日常・・・

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第3章 【破滅した世界】




「まったくいつもいつも・・・何をしていれば遅れるんだ?」
中東系のサイドがグリーに尋ねる。
「色々準備に手間がかかるんだ」
グリーは一言で返答するとアポーのほうを見た。
アポーは若干年上っぽいラッセルと心配顔のアーデスと会話をしていた。
一方こちら側ではラリーとロスソンがなにやら言い争っているのが見え、黒人のマーティがそれの仲介に入っている。
ハンディースはパイロットになにやら話している。
一人残されたグリーはふと、窓の外に目をやった。
一面青い海が広がっている。
これから死の街へ行くとは思えない光景である。
「よし、到着予定はそうだな・・・分からん」
ハンディースが訳のわからない事を言い出した。
皆がハンディースに注目する。
まぁ、ハンディースの狙いはそれだった。
「よし、みんな注目したな。これから概要を話すぞ」
「何でこのヘリの中で話すんだ?」
「そこらへんはいいだろ。で、まず俺たちはロスの元特殊部隊本部のヘリポートに着陸・・・
そして地面に降りチェックポイントに向かう・・・あ、チェックポイントを知らせなきゃな」
ハンディースは大きく息を吸った。
「元エンゼルスタジアムだ」
「マジで!」
ラッセルが大きな声をあげる。
「ああマジだ。2058年から2年放置されているからな・・・どうなっているかは分からんぞ。
元本部から歩いて5kmほどだから・・・そこが選ばれた」
ハンディースは肩に被いているバッグを出した。
中からは同じような箱状のものが4つ入っていた。
「これが爆弾。小さいからってなめるな。これだけでスタジアム1個は余裕で吹き飛ばせる」
ハンディースの説明で、一気にその小さな爆弾に視線が注目された。
「こんな危険なものを出すなよ」
アーデスがいっそう不安顔になってつぶやいた。
ハンディースはそれをそそくさとしまうと再び座り込んだ。
「あ、もう解散だ」




「ジョン、あのスープとってくれ」
ダラックが配給されたスープを指差して、ジョンに命令した。
ジョンは手を伸ばし、スープを浮かばせるとダラックの前にもってきた。
すると、スープのバランスは突如崩れ、ダラックの顔にかかった。
「あち!!!」
ダラックの悲鳴が聞こえる中、ジョンは苛立ったような顔をして座りこんでいた。
―こんなことしてていいのだろうか・・・
こんなところで・・・何をされるかも分からないままただ座っていて・・・
本当にいいのだろうか?
ジョンは決断した。
「出よう・・・」
「はい?」
スープをふき取っていたダラックが、疑問の声をあげた。
もちろん、ダラックのみではなく他の3人もだ。
「ここを出るって・・・どういうこと?」
エレナは慎重に尋ねた。
「出るとは・・・出るってことだ」
ジョンは静かに答えた。すると説明を始めた。
「いいか、俺は超能力を使える。それを言えば分かるだろう?簡単に脱出が出来る」
「でもカメラで監視されてるぞ。そう簡単にいくか?」
あの黒人が首をひねりながら尋ねた。
「簡単さ・・・俺が力で監視カメラの回路をショートさせる。それに気付いた監視員が飛んでくるだろう。
それがくるまでに脱出さ。もちろん、鍵も俺が開ける」
ジョンが手をひらひらさせながら鉄の扉の方に手をむけた。
「そんなことも出来るの!?」
エレナが半ば興奮しながら言った。
ジョンはえへんとばかりに頷く。
「よし、みんな、出るぞ・・・ここからな!」
「俺は行かないぞ!」
急にダラックが大声を出した。
ジョンはダラックの前に駆け寄った。
「何を言ってるダラック。前まであんなに出たがっていたじゃないか!前みたいにまた何かされるか分からないんだ。
もしかしたら次は殺されるかも・・・だから、チャンスあるうちに脱出しておかないと・・・
多分この手を使えるのは1度きりだ。もう2度とチャンスは無い!」
「だからといって脱出できる保証は無いだろ!捕まったら戻ってくるし、さらに警備厳重なところに入れられる可能性もある。
もしかしたら殺されるかもだ!成功のうれしさは大きいが・・・失敗の代償も大きい。俺は行かない」
ダラックは熱弁をするので、エレナや黒人の男は黙り込んだ。
しかしジョンは諦めず説得しようとした。
「ダラック・・・お前・・・仲間だろ!そんな態度は・・・」
「黙れジョン!」
この声の主はダラックでも、エレナでも、はたまたあの黒人でもなかった。
今までだんまりを通してきた、静かな白人の声だった。
「ダラックはいきたくないといっている・・・俺は行くが・・・かなり迷ったさ」
その白人はしっかりとジョンの目をまじまじと見つめ語った。
さっきまで熱弁をふるっていたジョンも、その気がなくなった。
同じくダラックも・・・下を見ている。
「すまないな・・・ダラック」




ヘリはアメリカ本土の上空付近にいた。
コックピットから見る限り・・・ビルが建ち並んでいかにも普通だ。
しかし近づくにつれ実態が明らかになった。
しっかりたっていると見えたビルはガラスが割れ、ひびが入り、コケが生えているのも見えた。
そして地面には歩き回る人々ではなく・・・腐敗した人間達・・・つまりあのゾンビたちが歩き回っている。
多いところもあれば、まったくゾンビのいない通りもあった。
そんなアメリカ本土は、今、彼らの目の前に位置している。




「見えてまいりましたよ~。アメリカ本土」
コックピットでアンソニーが呟くと、なにやらスイッチを入れ替えた。
何かは分からない。
トミーの方は、しっかりと前を見つめている。
「トミー、しっかり本土を確認しろ」
「2ヶ月前に巡回できたから確認する必要はない」
クールにきめた。
だが、このクールにきめた裏側には恐怖心があった。
彼、高所恐怖症なのだ。
真下を確認するのは嫌なので、前方をしっかりと見つめて、他はアンソニーに任せる。
アンソニーは呆れつつも巡回を始めた。
するとコックピットの扉が開きハンディースが姿を現した。
「もう着いたのか?」
「はい少佐。ただ今巡回中です」
アンソニーがきびきびとした口調で述べる。
「マシンガンの用意は出来ているな?」
「完璧ですよ」
今度はトミーが代わって答える。
ハンディースはトミーの席の操縦桿の脇についている、いかにもトリガーのような物を見つめた。
「完璧なようだな・・・ならいつでも攻撃OKだ」
ハンディースはそう言ってコックピットを出た。
そしてメンバー達のいる方へ戻った。
「あれか?」
ラリーがそう尋ね、しっかりと手すりにつかまった。
グリーには何が何か分からなかった?
「あれって?」
アポーに尋ねるがアポーも首をひねった。
「よく分かんないな。とりあえず皆のまねをすれば・・・」
そういって手すりにつかまった瞬間、銃声と共に機体が大きく揺れた。
アポーは間に合ったものの、グリーはラリーと体をぶつけた。
「いてぇな!」
ラリーの罵声がとぶが、また機体が揺れたのでグリーは必死に手すりにつかまった。

コックピットではトミーがトリガーを握り発砲していた。
ヘリの前方に浮いている発射口から、大きな弾丸が地面に向かい発射されてゆく。
やみくもに発射されているように見られるが、的確にゾンビたちを始末していた。
アンソニーは操縦に付きっ切りで、まったく面白みがなかった。
もちろん、そんなのを味わっている場合では無いが。
トミーは若い頃からヘリのパイロットであったが、この特技のみが高所恐怖症を払拭してくれた。
もちろん、そんなのを気にしている場合では無いが。
ともかくトミーは的確にゾンビたちの頭を射抜いていた。
ゾンビたちを倒すのが当たり前の時代、彼らの倒す方法は知っていた。
頭を撃って全てを無力化させるしかない。
地面では、その弾丸をもろ受けたゾンビたちが地面に倒れこんでゆく。
もちろんガラス窓に当たる銃弾もある。
トミーは何も気にせず、ゾンビたちのいっそうに励んだ。
「トミー、もういいぞ。本部が見えてきた」
アンソニーがそう言うと、トミーはあっさり射撃をやめた。
いつもならしぶとく続けるのだが・・・なぜだろう?
「・・・なんか一瞬怖くなったぞ」
「しるかい!とりあえず本部が見えた。射撃は止めて」
「お前より格下のようじゃないか、俺が」
「実際ほとんど同じだよ!失礼な!」

グリーは先ほど頭をぶつけたラリーとは気まずくなったので、一応距離を置いた。
するとハンディースが立ち上がった。
「よし、近づいたようだ。みんな気合を入れろ!」
「お~し」
何故か脱力感あふれる返事が返ってきた。
「みんな、気合が足りんな。俺が指導してやる。まず腹筋に力を入れて・・・」
「ハンディース少佐!シートベルトを!」
コックピットから響いたトミーの声を聞いて、ハンディースはそそくさと座り込んだ。
(あははは~馬鹿みたいだ~)
と、言いたくなったグリーは必死でおさえた。

「アンソニー、着陸は任せた」
トミーはヘルメットを外しながらいった。
しかし、アンソニーはさぞ普通だという風に返す。
「もう・・・いつものことだから慣れました」
そういって慎重に機体を下ろす。
降ろす場所は、元特殊部隊本部上空のヘリポートだ。
「何でいちいちここに着陸させるんだ?直接スタジアムに降りればいいのにな」
アンソニーはぼそぼそ呟いた。
「何でもこのビルの資料室に大事なファイルがあるんだと」
「その間待っている俺たちの身にもなってくれないのかな~」
「その件について朗報だ、アンソニー」
トミーはうれしげに語りだした。
「しばらく時間のかかる任務だから、我々は本部に戻っていろ・・・だと」
「ということは帰れるのか!・・・でもサポートがあるだろ?」
アンソニーは深く考えた―もちろん着陸させながら
「そのことについては問題ないな」
トミーは無線機のスイッチを押した。
「着陸間近です。そちらの準備は?」
トミーは何処かと通信しているようだ。



ちょうどそのときの本部司令室で、そのトミーの声が伝わってきた。
『着陸間近です。そちらの準備は?』
「よし、返信するぞ・・・」
50歳は確実にいっている男が機械に向かって話しかけた。
「着陸したらハンディースがすべて知っているから・・・全てを任せて帰って来い」
その男が言うと、数秒後に言葉が返ってきた。
『分かりました。では、試通信終わります』
「分かった」
男は言葉を取りやめると、椅子に座った。
ものすごい大きなモニターの前で、横に長い机の上に並ぶPCで部下が作業をしていた。
「ホーキンス部長」
ホーキンスと呼ばれたのは、先ほどの50の男である。
部長の地位を持っているが、それがどのくらいの地位か分かりづらい。
それをともあれ、ホーキンスはその部下のもとへ行った。
「なんだ?」
「・・・・・・トイレ・・・いいですか?・・・」
「ああ、いいぞ。早く行って来い」
一応彼、人望も厚いのだった。




「よし降りるぞ!武器を持て!ゾンビが出てくるかもだから!備えよ!」
ハンディースの指示が飛ぶ中で、メンバー達はマシンガンを構えた。
個人個人それぞれの装備をしている。
グリーはマシンガンに、腰に拳銃という至ってオードソックスな装備だ。
アポーはというと・・・同じだ。
「緊張してきたぜ」
グリーがアポーに寄り添って言う。
「俺もだ・・・なんか嫌な予感がしてきた」
「そんなことを言うなよアポー。大丈夫だ」
グリーはそういってヘリを降りた。
最後にラッセルが降りると、アンソニーがコックピットで敬礼に近い物をした。
皆はそれに答えると、徐々に上がって行くヘリを見つめた。
「・・・さて」
不意に、ハンディースが言い出した。
「とりあえずこのビルから下に降りるぞ」
そういうとラリーがロープを取り出した。
「このケーブルで降りようぜ」
「それが手っ取り早いかな?」
アーデスが賛同してケーブルを取り出した。
「まてまてまて」
何処かにフックする場所は・・・と探していたラリーたちをハンディースは止めた。
「言い忘れていたが、このビルの資料室に重大なファイルがあるらしいんだ。それを取ってからだ」
ハンディースの説明に、一同はうなだれた。
「何でそれを早くいわないんだよ~」
マーフィーが愚痴る。
ハンディースは謝っているような仕草を見せたので、とりあえずビル内に入ることにした。
しかし、扉を開けられない・・・何が出てくるか分からないからだ。
「俺がやる」
ロスソンが後ろから出てきて、老朽化した扉に手をかけて・・・押した。
一斉に銃口が向く。
しかし、そこには下へ続く階段があるのみだった。
「ったく、備えさせやがって・・・」
ラリーが拳銃を腰にしまう。
情報係であるサイドは、とりあえず何かしら情報をと先を進み始めた。
「一体どこまで進めばいいんだ?」
サイドがハンディースに尋ねた。
「ここが12階だから・・・資料室は1階だ。一番下まで降りる」
サイドはそう聞くとマシンガンを構え一気に階段を下った。
「皆はそこで待ってろ」
「おい・・・」
ロスソンがとめたがサイドは既に一階分下に下っていた。
「サイドは大丈夫なのか?」
グリーは心配になって、誰ともなしに尋ねた。
もちろん
「大丈夫だ」
という誰かの声が返ってくる。
日の光がまったく差し込まない場所にいるため、昼なのに薄暗い・・・
そんな条件が不気味な空気を演出した。
一度どこからか物音がしたが・・・気のせいのようだ。
「本当に一階までいけたのか?」
アポーもだんだん心配になってきたようだ。
「もしかしたら何かに出くわして・・・」
心配性のアーデスが突然呟く。
否定はしたものの・・・やはり気になる。
「えーい!ハンディース、判断をするんだ」
ラリーがハンディースを急かす。
「そんなことを突然言われてもだな・・・」
「おーーい!!安全だ!!何もいないぞ!」
サイドの声が響き渡った。
一同は安心して階段を降り始めた。
そして1階に下り、広いホールでやっと日の光を見ることが出来た。
「ハンディース、何もなかった」
サイドがハンディースに告げている間、グリーらは資料室に入り込んだ。
物がごった返す狭い空間は、重装備の男が3人も入れば満杯状態だった。
「<重要>と記されている箱だろ・・・見つからないぞ」
「狭いぜ・・・何とかならないのか?」
黒人で明るいマーフィーが愚痴る。
「仕方ねえだろ。俺だって我慢してるんだ」
ラリーが苛立ったようにして返す。
「うるさいな・・・静かに出来ないのか?」
グリーはそんな二人に釘をさすと、ある箱を見つけた。
<重要>、との印がしてある。
(なんてお粗末な警備・・・そしてなんて簡素な・・・)
そう思いながらも、その箱を差し出した。
「これか?」
ラリーの前に出すがもちろんラリーにはわからない。
「中身を見てみるか」
マーフィーが、箱のふたをぱかっと開けた。
すると中にはデータファイルの保存用ディスクが山のように入っているではないか。
箱の中にびっしり敷き詰められたファイルたちは、時代も演出しているように感じられた。
早速グリーはその中を物色した。
「う~ん・・・CDから・・・DD(データディスク)・・・DS(データスティック)・・・フロッピーもある・・・」
「どうやら各時代の重要ファイルが収められているようだな・・・」
突然現れたロスソンが解説をする。
ロスソンはガチャガチャと中を探り、あるファイルを取り出した。
『リッカー事件』
と記されたCDである。
そのCDの入ったケースを取り出し、裏面に記されている保存内容をまじまじ見つめた。
『事件の経緯 生存者・殉職者 その後の調べ』
等、記されていた。
「どっちにしろ、今の俺たちには関係ないな」
後ろにいるラッセルが呟いた。
そのとき、ハンディースが入ってきた。
「あ、少佐。箱は見つけました・・・でも大きすぎて持ち帰るのは面倒ですな」
グリーは早速報告に入った。
しかし、ハンディースは首を振った。
「その箱じゃない、俺たちが持ち帰るのは・・・」
ハンディースは息を吸った。
「ネイオ・ワーク名誉指揮官の私物ファイルだ」
その言葉に、一同は腰を抜かした。

ネイオ・ワーク名誉指揮官・・・特殊部隊の中で語り継がれている伝説の男である。
ネイオは55歳となった2040年・・・ちょうど20年前、最高司令官であったスコットよりも先に引退している。
長い間指揮官を務めていたこと、リッカー事件の時の輝かしい栄光から、名誉指揮官の地位が与えられ、
今は伝説の男として語り継がれていた。
ちなみにスコットはというと52歳の時に最高司令官に昇格・・・。
67歳の時に最高司令官を辞め引退した。人望も厚く過去最高の3期連続で最高司令官を務め上げた。
丸10年前の引退ということで、記憶に新しいものもいるかもしれない。

そんなネイオ・ワークの私物を・・・なんで今持ち帰るのであろう?
「何で今頃ワーク名誉指揮官の私物を持ち帰るのですかね?」
アポーが皆の気持ちを代弁して尋ねた。
「何でも・・・旧リッカー事件というのは4回あったんだ・・・知ってるだろう。しかし3回目の襲撃事件が公式に認められたのは
15年ほど前の話なんだ。当時はアメリカに出現したリッカーということで、人々の記憶に十分植えつけられた。
しかしそのとき特殊部隊はどこぞの政府のように公式には認めなかった。悪い歴史だからな。
そんな中でもワーク名誉指揮官はその戦いに生き残って、それを倒している。
だから名誉指揮官は自分のファイルにだけでも残しておこうとしたらしい。
で、今になって事件の詳細が必要となったらしい・・・だから必要なんだ。わかったか?」
ハンディースは一通り説明を終えた。
一同はかなり納得したようで、頷く行為を見せる。
「というわけだ。早いところ探そう」




一方、部屋から脱出を目論むジョンたちは、最後の打ち合わせに入っていた。
一応、ちょこっとジョンが監視カメラの回路をいじって、不具合を生じさせていた。
「よし、準備はいいか?」
ジョンが皆の顔を見渡す。
緊張で顔がこわばっているエレナや、準備万端といった感じの黒人。
珍しく強気な顔をしている白人・・・
「お前、名前なんだっけ?」
黒人が白人に話しかける。
「俺は・・・・俺はソーンだ」
白人・・・ソーンが答えるのを聞いて、黒人の方も名乗った。
「俺はウィルだ。よろしく・・・そして頑張ろう」
黒人は、低く響く声で握手を求めた。
「よし、みんな・・・準備はいいな?」
ジョンはそういって、皆を見回すと最後にダラックを見た。
後ろでふてくされたように座っている。
「ダラック・・・」
ジョンは無意識のうちにダラックへと近づいていた。
ダラックまであと少しというところで、いきなりダラックに引っ張られた。
厳密に言うと・・・抱きしめられた。
「頑張れよ・・・親友よ」
ダラックは抱きしめた瞬間に言った。
ジョンは今までダラックを親友とまでは思ったことが無かったが・・・
「お前は耐えろよ・・・」
ジョンは親友という言葉はあえて口にしなかった。
ダラックは次いで、エレナに近づいた。
「ジョンのことは・・・頼んだ」
エレナにそう告げるダラックを、蹴飛ばしてやりたいと思ったが・・・もちろんやめた。
ダラックは続いて黒人―ウィル と白人―ソーン を抱きしめて、ジョンの背中を叩いた。
「絶対に戻ってくるなよ!」
ダラックが強い言葉でそう言った。
「ああ・・・絶対に出てやるさ!」
ジョンは勢いで空間を探り、監視カメラの回路をショートさせた。
続いて厚い金属の扉の鍵を開ける。
「うぉりゃ!」
扉が勢いよく開く。
ジョンが外へ飛び出すと、巡回中だと思われる警備員に遭遇した。
警備員は一瞬で拳銃を構えた。
「なんだ!?・・・貴様ら、部屋に戻って・・・」
言い終わらないうちにウィルの蹴りが炸裂した。
銃が宙を舞う。
銃が落ちる前に、もう一撃蹴りを食らわして、警備員をノックアウトした。
「やったわね!」
エレナが歓喜の声をあげる。
「しかし時間がない・・・ジョン、コイツから奪えるものを奪おう」
ソーンが警備員の服を物色する。
銃をキャッチしたジョンは、エレナに銃を渡し自分は超能力を駆使して何かしようとしていた。
すると、廊下に監視カメラがあるではないか。
ジョンはまたもや空間に手を出し、監視カメラの回路をいじり破壊した。
「時すでに遅しか・・・」
ジョンはそう呟いて、廊下の奥を見つめた。
押し寄せてくる警備員・・・いや・・・武装した施設部隊が見えた。
「事実は覆せない・・・かな?」

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