こころの金メダル

こころの金メダル

Mの骨折

Mの骨折


【出来事】

 5月の下旬のことだった。

とてもいい天気の日で、15分休みの時間、みんなは外で元気よく遊んでいた。

「ふ」は教室で、漢字の宿題のノートを見ていた。

その時、女子が数人、教室に飛び込んできて、「先生!M、ジャングルジムから落ちて、手、打ったで!」と言った。


 顔の表情が険しかったので、普通のケガではないことはすぐにわかった。

グランドに出てみると、Mがうずくまっていた。

腕がおかしな曲がり方をしている。

苦痛に顔をゆがめるM。そうとうな痛みが走っていると思われた。

 病院に行った結果、「骨折」と判明した。



【その後・教室で】

 みんなに、Mが骨折したことを伝える。その時の様子を5月24日の「こころの金メダル」NO.23に次のように書く。


人間の「こころ」


「こころの金メダル」より


休み時間に、Mが遊んでいて右腕を骨折してしまった。

4時間目の社会の時に「ふ」が、みんなにそのことを言うと、みんなの顔が本当に「え~」っていう心配そうな顔になった。

特にAの顔がそうだった。この、みんなの顔を見た時、「ふ」はとてもうれしかったです。

みんなのやさしさが教室の中の空気を伝わって、「ふ」のこころの中に入ってきました。


 そして6時間目、「ふ」が何も言わないで(わざと)紙を配り始めるとBが小さな声で「Mやろ」と言った。

「ふ」は、またまたうれしかった。

B(他にもたくさんいたと思う)は「ふ」が紙を配り始めた時にもう、「あっ、先生は『Mのこと書け』って言うんやな」と、わかったんやね。

「ふ」の気持ちを読んでいたBの気持ちに拍手!と涙。


 それから、みんなで手紙を書いた。

1人1人の「こころ」が入ったものですね。

途中で「ふ」がこういう質問をした。

「骨折をして、とてもとても痛くて悲しい思いをしたMが、得をしたことって何かわかるか?」

「右手が使えないから、宿題をしなくてもいい」という意見が出た。

「ふ」「そんな問題やないやろ(笑)」

 みんなは、わからなかった。その後、Cが、前のクラス目標を指さして、「人の痛みがわかるようになる」と言った。


 その通りです。痛くて悲しい思いをしたMは、今度は、同じ痛みや悲しみを持った人に対して、こころから「だいじょうぶか?」と言えるんです。

これが、Mが得たものです。みんなは、どう思いますか?





 この時の教室の中は、なんと言うか「やさしさ」にあふれていました。

子どもの素直さと純真さに、とても感心し学ぶことが多かったです。

こういう
「純」な気持ちを、こういう出来事を通して、こちらが投げかけていって育てていけたらいいなと、いつも思っています。




【Mへのメッセージ】

*イスでひじをうった時でも痛いのに、骨を折ったら、すっごく痛い気持ちがわかったよ。

私も、足切って、縫ったりしたから気持ちはわかるよ。

みんなと遊べなくて不便だと思うけど、がんばってね。



*骨折して、これから大変だと思うけどがんばってね。

「字」とかご飯とかがしにくいと思うけど、クラスのみんなで応援するね。

私には痛さがよくわからないけど、クラス目標で「人の痛みやしんどさがわかる子」で、少しはわかるよ。

痛いと思うけど、がんばってね。



*何か不便なことがあったら、私たちに言ってね。


*骨折したのが「利き腕」(右)で大変だね。

お風呂や食事など、みんなと一緒にできないことが、とても悲しいね。

でもいつかは治るからね。これからがんばって生活していけば、大丈夫なはずだからね。



*みんな手伝ってくれるから、安心して学校来てや。

みんなで仲良くしょう。Mは、みんなよりもおくれるけど、そんなんすぐに追いつくよ。こんなことしか言えないけど、すぐに治るって。



*大丈夫、すぐに治るよ。

そんな骨折気合いで治せ!って言いたいけど、そんなことは無理。でもじょじょに治って、なんにも痛くなくなるよ、すぐにきっと治るよ。

痛いかもしれへんけど、Mやったらすぐに治せるよ。

学校で泣かずにがんばったMはえらいと思う。M、がんばれ!



*骨折したからって落ち込むなよ。応援してるからな。

元気出せよ。お前が困ってたら助けたるからな、安心しろよ。

前向きに考えよな。別に、骨折したことを反省するなよ。

骨がおれても楽しいことだってあるからな。悲しむなよ、苦しむなよ。

誰もお前のこときらってないからな。応援してるからな。



【感想記】

 純真な子どもの気持ちに触れた思いがしました。

「純」な気持ちに触れるって、あまりないと思うんですけど、これが、この商売のいいところですね。

しんどいことも一杯あるんですが、こういう場面に出くわすと、「やってて良かったなぁ」と思ってしまいます。


 こういう気持ちをいつまでも持ち続けられるように、そして、もっともっとふくらませていけるように、それが、我々、「先生」と呼ばれる人たちの責任やないかな?と思います。


 このメッセージは、その日のうちにMの家に持っていきました。

保護者にもたいへん喜んでもらいました。

Mの気持ちも、「やさしさ」というクワで耕されたように思います。




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