった2度目の「中央線」。あれ?矢野さんの出だしの部分のピアノ、スタッカートになってる。さっきとは弾き方が違ってる?矢野さん、とっさにアレンジを変えたのかな。プロですなあ。
やり直したこの曲、やはりハーモニー部分がさっきより多く美しく、いっそう素晴らしかった。
小田さん、恐縮しながら退場。


  矢野顕子
   「ひとつだけ」
   「ばらの花」

2曲とも、もちろんピアノ弾き語り。どちらも紛れもない矢野節になっていたが、1曲目は矢野自身の作詞・作曲だが、2曲目は「くるり」というバンドの、他の人の作品。
矢野氏いわく「ライブなんかでは、放っておくと8割くらいは他の人の曲をやるんですが。人の曲をね、勝手にカバーして。それで、たとえば小田和正さんの『夏の終わり』をカバーしたんですが、ピアノのところに置いた譜面に、いつのまにか、『作詞・作曲 矢野顕子』ってしっかり書き込んでるんです。別に悪気があってやってるんではないですよ。そう、思い込んでしまうんです、私の曲だって。それで、さっきも宮沢君が私の譜面に『作詞・作曲 矢野顕子』って書いてあるのを見て、『これ、僕の曲です』って。『え~、違うよ、私の曲だよ』って言ったんだけど『いいえ、僕のです』って。(笑)」
「ひとつだけ」という曲について、「これは間違いなく自分の曲だと...え~っとちょっとまってね~、もう記憶が曖昧で...そう、これは自分の曲です」と。
でも、あれだけどんな曲を歌っても完全に矢野節にしてしまう彼女は、作詞はともかく、どの曲も「作曲 矢野顕子」でいいんじゃないかなあと思ってしまったのだった。あそこまで行くと、もうあっぱれです。


  宮沢和史
   「ゲバラとエビータのためのタンゴ」
   「涙そうそう」

「アストロリコ」というタンゴのバンドを引き連れ、硬い真面目なムードで登場した宮沢氏。トリを努めるにふさわしく、コメントも硬い硬い。まあね、最後を締めるにはこうでなくちゃね。もしトリが小田さんだったら、ダラダラいつまでも終わらないかもしれないしね(笑)
1曲目のタンゴは、宮沢氏が自ら作った詩をタンゴにあわせて朗読する形。時事問題を詠み込んだ、シリアスな内容。なぜか、舞台に置いた台に片足をあげて(タンゴだからか?)、良い声で詩を読む宮沢氏。ほーんとに良い声!でも歌って欲しかったような。「涙そうそう」もよかったけど、声を押さえ気味にしないで、もっと思いっきり声を出して歌ってくれるほうが私は好きだなあ。


  宮沢和史&矢野顕子
   「島唄」

宮沢氏が矢野顕子氏のことを「デビュー前からずっと憧れていました。僕がデビューしてから、このFM802と同じく14年なんですが、その間ずっとあるときは叱られ、またあるときは叱られ(笑)、そしてたま~に誉めてもらったりしてきました」と紹介。
「島唄」について、「歌というものは、それを歌っている人がいなくなると、人々の記憶に残っていくだけになっていくんでしょうが、この歌はずっと歌い継いでいきたいと思っています。今日は静かに聴くコンサートという趣旨ですが、良かったら皆さんも一緒に歌ってください。」と宮沢氏。
そして、矢野氏のピアノに合わせて三線を弾きながら「島唄」を熱唱。でも、とてもみんなで一緒に歌える雰囲気ではなかったぞ。

こうして、最後のアーティストの二人が退場。暗くなったステージに向かい、ためらいがちにまばらなアンコールの拍手が起こる。いったいこういうイベントはどんな形で終わるのだろうと...
そこへ、DJのヒロ氏登場。「今日はどのアーティストも忙しいスケジュールを調整して来てくれているのでアンコールはありません」と。長いライブだったけれど、最高のアーティストで最高のステージができたということを感動的に...
「全部で31曲...いや、リピートもあったので32曲です」という紹介に、場内から笑いが。
最後に、今日出演のすべてのミュージシャン(バックのバンドを務めた人たち)とアーティストがステージに登場。 小田さんは最後から2人目。舞台の前を向いてお辞儀する彼らに、ヒロ氏が「後ろの人たちにも」と促したが、そう言われるか言われないうちに、どのアーティストよりも早く後ろを向いて手を振っていた小田さんはさすが。後ろにいる客の扱いに慣れている(笑)。最後は、一番端にいた宮沢氏の背中をつついて退場をうながしていた。さすが~~。

こうして4時間近くの、長い、感動的なライブは終了。
このライブの模様は、6月28日(日)21:00~24:00、FM802でオンエアされるそうです。電波の入る方はぜひチェックを!


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: